《Trip8ー⑧》
此度も御読み頂き有り難う御座います。
僅かでも楽しんで頂けたのなら幸いです。
「てめぇの仕業だろうがっ!」
なかなかにドスの効いた声が、店内に轟いた。
何時もの様に日雇いの労働に勤しみ、一日の汚れと汗を銭湯で流し、何時もの『夜霧亭』で己の労をねぎらおうとした矢先、美丈夫が扉を蹴破る勢いで飛び込んで来て、見付けたとばかりに俺達のテーブルにずかずかと大股で歩み寄り、開口一番責め立ててきおった。
憤怒の形相の『騎士』フェルナルドはんは、それでも男前や。
………………美形は徳やなぁ………
『………………………………。』
うっ、羨ましくなんかないヤイッ!
んなアホな遊びを頭ん中でしとると、フェルナルドはんは白状しやがれと詰め寄って来はる。
何の事やねん………って解らんふりをしてみるけど、大凡の見当はついとる。
今朝の件やろ。
敢えてフェルナルドはんから聞いた説明によると、今朝方、お貴族様のボンボン一派が縛られて広場に転がされとったらしい。
ご丁寧にも立札が掲げられ、そこにはこう書かれとってんて。
『この者共、
範を示さねば成らぬ身にも関わらず、
愚かにも凶行を繰り返し、
衆生の安寧を脅かす事甚だし。
よって天啓によりて罰を下し、
その罪を天下に知らしめる事により、
以後この様な愚行が繰り返されぬ様、
切に願うものなり。
もし我が想いが届かず、
再度馳せ参じなければ成らぬ事なき様、
切に願うものなり。
オオエ山の義賊』
要約すっと、『こいつら貴族の分際で、民衆を殺害する悪さをしとったさかいに、しばき倒して見せしめにするさかい、二度とこないなアホな事すんなよ。そやないと、また俺がしばいて、同じように晒すぞ。』って所やろうか。
「へぇ~。粋な事するモン、居るもんやねぇ〜。」
自分達でした事やさかい、自画自賛する様で烏滸がましいが、はい俺等がやりましたとも言えず、すっ恍けた感想を返した。
結構な名演技で惚けたのに、周りの共犯者共がくすくすと小さく笑うさかい、台無しになってまう。
これこれ、君等あかんやないの。
目の前の美丈夫の顔が、更に怖なっとるやん。
それ全部、俺に向くんやで。
勘弁してぇな。
「てめぇが………てめぇ等がやったんだろうがっ!」
「いやいやいや、何でぇ?そもそも俺がやれる訳があらへんやん。ほんまに誰が犯人か解らんのやし………えっ、てか。ほんまにそいつが犯人やったん?」
俺の知っとる情報は、全部『知識』はんから得たもんやさかい、証拠もクソもあらへん。
信用はしとるさかい、問題は無いとは思うんやが、この世界の捜査線で、どこまできっちり挙げるんかは別な話で。
こっちの連中が、どの程度まで踏み込めるんかは、未知数やな。
「………………割と簡単に証拠が揃ったからな。間違いなくクソガキがやらかした事なのは間違いがない。」
「それやったら良かったやん。」
「なにぃっ!」
「手間省けたやんか。何かと忙しい自警団の皆々様が、一個でも心砕かなあかん事が減るんはええ事やん。それに………………街のみんなが、安心して呑めるんはええ事やがな。」
「………………てめぇの頭ん中にゃ、呑む事しかねぇのか?」
「大事な事やんか。天下泰平の証拠やで。」
そう答えた俺は、呵々と笑う。
呑兵衛が憂いもなく気楽に酒を呑み、どっか遠くから女子供の笑い声が聞こえてきたら、そりゃ平和な証拠やんか。
そんな酒が好きやったし、今も好きや。
それを邪魔すんやったら………………まぁ、俺の敵やわな。
それなりに覚悟してもらおう。
「そんな簡単な話じゃねぇんだよ。」
「何でぇ?犯人確定でしょっ引かれて、しゃんしゃんで片付いたんちゃうん?」
「………………その様子じゃ、その後の騒動は知らねぇらしいなぁ………」
ん?
