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《trip1ー④》

大阪弁で喋ていると、

いかにもガラが悪い様に思われがちですが、

おっさんは真面目な部類です。

まぁ、ガラの悪いんも多いですが………


御読みいただけたら幸いです。




 日差しを瞼に感じ、ゆっくりと意識が覚醒していく。

 それなりに寝心地の良い寝床の中で、シーツをたくし上げて二度寝を決め込む。

 悪夢に魘されずに、朝を迎えるのは何時ぶりやろう。

 あまりにも心地がええ惰眠を、易々と終わらせんのが勿体無うて、もう少し貪ろうとしたんやが……


 ドンドンドンッ


「お客さぁん!ご飯出来たよぉ!」


 扉を叩く騒音と声で、無理くり現実世界に引き戻された。

 まぁ、今もこれが現実なんかどうかは知らんけど。


「あぁ、今起きるわ。」


 扉の向こうに声を返し、上体を起こして一延びすると、未練たっぷりの眠気を追いやる。

 すると、こちらの許可も得ずに扉が開いて、洗面用の水差しを持って、この宿の従業員が入ってくる。

 この世界に、『防犯』って言葉は稀薄らしい。


「お日さん昇ってるってのに、暢気だね。」

「いろいろ忙しかったから、しゃぁないねん。」

「大人のそんな台詞って、信用できないなぁ。」


 そう言って、部屋の桶に水を注ぎながら、少女はケラケラと笑いおる。

 そう、少女や。

 この宿の娘で、確かミアと言っとったと思う。


『ミア・ジュール。11歳。戦闘力無し。

 宿《夜霧亭》の一人娘。

 母親と曾祖母の三人暮らし。

 家族、特に母親が大好きで、

 家業の手助けしている。』


 ええ子や。

 もとの世界じゃ小学生な歳なのに、立派に母親を手助けしとる。

 こんな健気な少女を目の当たりにして、好感度を爆上げせんおっさんは居らんと断言したるわ。

 俺も、結婚生活をまともに勤めていれば、こんな娘が居ったかも知れんと夢想してまう。

 まぁ、今の無駄に恵まれ過ぎた日本じゃ、ここまで出来た娘は育たんかとは思うけど、なまじ居らん愛娘には幻想を抱いてまうのは、50過ぎのおっさんの哀愁なんやろうか。

 この世界の子供が無事に育つ率がどんなもんか知らんけど、こんな子にはええ人生を迎えて欲しいと思う。

 俺とは違って……


「お客さん、どうしたの?」


 不思議そうに見てくるミアの目線に、物悲しさと眩しさを覚えながら、出来るだけ平然を装って答える。


「いや、昨日の酒が残っとるんかな。」

「だめだよ、お客さん。程々にしとかないと。言いたくないけど若くないんだから。」

「立派に言いすぎとるがな。」


 ミアの軽口に笑いながら返すと、ミアは年相応の笑い声を上げる。

 その笑顔に救われた様な気がして気が付いた。

 この世界に来て、初めてお無垢な笑顔や。

 いや、前の世界から含めて、どれぐらい子供の笑顔を見てないんやろう。

 今さらながらに、己の救いの無さに呆れ返る。

 この時間は守りたいなぁ。


「お客さん、料理冷めるよ。それに約束もあるんでしょ?」


 せやった。

 今日の予定を思いだし、急いで顔を洗うと、ミアに連れられて部屋を出て階下に降りた。



「あっ、お早う御座います。すぐ朝食の準備しますね。」

 

