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《Trip7ー③》

毎度有難う御座います。

今回も楽しんで読んで頂けたら幸いです。







 ここをキャンプ地とするっっ!!




「………………何それ。」

「いや、言うてみたかってん。」


 昔見ていた超ローカルのバラエティ番組で、出演者等が野営をする際に、ディレクターが高らかに宣言しとってん。

 それが妙に面白ろうて、極一部のマニアでは流行っててんけど、言えるもんなら一度は言うてみたかって奴やね。

 まさか異世界で言う事になるたぁなぁ………


 言うてよかったんかなぁ?

 どうでしょう。


 まぁ、こっちの世界の若い娘さんにゃ刺さらんかったみたいで、氷点下の視線をメルリヤから送られとるけど。




 ここは街から丸一日掛けて移動したとこらへん。

 今夜はここで野営するらしい。


 例の依頼の話を聞いてから結構な日にちが過ぎ、今朝から案内の仕事をこなしとる所や。


 俺が馬に乗れん事もあって、俺等用に馬車を手配してもろたさかい、快適とは言えんが、それなりに疲労の軽減にはなっとる。

 いっしゅく歩かされんのかと思とったさかい、これは素直にありがたい。

 若ないねん、こちとら。

 なんぼ休憩挟んだいうても、3日も歩かされたらヘロヘロになってまうわ。


 せやさかい、ここに来るまで御者台で揺られながら、のんびり景色を楽しんどってん。

 この世界に来てから、ここまで街から離れたんは初めてやさかい。

 ちゃんとした事言うたら、こっちに来た時もこれ位離れとったんやろうけど、あん時は余裕が無さ過ぎて、景色を見る事もでけんかったしね。


 特に変わり映えせん街道沿いの草花。

 遠くに仰ぎ見える山々には、もう冠雪が見える。

 声を発する事もなく、悠然と滑空する鳥が渡る空は、高く遠く澄みわたっとる。


 綺麗やなぁ………


 前の人生やと、最後に空を見上げたんは何時やろう?

 そんな余裕なんぞ無かったわ。

 ひたすら足元を見とった気がする。


 病んでからは、車を運転する事も無かったさかい、先輩の車で旅行に行った時は、車窓の景色を見るんが楽しみやったわ。


 これからはちょくちょく空を見上げよう。

 旅に出れたら景色を楽しもう。

 んで、仲間の笑顔を心に刻もう。


 もう少しだけ………



 んで、今回の旅の仲間やねんけど………


 まず、依頼を直接受けた俺。

 んで、案内の補助から細々とした事をこなしてくれとる、今御者をやっとるトマス。

 そんで、護衛全般を受け持ってくれとるメルリヤ。

 何時もと変わらんメンバーやねんけど、ここにもう一人、護衛関係を担うもんが居るんやが………



「どうしたんだい?旦那ぁ。ぼーっとしてさ。」


 馬車の御者台から降りた俺の肩に、後ろから腕を回してきおる奴が居る。

 名をレミオと言う、護衛を担当する荒事士で、今回ガルストンさんが準備してくれた、ちょいとチャラそうやけど、ええ腕しとる兄ちゃんらしい。


 兄ちゃん?


