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《Trip10ー③》

此度も御読み頂き有り難う御座います。


僅かでも楽しんで頂けたのなら幸いです。






 はぁぁぁぁ………………



 何遍聞いたやろか?


 この護衛対象であるウィレムという若モンが、付いた深ぁぁい溜息を聞くんは………


 流石に、こないに絶望感あふれる溜息を何遍も聞かされとったら、折角の酒も旨ぅなくなるわ。

 そう思いながらも杯に口を付け、チビリと酒を含んだ。



 この護衛の仕事に就いてから、これで丸二日が経った。


 そん間、流石に護衛対象の傍から離れる訳にもいかんで、この工房に泊まりっきりなんやけど………はっきり言うて、俺にゃやることないねん。


 こないな街中にある工房で、そない頻繁に襲撃がある筈があらへんし、日中なら余計に無いやろ。

 そしたら当然俺にやれる事があらへん。

 細々とした段取りが取れるはずが無いし、警戒とかその道のプロや無いんやから、やれる事がある筈あらへんやん。


 ほな呑むしかないやん、俺(笑)。


 いやマジで笑い話や無しに、俺如きにでける事があらへんさかい、護衛対象に張り付いとくしかあらへんやん。

 そやけど、その護衛対象がこの有り様やさかい、動きが全くあらへん。


 なんか他に暇潰しがあったらエエねんけどねぇ………


 幸いな事に、こっちに来てから酔いには強なったみたいやさかい、ちびちび呑む分には全くを持って問題はないみたいやし、まぁええやろ。

 気にしたら負けや。



 ええんやよ、細けぇ事たぁ。


 平均値の能力と、3つの名前を持つ美少女も言うとったやん。

 ………………いや、ペンネームも数えたら4つか?


 いや、それはエエねん(笑)。



 警戒の方は、さっきまで其処で豆菓子をぽりぽり喰ってたメルリヤが、音が五月蝿いとおん出されたんで、ついでにやってもうてる。

 ………出てく時に、えらく非難がましい目でこっちを見とったが。


 知らんやん。

 そこまで強うないメルリヤは、すぐに酔っ払いおるさかい呑まされへんねや。

 必然的にこうなったんやさかい、頑張って外回りしてもらお。


 ………………まぁ寒いやろうから、温かい飲みもんでも用意しといたろか。


 んな事を考えながら腰を上げ、工房に備え付けの小さな竈門の前に移動しながら、ふと思い付いた。


 俺、ほんま酒に強なったなぁ………


 元の世界でも、まぁ散々呑み散らかしとった方やけど、それなりにやらかした記憶もあるわ。

 ………そりゃ記憶の無いのもあるんやが。


 やが、こっちに来てから記憶が無うなるどころか、悪酔いする事もあらへん。

 酔うとる自覚はあるんやが、人は思い込みで酔えるもんやさかい、ホンマに酔うとるんかは解らへん。


 ………ほら、ノンアルで酔うた気になる人居るやん。


 俺もそうなんかと疑う理由は、次の日に一切残っとらん事や。

 この歳になると、嫌でも翌朝に響くねん。

 せやのに、毎朝の鍛錬が続けられんのは、単に翌朝に残らんさかいや。


 ………………はなから酒を控えたらエエと思う?


 でける訳無いやん。


 んな事をせなアカン位やったら、2回目の生を過ごす楽しみがあらへんがな。

 折角のオマケの人生。

 楽しみが減るんやったら意味ないやんか。


 話が逸れたけど、言いたいこたぁ悪酔いする事が無くたったって事や。


 ………これも『健康な体』って事なんやろか?


