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《Trip9ー②》

御無沙汰致しております。

この度も楽しんで頂けたのなら幸いです。






「ここをキャンプ地とするっ!」

「………………………何それ。」




 薄ら寒い風が吹き抜ける茶色い草原を前にして、某麦わら帽子の主人公の様に両手を上げて宣言する。

 それを受けて、メルリヤが冷たい声を出しおるけども、まぁ気にしたら負けやわな。


 ………………たぶん、これ言うの2回目やんな?


 某局のディレクターの藤◯さんが、番組中に高らかに宣言されるんが面白ろうて、機会があったら言いたかってん。

 あれに出てたキャスト、あの頃は面白かったなぁ………


 え?

 今は?

 ………………あのクドさはどうでしょう(笑)。




 てな感じで、前の仕事で野営した所までやって来てん。


 ここで一晩野営して、ゆっくり呑みたいと考えとんねんけと………………



「………………意味が解らないんだけど。」


 せやろなぁ………


 メルリヤの文句は、まぁそらそやわなぁ。

 この世界の文化からしたら、いきなし僻地に遊びに行くわ言われても、意味がわからんのやと思うわ。

 俺もそない思てたもん。


 そやけど………………



「そぉかぁ?楽しいやん。」


 個人的にゃ色々と理由があるんやが、まぁ言うても理解されんと思うさかい、てきとーに沈黙を守る事にするわ。



 確かに前の世界やと、わざわざ面倒くさい事して呑むんに、あほな事してんなぁっと思とった位やさかい。

 特に、あないな寝難い所で寝んでもええやんと思てしまう。


 やが、あの独特の雰囲気の中で呑むのは否定しがたい。


 大自然の中、揺らめく焚き火を眺めながらグラスを傾けて、ほぅと息を付きながら、移り行く空と遠くの稜線を眺める。

 自分がどれだけちっぽけな存在で在るかを思い知らされながらも、生かされとる事を喜び感謝でる。


 ちっぽけやからこそ、悩みもちっぽけに思えて、やからこそ立ち向かう勇気が芽生えおる。


 そう考えたら、キャンプって心をリセットする場なんかも知れんなぁ………


 せやさかい、心の内を吐露しやすいんかも知れんわ。

 楽になりとうて………………



 そないな事を考えながら、対面でぼんやりと座って、蟻の行進をじっと見つめているメルリヤを見た。

 なんがおもろいんか知らんけど、その佇まいに不安を感じるわ。



 ぼちぼちや。

 ぼちぼち話を聞こうやんか。

 それでも喋りとうなかったら、まぁ言わんでもええ。

 無理くり聞き出そうとも思わんし。


 ただ………

 何時ものメルリヤに………一緒にアホ言うて、呑んで騒げる仲に戻りたいっちぅ、俺の勝手な欲望や。

 せやさかい、押し付けるつもりはあらへんが、やがお節介は焼いてもええやろう。

 おっさんの特権や。


「はいはい。まぁ、そないボヤかんと………………俺ぁ晩酌の準備しとくさかい、薪拾いがてら周囲の警戒して来てや。」


 まぁ、要らん心配やとは思うけど、世の中何があるか解らんさかいね。

 ………………俺もブタ箱に叩き込まれるたぁ思てなかったし(笑)。


「………………………解った。」


 僅かな沈黙の後、なんや言いたい事ありそうな顔でボソっと答えが返って来て、ぷいっと足早に立ち去って行くメルリヤ。

 その後姿を見送る俺は、長い様で短く、内容が濃いやろう今夜を思い描き、溜息を着いた。



 やが………………………………


 頑張るかぁ………






ーーー《sideーB》ーーーーーーーーーー






 はぁぁぁ………………………


 あの男に言われるがままに、薪を拾いがてら周囲を警戒していたが、どうしても溜息が堪えられない。


 この景色を見ていると、嫌でもあの時の事が思い出される。



 ………また、此処に来るとは思って無かったなぁ。



 来たのはついこの前だけど、良い思い出が無い。

 横柄な連中に偉そうにされるし、大ッ嫌いなのに襲われるし………………



 それに………フェミナと言い合ったのは此処に来た時だ。


 その時に、嫌に成る程思い知らされたから………



 ………私は人殺しなのだと………………



