ユニークスキル共の海
「あっつー……」
俺はアルクとラーメン屋に行き、その帰り道にうだっていた。
「もっとさー、ポジティブなことを言ってよ。レディーをエスコートしているんだよ」
「すまんな。俺はカエデちゃん以外に笑顔を振りまけないんだ」
お前も可愛らしいが、生意気なところと男か女かわからないところが微妙なんだ。
「あっそ。君のカエデ好きには若干引いている僕だけど、僕もリディアにしか笑顔を……笑顔を……あれ? 憎たらしいって思っちゃうな」
それは昨日の夜にゲームをして、相手がきゃっきゃっしてたからだろう。
「俺さー、リディアちゃんを可愛いと思うけど、あれと夫婦にはなれないなって思うよ」
正直、お前を尊敬する。
「あれって言うな。安心して。向こうもそう思っているし、何ならカエデ以外もそう思っているから。カエデは君の何が良いんだろうね?」
「金」
「……言ってて悲しくない?」
悲しくない。
何故なら金もまた俺の一部の能力だからだ。
黄金の魔女は伊達ではない。
「お前はリディアちゃんのどこがいいの?」
「優しくて……気遣いができて…………えーっと……」
ないんだな。
「可愛い子だし、頭が良いよな?」
「そう、そこ」
ひでー奴。
絶対にそもそも他に親しい人がいないからだろ。
「しかし、暑いなー。なんでこんなクソ暑い日に激辛ラーメンに付き合わないといけないのか」
「リディアもミーアもヨシノもナナカも嫌がったんだもん」
あー……俺が最後に残ったのね。
ハリーと行けよ。
「お前、ラーメンはほどほどにしろよ」
その先にいるのはあいつだぞ。
「わかってるよ。でも、たまにはいいじゃない。最近、忙しいし、たまの休日だよ」
アルクは王様が本格的に仕事を回しだしたのでかなり忙しくなっている。
「頑張ってくれ。俺は遊んでる」
「良いねー。あ、そういや、そんなに暑い、暑い言ってるし、無人島でもあげようか?」
あー、前に言ってたやつか。
「くれ。海に行きたい」
「あげる、あげる。いらない島なんかいっぱいあるから」
エレノアアイランドと名付けよう。
「そうとなれば、ヨシノさんを誘おう。あいつが唯一輝ける時だ」
「ナナカは?」
ナナポン?
「お前とリディアちゃんと一緒」
ないものねだりはよくない。
「君、既婚者だよね?」
だからなんだ?
「それはそれ。これはこれ。お前だってリディアちゃんの旦那だけど、エレノアさんが大好きだろ?」
「僕がそれに頷くことは一生ないと思う」
こいつ、こんな冷たい目ができるんだな……
「無人島っていつくれんの? 夏が終わってからもらっても意味ないぞ」
「いつでも。今すぐにでも連れていってあげるよ」
ふーん……
「よし、帰ってヨシノさんを誘ってみよう」
「ナナカは?」
「あいつ、うるせーんだよな」
口を開けば文句ばっかり。
あとはエレノアさん、エレノアさん。
「君、ナナカのことが嫌いなの?」
「そんなことないぞ。可愛い子じゃないか。たまに殺したくなるだけだ」
「あー、うん。異常者に聞いた僕が悪かったね」
お前も十分に異常者だけどな。
家に帰ると、カエデちゃんとリディアちゃんを誘い、双方ともオーケーだったのでヨシノさんとナナポンも誘った。
そして数日後、アルクの転移を使い、無人島へとやってくる。
無人島はそんなに大きくもないし、魔物も出ないらしい。
安心安全の海なため、女性陣は海ではしゃいでいた。
なお、アルクは仕事があると言って、来ていない。
多分、男女であるあいつは海に来たくなかったと思われる。
「あのバカ、奥さんの水着を見ないなんて損をしてるわね」
俺はサングラスをかけ、はしゃぐ女性陣を眺めながらビーチベッドで優雅に過ごしている。
長い金髪もミーアが三つ編みにしてくれたので楽ちんだ。
「さすがにきついんだと思いますよ。想像はできませんけど、一応は女性ですので」
そばに控えているミーアが答える。
ミーアも水着を着ているが、パーカーを羽織っており、泳ぐ気はないらしい。
「私はまったく気にしない」
うるせーのがいたのでエレノアさんだし。
しかし、女性の水着というのは防御力が低いと思う。
これ、激しい運動をしたら危ないんじゃないか?