 こっちに来る時のやり取りに、アイツの言葉にそんなんが有ったんを思い出したんやが、ひょっとしたらそんな事も有るんかも知れんけど、ホンマの処は今となっては解らへん。


 俺にとったら悪いことやあらへんさかい、まぁエエねんけどね………



 んな事を考えながら、埋み火に焚き付け用の大小サイズの薪を足して、火吹き竹で息を送って火を起こし、ヤカンを五徳の上に置いてから定位置に戻る。


 その途中で、ふと廃棄された石像に目が留まったんで、その一部を摘んでテーブル戻ると、それを置いてまじまじと石像の上半身を眺めながら、改めて杯を傾てみる。


 ん。

 ええやん。


 仕上げまで行っとらんさかい、かなり荒削りの上に未完やねんけど、それでもそれが女性を表しとるんがよぉ解る。

 柔らかく豊満なシルエットに、装飾と思われる物を纏い、頭上に権威の象徴の冠を戴いとる。

 壊されとるさかい、全体の構成はよう解らんが、完成しとったらええ作品になったと思うわ。


 こっちの世界のレベルがどんなもんか知らんけど、ドルトン親方が太鼓判を押す位にはええ腕しとるんやと思う。


 ………なんか久しぶりに芸術作品に触れれたさかい、ちょっと嬉しいわ。


 まじまじと作品を見直し、杯を掲げてから飲み干した。


「………ん。ええやん。」

「………………………いや。駄目なんだ。」


 思わず零れ落ちた俺の呟きに、そう苦悩する男の声が帰ってきおった。

 勿論、落ち込みまくっとるウィレムの声や。

 

「………………表せてないんだ………『神』を。」


 苦悩する青年は顔を上げる事も無く、自身の実力を否定する怨嗟の声を吐き続けとる。


 ………そぉ〜かぁ〜?

 良う出来とると思うけどなぁ。

 勿論、俺の素人目やけど。


「………もっと………………もっと………………『神の御力』を表さないと。」


 慰めたつもりも在らへんけど、余計に己を追い込み始めた青年を見とると、いらん事言うてもうたかなと思う。


 けど、『神の御力』ってなんやねん?


「………例えば『神性』であったり、『慈愛』であったり、『威厳』であったり………………」


 なるほどなぁ………

 ホンマに神さんが居るんやったら、そんなんが溢れ出とったりするんやろうなぁ………

 そんなモンが、四六時中垂れ流されとるんかは疑問やが………


 アイツにそんなモン無かったし………


 悩みが溢れ出とったせいかも知れんけど、俺と少しだけ会話が成立したんやが、この苦悩は如何ともしがたい。


「………………………でも………………どうすれば………………………」


 せやなぁ………………

 どないすりゃええんやろなぁ………


 んな様に答えながら、改めて石像を眺めた。



 ………………………………ん?



 なんやろう、こん違和感は?


 なんか妙に引っ掛かるモンがあるんやが、それが何かわからへん。

 それが気になって仕方なく、酒を口に含みながらアレコレと考えてみる。


 ………………ん?

 …………………あれ?

 これってアレちゃうん?

 え?

 てかこれって………………



 なぁ………………


『何でしょう?』


 こっちの宗教にも、旧約聖書みたいなん有るん?


『旧約聖書ですか?』


 そうそう。

 ほら、なんかこーさ。

 神さんがこーやって世界を創ったとか、人類をこー創ってこー導いたとか………

 勿論、人間が勝手に都合のええ様に書いとるんやろうけどよ。

 んな感じで神さんの偉業を讃えた、御伽噺みたいんある?


『御座いますよ。全てを御伝え致しましょうか?終日語ったとして5日程掛かりますが。』


 勘弁して、マジで。


 もぅちょっとちゃちゃっとさぁ。

 ええ感じの所を程よぉ纏めて、ぱぱっと教えたってんか。

 ………てか、俺が何を知りたいんか、多分もう解っとるやろぅ?


『それでは………………

【最後に、神は人類を創り賜われた。………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………】』



 ………………やっぱり。


 その辺りは凝り固まった固定観念か………それとももっと愚かなモラルと言う名のエゴなんか………………


 まっ、どうでもええが。


 俺如きが偉そうな事言うても、所詮詮無い事なんは解っとる。

 せやさかい、ホンマどうでもええんやが………なんか今一納得でけん。

 前々から疑問に思とったしね。


 やから、一つ疑問(爆弾)を投げてみよう。




「なぁ………………なんで神さんが服着とん?」






《See you next trip》

如何でしたでしょうか。


宗教や神話を題材にされた芸術作品って、本当に多いですよね。

日常を切り取った物や、史実に基づいた作品も好きなのですが、やはりドロドロと暗く成りがちなのでしょうか。

明るく希望を与えてくれる様な、そんな作品が良いですね。


あぁ、美術館に行きたくなりました。(笑)


次作も粉骨砕身務めますれば、

感想等を頂けたら望外の喜びです。 

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