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地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~  作者: 出雲大吉
第7章

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第222話 正月もユニークばっかり


 年末になり、カエデちゃんが実家に帰った。

 俺は年末年始をアルクとトランプやボードゲームをやりながら過ごしていた。

 途中までは…………


「エレノア様は中々、いい家に住んでますね」


 リディアちゃんがリビングで優雅にココアを飲んでいた……

 よくわからないけど、なんかアルクが連れてきたのだ。


「そう? 狭くない?」

「アルク、失礼よ」


 リディアちゃんがアルクに苦言を呈する。


「あ、ごめん。でも、ハジメさー。お金はあるんでしょ? もっと広い家に住まないの? お城とは言わないけど、どっかに家でも建てたら?」


 アルクが言うように今の俺はエレノアさんではなく、沖田君である。

 だが、初対面のはずのリディアちゃんはスルーだ。

 ユニークスキル持ちは違うね。


「カエデちゃんと2人だからな。広くても持て余すだけだ。子供でも出来たら違うんだろうけど」


 その時はその時に考える。

 今はこの家の広さがちょうどいい。


「まあ、掃除が大変か」

「ミーアくれたら引っ越すわ」


 メイドさんをくれ。


「絶対に嫌だよ」

「じゃあいいや。それでさー、リディアちゃんはなんでいるんだ?」

「いや、リディアがエレノアに話があるって言うから……」


 変な相談じゃないだろうな?


「リディアちゃん、話って? あ、エレノアさんに代わろうか?」

「いえいえ、そのままで結構ですよ。エレノア様だろうが、ハジメ様だろうが、どちらも一緒です。そこに差異はありません」


 良いことを言っているような気がするんだが、何故だか怖い。

 じー……


「ハジメ、なんで僕をそんな目で見るの?」

「気のせい、気のせい…………それで話って? アルクに外させようか?」


 邪魔でしょ。


「君に不敬って言葉を教えてあげたいよ」

「黙れ。弟子の分際で師匠に逆らうな。冷蔵庫のアイスでも食ってろ」

「白い大福のやつをもらおー」


 子供は上機嫌でキッチンに駆けていった。


「それで?」

「ええ。以前、手伝いをしてほしいとおっしゃっていましたけど、具体的には何をすればよいのでしょう?」

「ああ、それね。実は今度、この世界のお偉いさん達と共にエメラルダス山脈に行くんだよ。ただ、ユニークスキル持ちは遠慮してもらうからリディアちゃんには来た人がユニークスキル持ちかどうかを見てもらいたいんだ」

「なるほど。それくらいならお安い御用です」


 よしよし。

 断られたらどうしようと思っていたが、大丈夫っぽい。


「あのー、リディア、ちょっといい?」


 アルクがアイスを片手にリビングに戻ってきた。


「なーに?」

「リディアってユニークスキルが見えるの?」


 あ、アルクには言ってなかったわ。


「ええ。私の鑑定眼は相手のスキルが見える。だからあなたの挑発レベル7も見えていますよ」


 ん? 7?

 6じゃなかったっけ?


「…………うん。あの、あまり言わないで」


 こいつ、鯖を読んでたな……

 なんて奴だ……

 まあ、俺も本当は5なんだけどさ……


「そうね。妻は夫は立てなくてはいけません。しかし、夫は1人でアイスとやらを食べています」

「あ、2個あるから1個あげるよ……」


 かわいそうな子……


「アルク、そういうわけだからリディアちゃんを借りるぞ。まあ、お前もついてくるんだけど」

「わ、わかった」


 情けねー。

 まあ、アルクって女だしな。

 多分、それで強くいけないのだろう。

 うん、そういうことにしておこう。


「アルク、お前もココアを飲むか?」

「あ、うん。ありがと」


 俺はちょっとかわいそうになってきたのでアルクの分のココアを淹れることにし、キッチンに向かう。

 キッチンに来ると、コップにココアの粉を入れた。


「ハジメー。電話ー」


 ん?


「誰ー?」

「クレアだって」

「クレア? めんどくせーな」


 とはいえ、このタイミングでの電話は何かがあったのかもしれない。


「アルク、お湯が沸いたら勝手にお湯を入れてココアを作れ。俺はエレノアさんにチェンジしてくる」


 俺はリビングに戻ると、アルクに自分で作るように言う。


「わかったー」


 俺はリビングを出ると、自室に行き、服を脱いだ。

 そして、TSポーションでエレノアさんにチェンジすると、服を着て、リビングに戻る。


「あ、エレノア様です。お邪魔してます」


 俺がリビングに戻ると、リディアちゃんがわざわざ立ち上がり、頭を下げてきた。


「う、うん」


 俺、さっきもいたよ?


