《trip2-②》
初投稿から一月以上が立ちました。
この様な、拙い文字の羅列を御読み頂けている事に、感謝の念が絶えません。
これからも、このおっさんが足掻く日常を、御読みいただけたら幸いです。
「有ったかい、旦那ぁ。」
トマスの情けない声が、俺の背中越しに聞こえてくる。
「いや、無いなぁ……」
「勘弁してくれよ、旦那ぁ。無線飲食した上に、『夜霧亭』出禁とかになったら、目も当てられないぜぇ。」
「最後に財布出したんは、給金貰たこの辺やさかい、この辺りに有ると思うんやけどなぁ。」
そう答えながら、俺は周辺をごそごそとしている。
トマスも情けない声を出しながら、わりかし真面目に一緒に探してくれている。
メルリヤは……柱にもたれて、足をブラブラさせている。
うん、想定内。
「早くしてくださいよ。トマスさんだから許可しましたが、こんな所を旦那様に見られたら、酷く叱られてしまいます。」
「いやぁ、すまんね。穴埋めはするからさぁ。」
不機嫌な住み込みの従業員を、トマスが宥めてくれている。
そう、俺達が今いるのは、昼間荷運びの仕事をした商会の、入口を入ってすぐの辺りや。
俺の奢りの予定で、散々『夜霧亭』で呑み喰いしとってんけど、俺の財布が紛失している事が発覚しおったんで、青い顔になったトマスに促され、落としたと思われるここに探しに来ることになって、メルリヤも渋々付いて来おった。
別にツケにしても、あそこなら許してくれると思うんやが、トマスが気を利かせてくれて、商会の知り合いに掛け合うてくれてん。
思てた以上に気ぃ使いぃやなぁ。
ええ奴なだけに、少し罪悪感が有るわ。
さてと…………ここまでは順調やな。
時刻はぼちぼち深夜を回り、そろそろええ刻限やと思うんやけど……
『店先に人が集まって来ています。その数、13名になると予想されます。』
ないすたいみんぐ。
こんな真夜中にゾロゾロと、往来の無い店先に集まってくるなんて、まぁただ事やないわな。
そん中に、ゲルスは居る?
『居ます。』
ビンゴやな。
まぁ予想通りとは言え、ほんまに来て欲しくはなかったなぁ。
あぁ、めんどくさ。
しゃーないから気持ちを切り替えて、迎え撃つとしょうかいな。
因みに、連中の中に強そうな奴居る?
『ゲルス。32歳。盗賊団の斥候。戦闘レベルは7です。他の者のレベルもほぼ同様です。』
なんや、あいつが一番強いんかいな。
昼間、仕事の合間にゲルスとぶつかった時、『知識』はんから得た情報で、こいつが盗人グループである上に、今夜襲撃してくるのを知ってもうた。
知ってもうたら、知らん顔すんのも寝覚めが悪いし、かと言って説明すんのもかなり面倒い。
誰がこんなおっさんの、荒唐無稽な与太話を信用するねんって話やわ。
ほならどうすんねんって話で、考え抜いた挙げ句の苦肉の策が、この茶番劇っちゅうこっちゃ。
何かに気付いたらしく、メルリヤの様子が変わった。
店の外を気にする様子で、すでに目付きが鋭くなっとる。
やる気になっとるんか、既に腰の剣に手を添えている。
さて、ほな始めるか。
『ガタガタッ……』
しっかりと戸締まりされた出入り口を、何かで抉じ開けようとする音が、店内に静かに響き渡る。
「しっ!」
物音に気付いたトマスと従業員を、唇に人差し指を当てて制する。
意味を理解したらしく、無言で頷いたのを確認すると、小声で二人に話しかけた。
「従業員はんは、店の人間を安全な所に誘導してんか。あと、裏口はあっかい?」
「はい、ございます。」
「そぉかぁ、ほなトマスはそっから抜けて、衛兵か何かに助けを求めてくれるか。」
「旦那達は?」
「なぁに。助けが来るまで、適当に時間稼ぎしとくさかい。」
「大丈夫かい?」
「心配せんでも、今夜はまだ呑み足らんし。それにメルリヤも居るさかい、何とかなるやろ。」
そう言ってメルリヤを見ると、ものすごく不満顔でじろりと睨まれた。
「時間外労働。」
「そない言うなや。人助けや。後で水で割ったワインなんかより、旨いもん作って呑ましたるさかい、辛抱しいや。」
「……なら、それで手を打つ。」
そう答えると、メルリヤは扉に意識を向ける。
なんや、意外と酒好きかいな。