「エレノア様がいたから嫌なのでは?」
男がいるからか。
「最高顧問」
「し、失礼しました。最高顧問がいらっしゃるからじゃないでしょうか?」
「一緒にお風呂に入った仲なのにね。お互いのすべてをさらけ出したわ」
「それが余計に嫌なのでは?」
思春期め。
「ミーア、飲み物」
「ただいま……」
ミーアがそばにあるクーラーから缶ビールを取って渡してくれたのでぐびぐびと飲む。
「ハァ……美味い」
「あのー、泳がれないので?」
「今はそれより大事なことがあるの。わかる?」
腹グロチビ共のナナポンとリディアちゃんは可愛らしいな。
見た目◎で中身が×のヨシノさんは本当にすげーわ。
カエデちゃんは天使だ。
「ハ、ハァ?」
「あなたはあの中だと誰が良い?」
「それ、私に聞くことですか?」
「私はカエデちゃん。やっぱり可愛いわよね。背はちっこいけど、スタイルも良いし、何より笑顔が可愛い」
「あ、別に聞いているわけではないんですね……カエデ様は素晴らしいと思います」
ミーアが頷いた。
「やはりミーアは人を見る目があるわね。最高顧問補佐官として頑張りなさい」
「あのー……その役職は何ですか?」
ミーアが呆れながら聞いてくる。
「そのまんま。あなたはオーシャン王国の最高顧問であるこの私の補佐として頑張るの」
「えー……いつの間に」
「昨日、リディアちゃんと決めた」
お願いしたらいいですよって言ってた。
「あのー……アルク様は?」
「あいつに人事権なんてない」
あいつに人事権を持たせたらクビになっちゃうし。
「ウチの国を乗っ取らないでくださいよ」
「それはリディアちゃんに言いなさい」
「………………」
言わないらしい。
「あー、海も楽しいけど、身体を動かしたいわ。剣を振りたい」
そう言って、そばに置いてある木刀を取る。
スイカ割り用のやつだ。
「そういうのこそアルク様にお願いしたらどうでしょう? 我が国は依然として魔物の脅威に晒されております。最高顧問として人民の命を守るのです」
ふーん……
適当に木刀を振っていると、女性陣がやってきた。
「エレノアさん、海にも来ず、何をしているんですか?」
ナナポンが聞いてくる。
「オーシャン王国の国民のために魔物を倒したらどうかってウチの補佐官が勧めてきたのよ」
「いいんじゃないか? 君、それしか能がないし」
巨乳がなんか言ってる。
なお、お腹の傷はもう見えない。
良かったね。
「あんたはその身体しか能がないけどね。金に目がくらんだレベル4止まりめ」
「やってみるか? いつも寝ているだけのニート魔女」
ヨシノさんが木刀を取り出した。
「ほう……私にサディスティックな気はないけど、雑魚に剣術とは何かを教えてあげましょう」
剣術とは相手を殺すことだ。
「ミーアちゃーん、飲み物ー」
「あ、私も。海は喉が渇きますね」
「え? あ、はい。ただいま……」
カエデちゃんとリディアちゃんは俺達を無視して、ミーアに飲み物を要求する。
「あ、あのー、その木刀はスイカを……」
ナナポンが俺とヨシノさんの間に立って、止めてきた。
「大丈夫、大丈夫」
そう言って立ち上がる。
「そうそう。大丈夫、大丈夫。これは演習だ。そう演習」
うん。
演習だから何が起きても事故よ。
「しーらない……補佐官さーん、私も飲み物ー」
「オーシャン王国最高顧問である私が正義の魔女としてサキュバスを討伐してあげましょう」
「Aランク冒険者として無駄に行動力だけはある迷惑なIQ3の魔女を討伐してやろう」
誰がIQ3だ!
もうちょっとあるわい!
「………………」
「………………」
お互いに木刀を構え、睨み合う。
「「死ねぇい!」」
決戦の火蓋が切られる。
結果は……負けた。
敗因は水着が気になって上手く動けなかったこととサキュバスの動くたびに揺れる巨乳がどうしても気になったから。
あの魅了魔法はズルいと思う。
本日より新作も投稿しております。
読んでもらえると幸いです。(↓にリンク)
また、コミックの方はニコニコでも始まったようです。
よろしくお願いいたします。