 無論、無差別に殺めたつもりはない。

 そんな悪趣味は無い。

 世の為にならない、救いようのない悪人共だけを手に掛けて来た。


 ………いや。

 そうじゃない。


 組織に言われるがままに、この剣を振るってきた。

 それが正しい事だと信じて。

 信じる事で考える事を放棄して。


 だけど………………


 それでも………

 たとえそうだとしても………

 人殺しには違いない。

 罪が消える訳ではない。



 私の手は血に塗れている。



 フェミナに指摘され、この時それを今更………本当に今更ながらに思い知らされた。

 どんな言葉を並べ立てても、人殺しは所詮人殺し。

 そこから逃れる事は出来はしない。


 仕方ない。

 そういう一族に生まれたのだから。


 そう思っていた。

 そう開き直っていた。

 そう………諦めていた。


 だけど………………



 なぜ、泣きたくなるのだろう………………



 こんな事は今まで無かった。

 だって当たり前の事なのだから。

 そう割り切っていた筈なのに………


 なぜにこの身を恥じ入るのだろう………………



 ぬるい環境に居過ぎたせい?

 それとも………………あの男のせいだろうか?



 あの男が現れてから、私の周りは一変した。

 ………いや、正確には何も変わってはいないのだろうが、周囲の動きが変わって行った。


 とんでもない男で、私の監視対象である男。

 突拍子も無い事を遣り始めたかと思えば、ひたすらダラダラと呑んで過ごし、悪党には一切の容赦がなく、そのくせ人一倍人情家で、他人の事に心を砕くくせに、何故か自分の命を粗末に扱う人。


 そして、一緒に笑ってくれた人。


 笑ってくれる大人は周りには居る。

 けど、何処か皆笑いきれていない。

 こっちの側に居ると、皆そうなるのだろうか?


 ………………上手く言う事が出来ないけど。


 ………何処か、みんな渇いていた。


 多分一番しっくりくる言い方だと………きっとそうなんだと思う。



 また一つ溜息を付くと倒木に腰掛けて、沈んで行く夕日を見るともなく見ていた。



 私は、どうしたいんだろう………


 今更何をどう繕ったって、血濡れた手が綺麗になる筈もない………


 この世界から抜け出す事も出来はしない。


 私は、この国を影から護る剣なのだから………

 その使命の為に生まれてきたのだから………

 その為だけに生きてきたのだから………


 その事に誇りを持っている。

 けど今はそれ以上に、やってきた事に嫌悪を感じている。

 それが、私の存在意義を否定する事だとしても。

 それは解っている。

 けど仕方ないじゃない。

 頭の中がぐちゃぐちゃで、考えが纏まらないのだから。


 指先で弄んでいた枯れ枝を折る。

 小さな八つ当たり………

 無意味なのは解っている。

 けど、モヤモヤして八つ当たって、その事にまたモヤモヤしている。


「………………何してるんだろ。」


 声に出して呟いて、空を仰ぎ見る。

 暮れ行く空には、寝起きでぼんやりしている月と、気の早い星が自己主張している。




 今更違う生き方なんて考えられない。

 ………いや、出来はしない。

 それは解っている。

 どう足掻いたって、血濡れた手が綺麗になる訳もないし、一族の呪縛からは絶対逃れられやしない。


 ………………というか、あの父から逃れれるとも思えない。




 だけど………………

 だけど、もし………………



 もしも、今更生き方を選べるとしたら…………



 私は、どうしたいんだろう………






《See you next trip》

いかがでしょうか?


言い訳にしたくはないのですが、

プライベート(仕事)が忙しく、

なかなか気力が湧いてきません。

やっと一息つけそうなので、年内にもう1つ位書き上げたいですねぇ。


年頃の少女の心境なんて、

おじさんが考えても理解しきれるとは思えませんが、

理解し合う事が大切なので、

努めようと思います。


次作も読んで頂けるのなら、望外の喜びです。

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