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地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~  作者: 出雲大吉
第8章

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第275話 大丈夫かな?


「モンタニエ……」


 察したアルクが俯いた。


「殿下、そこで悲しむようならば王にはなれませんぞ。反逆した者に容赦など不要。話を聞くのすら不要。ただ捕らえ、一族郎党を皆殺しにしなければなりません。そうでなくては第二、第三の私が現れます」

「私は王になんてなりたくなかったよ」

「でしょうね。それはよくわかります。ですが、もはや王にならなければなりません。あなた方は私を否定し、その道を選んだ。ならば、その道で必ずや成功しなければならないのです。それがあなた方の足元にいる骸達へのはなむけです」


 モンタニエはそう言うと、ナイフを取り出し、アルクに向けて、突っ込んでくる。

 だが、それよりも速く、剣を抜き、腕を斬り落とした。


「魔女め……!」


 ナイフごと腕を斬り落とされたモンタニエが後ずさる。


「痛いでしょう? すぐに楽にしてあげるわ」


 剣を構え、首を狙う。


「エレノア、僕がやる」


 アルクはそう言って、手を掲げた。

 だが、その手は震えている。


「無理しなくていいわよ? 私が軽くやってあげるわ」


 俺は一切、気にしない。

 俺の剣は剣道ではなく、剣術なのだ。

 斬ってナンボ。

 某人斬り抜刀斎さんもそう言っていた。


「いや、僕がやる」


 アルクは譲らない。


「殿下、この国の未来をお願いします……」

「お前に言われるまでもない。私がこの国の王として、この国を守っていく。ただそれだけだろう。モンタニエ、さらばだ」


 アルクの手から炎が飛び出ると、モンタニエを燃やしていく。

 モンタニエはまったく声を出さずにそのまま崩れ落ち、真っ黒な物体に変わっていった。


「私が首を刎ねてあげたのに……」

「僕の首を狙った者は僕が処分する」


 無理しちゃって……


「あなた達、後のことは任せるわ。屋敷の中の遺体を弔いなさい」


 兵士達に指示をすると、兵士達が顔を見合わせる。


「エレノアの言う通りに。それとモンタニエの遺体もだ」


 アルクが頷くと、兵士達が一斉に動き出した。


「アルク、戻るわよ」

「わかってる」


 アルクは頷くと、手を掲げる。

 すると、一瞬にして我が家のリビングに転移した。

 リビングではリディアちゃんとミーアがお茶を飲んでいる。


「エレノア、僕は陛下に報告に行ってくるから」

「そう? 少し休んだら?」

「すぐだよ。じゃあ、今日はありがとうね」


 アルクはそう言ってすぐに消えていった。

 俺はそれを見て、ソファーに腰かける。


「リディアちゃん、ミーア、こっちに来なさい」


 そう言うと、テーブルにいる2人が立ち上がり、こちらにやってきた。


「あの、モンタニエは……?」


 リディアちゃんが聞いてくる。


「アルクが魔法で燃やした。私がやるって言ったのに……」

「そうですか……」

「アルクはすぐに戻ってくると思うけど、今日は休ませなさい。いい? あなたがそばにいるのよ?」


 男の精神を落ち着かせるのは女が一番。

 実際、俺がそうだった。

 カエデちゃんと一緒にいて、俺の鬱気味は治ったのだ。

 まあ、いまだにあのクソ上司は切り殺したいと思っているがな。


「わかってます」


 リディアちゃんが深く頷いた。


「ミーア、今日のご飯は麺類にしましょう。けっして焼いた肉はダメよ」

「承知しました」


 ミーアも深く頷く。


「まったく……あんなに真っ青になるくらいなら私に任せろってのよ。何の忌避もなく、首を刎ねてあげるのに」


 自分の家族を巻き込むようなカスは生きる価値がない。


「自分でやらないといけないと思ったんだと思います」


 ガキが無理するなっての。

 うーん、アルクの罪悪感を減らすためにミス殺人鬼のヨシノさんでも呼んであげようか。

 あの人は若い頃にリンさんと共に結構狙われて、やりまくっているはずだ。


「まあいいわ。気にかけてあげなさい」

「わかりました」

「承知いたしました」


 2人は再び、深く頷いた。




 ◆◇◆




 その後、アルクはすぐに戻ってきたが、すぐにリディアちゃんと共に部屋に引きこもった。

 この日はナナポンとヨシノさんを呼んで、おもちゃの流しそうめん機で流しそうめんパーティーを開いた。

 そして、翌日になると、アルクはいつものようにリディアちゃんとゲームをしていた。


 それから1週間が経つと、アルクも立ち直り、普通の日常が戻ってくる。

 この日もウチのリビングではアルクとリディアちゃんがゲームをし、ミーアが編み物をしていた。

 カエデちゃんは俺の隣でスマホを眺めている。


 俺はふと思い立ち、寝室に行くと、エレノアさんにチェンジし、とある物を作り出した。

 そして、それを持って、リビングに戻る。


「んー? 先輩、どうしたんです?」


 カエデちゃんの隣に戻ると、カエデちゃんが声をかけてきた。


「ちょっとね」

「それは?」


 カエデちゃんは俺が持っているフラスコを指差す。


「生命の水」

「おー、それがですかー。結局、どうするんですか?」


 使い道がない生命の水をどうするかはずっと考えていた。

 だが、さっき使い道が決まった。


「リディアちゃん、おいで」


 俺がリディアちゃんを呼ぶと、リディアちゃんはゲームを中断し、こちらにやってくる。


「何ですか?」

「これあげる」


 そう言って、リディアちゃんに生命の水を渡す。


「ポーションです?」

「いや、生命の水」

「これが生命の水…………え? くれるんです?」


 リディアちゃんは生命の水をぼーっと見ていたが、すぐに我に返り、俺を見てくる。


「私達には使い道がないのよ。私は引退しているし、カエデちゃんはフロンティアに行かない。ナナポンとヨシノさんも危ないところには行かないし、まず命の危機にさらされることはない。唯一、フロンティアで命の危機にさらされそうなのはあなたの旦那さん。だからあげる。アルクが死んだら使いなさい。一度だけなら助かるから」

「い、いいんですか? 伝説のアイテムですよ?」

「伝説なんかいらない。それよりもかわいい弟子達の方が大事よ」


 売って金を得ても仕方がないし。


「ありがとうございます……」

「まあ、アルクが死なないのが一番だけど、あいつ雑魚すぎるし」


 よえー、よえー。


「君がバケモノなんだよ。いよいよフロンティアで知らない者はいないくらいに噂になってるぞ」


 アルクが反論する。


「別にいいでしょうが。それよりも奥さんを悲しませるんじゃないわよ」

「わかってるよ」


 ホントかよ……

 昨日も最後の一個の唐揚げを食べて睨まれただろ。


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[良い点] 旗がビンビンと立ってる
[一言] 沖田君。 なんだかんだ弟子の事気遣うんだなぁ
[一言] 優しい振りしてるけど、ただ人斬りたいだけやろw
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