「まあいいわ。あんたらは黙ってなさいね」

「ズズー、うん」


 …………まあ、飲み物を飲む音くらいはいいか。


 俺はソファーに腰かけると、スマホを手に取る。

 すでにクレアからの着信は切れており、履歴が残っていたので折り返しの電話をかけることにした。


 電話をかけると、すぐに呼び出し音が止む。


『あ、もしもし? 寝てた?』


 クレアだ。


「さすがに昼の2時は起きてるわよ」

『正月だから寝てるかと思った』


 大学時代でも最遅は昼の12時だわ。


「起きてるっての。あけおめー。何か用?」

『あけましておめでとう。ちょっとギルドから情報を掴んでね。それで聞きたいことがあるの』


 ギルドにスパイでもいるのかね?

 アメリカさんはやってそうだな。


「何よ?」

『まずなんだけど、説明会ってマジ?』

「マジね。実際に見てもらった方がいいでしょ。いまだに魔女が騙しているんじゃないかって意見が多いし」


 ネットやテレビでもそういう意見が多い。


『相変わらず、すごいことをするわね。それで同行者が1名? もっと増やせない? 正直、そんな説明会をするとなると、お偉いさんが行くことになるし、護衛を増やしたいという意見が多い』


 まあ、わからんでもない。


「1人1人連れていくわけじゃないのよ? 人数が増えると何が起きるかわからないでしょ」

『それはわかるんだけどねー……』

「強いのを1人選べばいいでしょ。あんたやハリーでいいじゃん」

『いや、私らユニークスキル持ちよ。ダメなんでしょ?』


 そういえば、そうだわ。


「うーん、ハリーはともかく、あなたは別にいいけどね」


 クレアのユニークスキルは認識阻害だ。

 確かに脅威ではあるが、初見殺しだし、俺にはもう通じない。


『どっちみち、私達はこっちで仕事があるから行けないわよ。正直、今は緊張感がすごいわ。いつ抗争が起きてもおかしくない』


 サツキさんが言ってたなー。

 池袋が外国人のエージェントの町になっているらしい。


「私は転移を使っているから町には出てこないんだけどね」

『転移って何よ…………まあいいわ。皆、何とか出し抜こうとしているんでしょ』

「あんたら、大丈夫?」

『増援してるし、私ら、Aランクよ? 問題ないわ』


 他所もAランクが来るんじゃね?

 まあ、クレアが大丈夫って言うなら信じよう。


「問題ないならいいわ。とにかく、同行者は1人よ。嫌なら説明会に参加しなくてもいい。ギルドの人が後で説明用の資料を作って配布するようだし」

『そういうわけにはいかないわよ。絶対に参加する。問題は護衛ねー…………ちなみに聞くんだけど、あなた、ユニークスキルを持っているかどうかわかるの?』

「わかるわよ」

『ふーん、日本から仕入れた情報は嘘じゃなかったか……』


 この前の地下遺跡の時かな?

 前田さんのユニークスキルをナナポンが見破ったのだ。


「嘘じゃないわよ。だから私をたばかろうとしても無駄」

『――ハリー、ノーマンに伝えて。やっぱりアレックスはダメよ。エレノアは見破れるっぽい』

『やっぱりかー』


 電話の向こうでクレアとハリーが話している。


「いや、守りなさいよ。普通に破ろうとするな」

『多分だけど、同じように嘘ついてユニークスキル持ちを連れてくる国はあると思うわよ?』

「あんたらはライバルが消えていいじゃないの」

『それもそうね。ねえ、写真はダメ?』

「ダメ。ギルドが撮って後で配るのは認める」


 写真なんか認めたらいつまで経っても説明が終わらんわ。


『まあ、わかったわ。その辺をノーマンに伝える。あ、そうそう。あなた、弟子が増えたの? この前のねぼすけさん?』


 多分、アルクのことだろう。

 本部長に会わせていた件がアメリカに漏れたのだ。

 …………いや、お漏らししすぎ。


「そうね。今は3人。ガキばっかり」


 一応、リディアちゃんをカウントしとく。


『そういう趣味でもあるの?』


 ねーよ。


「切るわね」

『はいはい。時間を取らせて悪かったわね。おやすみ』


 寝ないっての……


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