何の事やねん?
「そのクソガキ共が晒されてた所に、新たな立札が立ったのさ。」
知らんなぁ………
どないな事やねん。
なにげに振り返って、トマスの顔を見てみる。
すると何かを知り得たのか、トマスの顔が歪んどった。
何やねん………
何か良うない事が起こっとるんを感じて、正面の美丈夫に向き直ると、『騎士』フェルナルドはんは溜息と共に、馬鹿馬鹿しい事なんだがなと吐き捨て、あらましを教えてくれた。
街の皆にアホボンの愚行が晒されてすぐ、午前中には親の取り巻き連中に回収されて行ったらしいけど、その後に衛兵団がやって来て、折れた剣を鎖でぐるぐる巻きにして晒した後、立札を新たに掲げて行ったらしい。
其処に書かれとったんは………
『此度の件、
因を詰めれば奇想天外な事なり。
呪われし剣が人心を弄び、
操りて民衆を害しせしめし、
人血を求めし事、
明白となり候。
よって、
この忌まわしき魔剣を罰し、
断罪する事によって、
民衆の安寧を回復するものなり。
以後、
この処罰を持ってして、
一連の騒動の集結とする。
衛兵団』
やと。
またまた要約すっと、『一連の殺人事件の捜査の結果、意外な事にも犯人は魔剣やった。こいつが持ち手を操って殺人を行い、血を啜っとってん。せやから、この魔剣をぶち折って処したさかい、みんな安心せぇよ。んで、この話は終わりやさかい、これ以上むし返すんや無いで。』って感じやろか。
へぇぇぇ………………
この世界に、そないに魔剣てあるんかいな。
『少数ではありますが存在します。しかしながら、ほぼ伝説級です。』
因みに、そのぶち折られて晒されとった剣が、マジで都市伝説並の魔剣やった可能性は?
『ゼロとは言えませんが、可能性は粗無いかと思われます。』
………ほんで、『知識』はんの見解ではどないなん?
『………有り得ません。捏造、隠蔽かと。』
………せやろなぁ………………
俺がしょっ引かれたんも無理くりやったし、衛兵団が真犯人共を庇とんのは間違い無いやろなぁ………
まぁお貴族様相手やし、色々とあるんやろうて。
………こん世界でも『上級国民』かいな。
逆か。
こんなお貴族様が居るような世界の方が、差別や特権とかが蔓延るんやろうな。
クソやな。
そやが、そんな世界に落ちたんやさかい、それを受け入れなしゃぁない。
どないな世界でも、クソだらけでも光るモンはある筈やと信じて。
それがガラス玉か宝石、または黄金かメッキかは知らんけど………………
「これで今迄の捜査は取り消し。全ては有耶無耶で、これからも捜査が出来やしねぇ。これじゃ何も解決していねぇじゃねぇかっ!巫山戯んじゃねぇっ!」
口惜しさをにじませて、声を荒げる美丈夫を見て、思わず笑みが零れる。
ちゃんと『法』を、民衆を守ろうとする治安維持機構が………男が居るんが嬉しかってん。
まだ、この世界は大丈夫やと思えるわ。
「………………なに笑ってんだ、てめぇ。」
俺の生暖かい視線に気付いた美丈夫が、毛虫でも見た様な顔を向けてくる。
その視線は、一部の性的趣向の方々にとったら、それこそ値千金なんかも知れんけど、俺には響かへん。
その手の趣味嗜好はあらへんからなぁ………
きっと、こいつのファンの中にゃ、そっち方向の熱狂的な男性も居るんやろなぁ………
「………………てめぇ、なんか失礼な事考えてねぇか?」
◯ュータイプかっ!?