 まぁ悪い奴や無さそうやけど、気安すぎるんが玉にキズやな。

 こないズケズケと来るんは、ちょっと苦手やなぁ。

 陰キャにパリピは辛いんよ。


「どないもあらへんよ。ちと馬車に揺られ過ぎて、腰とケツが痛いだけや。」

「はっ。年寄り臭いねぇ。歩かなくても良いって言う、文字通り良い御身分だってのによ。」

「実際歳喰っとるさかいねぇ。痛いもんは痛いんやよ。」


 そう言いながら、肩に掛かった腕を外す。

 距離感が近いんやよ。

 こっちに来てから、こないなタイプ居らんかったさかい、面食らってまうわ。


「そうかい。まだ先は長いから、用心しなきゃね………っと。」

「周辺の見廻りにいく。」


 尚も気安く話掛けてこようとするレミオの腕を、メルリヤが有無を云わさす引っ張って行く。


 なんや、不機嫌そうやなぁ………

 言葉の端々に棘がびんびんやねんけど。


 そういや、今朝の顔合わせん時から妙に機嫌悪かったなぁ。

 ひょっとしたら顔見知りなんかも知れんけど、そない毛嫌いする様なモンを、わざわざガルストンさんが組ませへんと思うんやが。

 何時もの仲間内とちゃうモンが混じったさかい、それでおもんないだけやったらエエんやけどね。

 護衛役の連携が上手く取れんかったらこっちの命取りやし、あんまし長引く様やったら言わなあかんかもなぁ。

 まぁメルリヤも、その辺の事は理解しとるやろうけど。


 あの辺の年頃は難しいからなぁ………


 変に拗らせへんかったらええが。



 まぁ、今うだうだ言うてもしゃぁない。

 やらなあかんことを、先にやってまおう。


「トマス。何したらええ?」

「なら旦那ぁ。解るかなぁ?焚き木集めて欲しいんだけど。」

「まかしときぃ。なんぼ俺でも、それ位出来るやろ?」

「………どうして疑問形なんだい?」


 トマスに、疑惑の眼差しを向けられるのはなんでやろう?

 焚き木集めてくる位、流石の俺でも出来ると思うで?

 やった事無いけど。




 さてと、焚き木はどこかいなっと………


『10時の方向に焚き木に適した物があります。』


 雑木林の傍を彷徨きながら、落ちとる薪になりそうなもんを探して行く。

 勿論『知識』はん頼りや。

 的確に目的のもんまで案内してくれよる。

 ほんま、様々やで。


『恐縮です。』


 焚き木に出来るんは程よく乾燥しとるんがええんで、生木は火が着きにくいから取ってもしゃぁないんよ。

 せやから倒木があればベストやが、それ以外にも枯れ枝や落ち葉なんかも集めとく。

 それらを纏めてズタ袋に詰め込んで、入らんもんは引き摺ってく。

 なんぼ長ごうても、ぶった切ったらええんやからね。


 こんなもんでええやろ。


『明朝まで焚き火をするのであれば、現在の量では不安が残ります。再度、収集に廻る事をお勧めします。』


 そうなん?

 まぁ、しゃぁないかぁ………


『それに現状その他諸々を考慮すれば、まだまだ不足になると予想されます。』


 ん?

 なんやそれ?


 『知識』はんが、よう解らん事を言い出したと思たら、視界の端に白いもんがちらちらと動きおる。

 気にして見ると、それが人である事が解った。


 ………流石にあの白尽くめの格好は、森ん中やと目立つなぁ………


 あれが依頼人………って言うてええんか知らんけど、俺等が案内せなあかん相手のグループや。

 なんでも、なんちゃら教とか言う宗教団体の、白バラ○ーヒーたらなんたらって御大層な名前の騎士団らしいわ。

 今朝の顔合わせの時に挨拶してんけど、そん時の騎士がまぁ糞偉そうな事!


『此方の事は此方で対処致す故、その方等は不必要に近ずくでない。不用意に近づけば、不心得の意思有りとして処す。』


 やとっ!


 まぁ色んな奴居るさかい、ある程度警戒するんはしゃぁないとしても、いきなし見下す感じで盗人扱いしやがってん。

 それも、こっちの挨拶遮ってやで。

 どんだけ育ちが悪いねんって思てんけど、聞いたら貴族出の連中らしい。

 育ちが良すぎて、逆にねじ曲がっとるみたいや。


 顔合わせやって言うてるのに、一番の偉いさんは馬車から降りて来やがらんと、挨拶もなしやで。


 流石にイラッとしたさかい、依頼を断って帰ろうかと思てんけど、慌てたトマスに執り成されたんで辛抱したった。


 まぁ考えように寄ったら、ややこしい宗教団体に関わりとぅないし、こんな鬱陶しい連中の相手もしたないさかい、逆に良かったんかも知れんけど。


 せやさかい、近付かんと放っとこ………って思てんけど、ちと気になる事が有ったんで、少しだけ近づいて様子を見る事にしてん。


『………………………………………。』


 なんか言いたいん?


『いえ。物好きだ等とは言ってません。』


 言うてるやん。

 放っといてんか。


 少しだけ自覚が有る所を指摘されながらも近づいて行くと、白地に緋色を基調とした装備に帯剣しとるもんがうろうろしとる。

 年齢的に言うたら、メルリヤとどっこい位やろうか。

 おぼこい顔に汗を浮かべながら、必死に藪をつついとる。

 上手い事焚き木を見付けられんのやろか?