 階下の食堂に入ると、落ち着いた雰囲気の女性が出迎えてくれた。


『ルミル・ジュール。29歳。戦闘力無し。

 宿《夜霧亭》の主人。

 ミアの母親。旦那とは死別している。

 Fcup。』


 なんや余計な情報まであった様な気もするが、そこはスルーしとこ。

 ミアと同じ、栗色の髪の、溌剌とした別嬪さんである。

 さぞかし夜の酒場営業では、彼女目当ての男衆がようけ居るんやろうなぁ。

 などとしょうもない事を考えとると、目の前のテーブルに食事が運ばれてくる。


「ほれ、寝惚けとらんでさっさと食べな。」


『ハルア・ジュール。64歳。戦闘力無し。

 ミアの曾祖母。ルミルの父親カミルの祖母。』


 ミアと同じ栗色の髪の御婦人が、溌剌とした声を掛けてくる。

 見ると、脂と塩気の多そうなベーコンエッグに色の良くない葉野菜のサラダ、少しばかり野菜が浮かんだスープ、固そうなパンが並べられとった。

 あぁ……

 なんと、思いやりが込められた食事だろう。 

 まるで温泉民宿に行った時の様な、けして豪華ではないが、精一杯持て成そうとする思いが溢れていた。


「いただきます。」


 つい習慣で、手を合わせて糧を得られることに感謝する。


「なんだい、それ?」

「食事への感謝の思いってやつやね。」

「へぇ……育ちが良いんだねぇ。」

「只の習慣やよ。」


 ハルアさんの感心した様な声に、半分照れ笑いで答えると、目の前の食事に取り掛かった。

 うん、旨い。

 前世の現代日本での食事に比べれば、圧倒的に貧相と言えるが、それでも旨いと感じた。

 落ち着いてこの食事を堪能したかったんやが、慌てて食べる羽目となる。

 無表情ながらも苛立ちを巻き散らかした、白銀の髪色の少女が戸口に立ち、こちらを藪睨みしとんのが見えたから。



 食事を終えて、銀髪の少女のメルリヤ・リンドウに連れられて町中を歩く。


「遅い。」

「すまんすまん。昨夜ゴーランドさんが離してくれんから、結局遅くなってもうてん。」

「言い訳?」

「いや、マジですんません。」


 結構ガチに謝罪する。

 昨夜はこの街バスクに着くと、そのままこの街で顔役でもあるゴーランドさんの歓待を受けた。

 正直、そういうのは御遠慮申し上げたかったが、この街に招き入れてくれた上に、宿屋を手配してもらい、さらに仕事の紹介状を認めてくれた相手に対し、それを拒否するのは憚れた。

 結局、進められるがままにワインをたらふく呑む事になってもうた。

 予想していたより旨かったワインに後悔はしてない。

 幸い、二日酔いに襲われることもなかったし。

 問題は、この一歩前を歩く銀髪の美少女にお小言を言われる事ぐらいや。

 

「簡単に街の案内もしたかったけど、時間もないから先に店に向かう。」

「あぁ、わかった。」


 そういう会話の後、メルリヤの後ろに付いて歩きながら、街並みを観察する。

 交易の中継地らしく、荷車や馬車の往来が激しく、街中に活気がある。

 ガチのおのぼりさん宜しく、周囲を見回しながら歩いていくと、露店商が連なる通りに出る。


「っ!…………」

「ん?どした?」

「なんでもない。」


 急にメルリヤが強張ったんで、何ぞあったんかと緊張したが、まるで何事もなかったかの様にスルーされた。

 一応気になったんで、先程のメルリヤの視線の先を辿ると、小さな小間物商の露店があった。


「なんや欲しいもんでもあったんか?」

「ない。」


 取り付く島もあらへん。

 この年頃の少女とは、ここまで気難しいもんなんやろうか?

 まぁ、行き掛かり上で案内してくれとるだけやさかい、気を許してないんは判るねんけど、ここまでよそよそしいんは、おっさんのガラスのハートが砕けそうや。

 そやけど長い付き合いになる様な気もするし、もう少し距離を近づきたいんやけどねぇ。

 まぁ、ぼちぼち親しなっていけばええか。


 そんな事を考えながら歩いとると、前を行くメルリヤが立ち止まった。


「今度はどないしたん?」

「着いた。」


 どうやら色々と考えとる内に、目的の彼女が所属する商会に到着したらしい。



 商店の割りと広目の出入口を、多くの人が行き交っている。

 周旋って事は、職業安定所みたいな所か?

 今風に言うとハ○ーワークみたいなモン?

 交易都市らしく、肉体労働者の需要は多いやろうけど、そない毎日必要とする商店も少ないやろうから、日雇い労働者が殆どなんやろう。

 合理的な考え方やね。

 現代日本なら、外聞やら何やらの柵だらけで、こんな合理的な雇用は出来んやろう。

 そんな活気の有る様子を眺めていると、日本で唯一暴動が起こると言われていた大阪の街の、朝の公園通りの光景を連想するが、それと同様に活気があり、それと違って明るさがある。

 日本じゃ怪しい団体が取り仕切っとったりするけど、この世界やとまともな商会がやっとる。


 心底怪しくないかどうかは知らんけど……


 せやけど、ここで仕事を紹介してもらわな、今後の宿代すら怪しくなってきおる。

 俺は紹介状がポケットに入っているのを確認した上で、無表情で手招きする彼女の後ろに付いて店に入っていった。


 さて、どんな仕事があるんやろう……




《See you next trip》

いかがでしたでしょうか?


基本子供は好きです(変な意味ではなく)が、

クソガキ共は嫌いです。

そういうのに限って、

親も面倒臭かったりします。

困ったもんですねぇ………


感想等を頂けたら望外の喜びですが、

当方とうふのメンタルですので、

御手柔らかにお願い申し上げます。

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