『個体名ジェイク・フェルナルドは、読心術に関する魔法やスキル関係は所持しておりません。』
………………他人様のボケに真面目に返すんは、大阪やったら刺されるで。
てか、なんで◯ンダムねたを知ってんねん?
『以後気を付けます。』
………………それって、またやるっちゅぅ前振りやよね?
愉快な『知識』はんとの漫才は程々にして、生真面目な騎士はんに向き合う事にするわ。
「いや、フェルナルドはんが居ったら、庶民も安心してられるなぁ………って。」
「………………舐めてんのか?」
憤懣遣る方無い様子で仰る美丈夫も、耳朶が赤くなっとったら迫力がないよな。
おぉ、ついにデレたか?
「………………てめぇ、やっぱり失礼な事を考えてるだろう。」
『マスターが顔に出やすいだけだと推測します。』
こっちがボケ考える前に、ツッコミを入れるんは新しいけど、ノリが難しいから止めて欲しい。
『善処します。』
………………やめる気はないんやね。
最近、御しにくく感じ取る『知識』はんの相手は程々にして、心清やかな騎士はんに改めて向き合う。
「せやなしにね。治安維持機構が全部腐っとったら救いようもないけど、『騎士』はんみたいな御方が居ったら、民衆には有り難いもんやなって思てね。」
「………………ネズミの一鳴きじゃ、世の中は変わらねぇだろうが。」
「そん時ゃ、国が滅ぶだけやんか。」
今振り返ったら、あん頃の日本は滅びる寸前やったんかもね。
「………………てめぇ………今のは聞かなかった事にしてやる。」
おやおや。
俺のさっきの発言は、思とったより危険思想やったみたいやな。
「そりゃスマンね………………まぁそれをさて置いても、これ以上は流石にアチラも警戒しおって、街の人等への無法も控えられて、無駄な血が流れる事もあらへんやろう。今はそれで良しとせなあかんのちゃう?」
「………………ふぅ。確かにクソ貴族共も、暫くはつまらんマネはしねぇだろうな。」
「せやろ?それだけでも、この街にとったら良かったやん。」
「………てめぇ程にはお気楽にぁ成れねぇが、まぁ今は良しとしとくか。」
「そうそう。ぼちぼちしか変わらんやろうしね。」
世の中は、そんな簡単に変わりゃしねぇ。
特に腐った世の中程、変わるんを拒みやがる。
「………………てめぇ。革命とか考えてねぇだろうな。」
「んな面倒くさい事、俺が考えるかいな。俺ぁ静かに呑めたらええねん。」
「はっ!何処までも、てめぇらしいや。」
やっと美丈夫から笑みがこぼれる。
おっ?
ついにデレたか?
「………………てめぇ、やっぱり失礼な事を考えてるだろう。」
心底嫌そうな顔をする美丈夫が、今だけは許してやると吐き捨てながら、店の出口に歩を進める。
「なんや。呑んでいかんの?」
「残念ながら勤務中だし………てめぇと馴れ合う気はねぇ。」
振り向きもせず、夕日が差し込む向かう姿は、まるで一服の絵画の様や。
やっぱり男前は得やなぁ………
さて………………
こっちはこれ位でええやろ。
何時もの呑み仲間を振り返り、次に控える難問に、密かに頭を抱えとった。
《See you next trip》
如何でしたでしょうか。
いまいちシステムを理解していないせいなのか、
たまにデータをぶっ飛ばします。
………本気でスマホをぶん投げたくなりますねぇ(涙)。
私みたいなスマホで入力している者からすれば、
以前の様なメールが使えれば、
データを飛ばす確率が減るのですが………
まぁ運営に文句を言うのも御門違いなので、
以後気を付ける努力をします。
………でもまたやるんでしょうねぇ(涙)。
次回作も努めますので、
御読み頂けたら望外の喜びです。