 確かあの子は………


「どないかしはりましたん?」


 気付いた時ゃ、声を掛けとった。


『………………………………………………。』


 解っとぉよっ!

 御節介や言いたいんやろ?

 自覚有るわい。


 向こうから関わんなって言われとんやさかい、放っときゃええんは解っとるけど、この子だけはあの連中の中で唯一普通に………てか礼儀正しく挨拶してきて、他の連中の非礼まで詫びてくれてん。

 当たり前の事やねんけど、あの連中の中ではまとも過ぎて、返って好感度が高なるわ。


 やが、苦労してそうやなぁ………


『マスターが気に入りそうなタイプですね。』


 その手のちゃちゃ入れるん、やめなさい。


「あぁ、貴方は………」


 破顔一笑したその子は、嬉しそうに此方に駆け寄って来はる。

 その後ろには、ぶんぶんと振られる尻尾が見えるみたいや。

 メルリヤを猫に例えるなら、この子は犬っぽいなぁ。


「貴方も薪拾いですか。」

「そう言いはる貴方もでっか?御一人で?」

「はいっ!僕はまだ従騎士なので、皆さんの御世話をさせて頂くのが仕事なので。」

「せやけど大変でしゃろ?」

「これも立派な騎士に成るための修行ですから。それに、神様が見守ってくれてますから、少しも大変じゃないんですよ。」


 そう言うて微笑む顔が眩しい。


 はぁ………

 何とも出来た子やなぁ………


 他の連中にも見倣うて欲しいもんや。


「しかし凄いですね。もうそんなに沢山集められたのですね。流石、慣れてらっしゃるんですね。」

「いや、そない褒められたもんやないんでっけどね。」


 『知識』はんに丸投げやし。


「あの………もし良かったら、手伝わせてもらいましょか?」

「有難う御座います。遅くなれば、先輩方に叱られてしまいますので、とても助かります。しかし、宜しいのですか?」

「正直に言いますと、あの騎士の方々は苦手やさかい、ちゃっちゃと終わらせてまいましょ。」



『………………………………………………。』


 なっ、何ぃ?


『………………言うと思いました。』


 せやかてしゃぁないやん。

 こんな子が頑張ってんねんで?

 ちったぁ助けてあげたいやん。


『………………(はぁ)………2時の方向です。』


 えっ?

 まさか溜息つかれた?


『………………気の所為です。』


 ………まぁええわ。



「ほな行きましょか。」

「はいっ!………そう言えば、まだ御名前を御伺いしていない様な………確か今朝も御名前を仰っておられませんよね?」

「あぁ、実は記憶を無くしてましてね。仮の名前も付けてないんですよ。」

「っ!………すみませんっ!不躾な事を申しまして。」

「いやいや、気にせんといて。たいした話やあらへんし。せやさかい、気安ぅおっちゃんとでも呼んでください。」

「それでは、おじ樣と呼ばせて頂きますね。」

「おぉっ!?………オジサマァぁぁ~?」


 いやぁぁぁぁ。

 それは勘弁して欲しいなぁぁ。

 今までそないに呼ばれたこと無いし、背筋がむずむずすんねんけど。

 メルリヤ辺りが知ったら、絶対大爆笑しながらいろて来る奴やん。


「はいっ!おじ樣っ!」

「………………もぅええです。」


 好きに呼んでと言うた手前、もぅしゃぁないと諦めるしかねぇわな。

 なんかぶんぶん尻尾の他に、犬耳の幻も見えてくる勢いやし。

 ………まぁ、それでも嫌やねんけど………


「そーいや、えーっと………」


 朝に紹介を受けたけど、態度LLな連中の相手するんも面倒やったんで。

 ごめんなさい。

 まともに聞いてなかったかも………


「あはははっ!それはまぁ仕方ないですねぇ。」


 頬を掻きながら、苦笑いを浮かべている。

 何とのぉ思う所も有るんやろな。

 苦労しとる証拠やろ。


 ちゃんと覚えといてくださいねと、綺麗な笑みを浮べ、真っ直ぐな瞳を返してくる。



「僕はノエルですっ!」






《See you next trip》

お読み頂き、有難う御座います。

楽しんで頂けたでしょうか?


未だにシステムを理解しきってなくて、

誠に申し訳無いと思っとるのですが、

誤字報告してくださった方、

本当に有難う御座います。

一層努力してまいりますので、

これからも宜しくお願い致します。

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