第5話 後話
その夜、3人の無事を祝いティゴスクの家では近隣の3軒が集まり宴会が開かれていた。
近隣3軒と言っても3軒目は2kmも離れた家だったが、その家族の他にも王都から早馬で来たという騎士が3名参加した。
騎士達は腕を斬り落とされた犯人を王都まで護送すると言うが、どうやって事件を知ったのであろうか?
その事をサエがルナーダに尋ねると、彼はファーマの伝書鴉だと、短く答えた。
「所で騎士達よ、青髪の君はご健勝か?」
ファーマの問いに騎士の一人が恭しく答える。
「はっ!大魔導士ファーマ様、王はますますご健勝で最近では王の間に4人もの美女を侍られ昼間からお子造りに励んでいるとの噂です。」
「ぶーー」
ルナーダがみそ汁を噴き出した
「王にあるまじき...舐めた事を...」
小さく呟いたつもりだったのが、真横に居たサエには聞こえた。
「あんた、ちょっと!確かに半年前に突然倒れられたからおかしくなっちゃったみたいだけど、仮にも賢王で通っている王様だよ?敵に凄腕の魔導士がいて妙な術を掛けられたって噂もあるみたいだけど、直ぐに元の賢い王様に戻ってくれるって。」
「そうか...皆がお前のように王を慕ってくれると嬉しいのだが...」
ルナーダはそういって寂しそうに笑った。
翌朝、村を旅立った三人が山を越えるとウインの村が見えて来た。
しかし村に入ると既に王国の騎士団が占拠しており、村人は全員捉えらた後であった。
「あの人達どうなるの?」
「さあな、どういう経緯かは知らんが村ぐるみで人さらいの片棒を担いでたって分かってしまったんだ、重い裁きを受ける事には変わりない。」
「子供達まで連れて行くの?」
「仕方があるまい、親共が皆連行されては残されても飢えるだけだ。全員王都の孤児院に預ける。」
「ふーん、そっか、孤児院か..これから大変だね、あの子たち。所でルナーダ君随分事情に詳しいね?ファーマさんから聞いたの?」
「文句あるか?」
つんっと横を向いたルナーダの横顔が何故かとても寂しそうだったので、サエは突然彼の横顔を力いっぱい抱きしめ豊満な胸にその横顔を押し付けた。
「うごっ何をっ!」
「ファーマさんが騎士団の人からお金を受け取る所を見たよ、これで又一緒に旅を続けられるねっ!」
その頃ファーマは、がらんとした田舎家にてルナーダのマントと格闘中であった。
実は、肩当の部分が内袋になっている。
彼女はティゴスク達に払った金貨3枚分のスペースへ貰った金貨縫い込むのに勤しんでいたのである。