基本的に悪い子やないんやろうけど、それを表にようせんタイプの子かも知れん。
この年頃の子は、少々素直や無いんかもなぁ。
取り合えず、この中で一番戦闘力が高いメルリヤが味方に居るのは有り難い。
「てな訳やから、トマスは行ってくれ。出来るだけ早めに頼むで。」
「判ったぜ、旦那ぁ。無事で居てくれよ。」
「あほ。今夜はまだまだ呑むで。」
去り行くトマス達の後ろ姿に軽口を返し終わった頃、丁度鍵が壊さされる音が聞こえた。
そちらに意識を向けると、開け放たれた扉を潜って、口許を隠した男達が雪崩れ込んで来た所やった。
先頭に居る男達が俺達に気付くと、意表を突かれたらしく、誰何の声をあげる。
「何だ、お前らっ!」
「喧しゃぼけぇ!己等如きに言われたないんじゃどあほっ!」
男どもに怒鳴り帰しながら、腰の後ろから木の棒を引き抜く。
「ご近所の奥様方にアンケート取ったら、1000%不審者は己等やろがい。それを棚に上げといて、何眠たい事ぬかしとんねん。先ずは己等から、名乗れるモンなら名乗らんかいっ!」
逆に誰何し返した俺に答える答える声は無く、男達は一斉に刃物を抜いた。
「メルリヤぁっ!」
俺が声を上げるのに誘発されたか、近くに居った男達が斬りかかって来る。
それを、俺は木の棒で刃先を受け流すと眉間に
一撃を叩き込み、メルリヤはすれ違い様に胴を切り裂いた。
「………何?」
「出来るだけ殺すな。」
「……なぜ?」
「役人が来たら面倒や。」
「なぜ?」
「今夜、続きが呑まれへん様になる。」
「……判った。」
俺の軽口に、真面目にメルリヤが答えた。
酒が絡むと素直なんか?
新しい発見や。
まぁええねんけど。
「しっっ!」
列泊の気合いと共に、正面から俺に向かって短めの刃物、多分ダガーっぽいのを小脇に構えて不審者が突っ込んでくる。
短刀の扱いとしては正解でやな。
短刀、所謂短めのナイフは切り裂くよりも突き刺すことに特化しとる。
なので振り回しているバカは、格闘の経験の有るものからしたら、落ち着いていれば大して怖ぁあらへん。
更に言うならば、突いてくるのは体の正面やから、そこにさえ気を付けておれば、相手が素人ならば然程問題あらへん。
なので、突っ込んでくるボケの刃物を払い落とし、そいつの頭を右脇に抱え込む。
そのまま、左手で相手の右腕を掬い上げると、右手に持っている木の棒を掴み、ガッチリと固定したる。
すると、相手は力任せに押して来るしかしゃーないんで、その力の方向を変える為に右足を大きく振り上げ、背中で受け身を取る様にして、地面に倒れ込んだ。
そうなると、相手の脳天を地面に叩きつける格好になるので、手軽に意識を刈り取りやすいねん。
相手を放して起き上がる俺を見て、メルリヤが冷たい声を掛けてくる。
「無様。」
「そう言うなや。結果オーライやんけ。」
どうやらバランス崩して、倒れたんやと勘違いされたらしい。
まぁそれでもええんやけど。
勿論、偶然やない。
がっつりと狙ったもんではあるが、そう簡単に○DTが決まるとは思っとらんかった。
因みに、『殺虫剤』の意味があるらしいが、こんだけ集団が居ったら撒いても意味ないやろ。
こんな集団に一々○DTを掛けてられへん。
かなりま名前負けしとる気がするが、それでも憧れの技である事は間違いない。
『毒蛇』と呼ばれたプロレスラー、わりと好きやったなぁ。
悪役の華があったっと思う。
それはさておき、現実ここで生き抜く事が大事やわな。
「死ねぇっ!」
やなこった。
突っ込んでくる不審者を適当にいなし、トマスが連れてくるであろう衛兵の活躍を期待する。
まだかなぁ……
メルリヤは相手の脛等を切り裂いてから、剣の腹や柄で一撃を与えている。
一応、俺の言い分を聞いてくれてるっぽい。
酒の魅力やろうか?
こうなると、こいつらの襲撃は失敗で確定であり、後はゆっくりと防衛するだけや。
そうなると、少しは気が楽になるわな。
「さぁ。もう少し踊ろうかぃ。」
木の棒をくるりと回し、浮足立つ連中を睨め回しながら、ワザと見える様ににやりと笑った。
《See you next trip》
最近知ったのですが、
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