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《Trip4ー③》

この愚作を読んでくださっている皆様。

御待たせして、申し訳ありません。


今回も御読みいただけたら幸いです。





 トマスから荷物を受け取って包を解くと、中にはドルトン親方に特注しとったもん、円形の盾状の物とノートサイズのケースが2つ、小さな黒板が鎮座しとった。

 俺はその中から、少し小ぶりな木製のケースを取り上げ、ワクワクしながら中を確認する。


 中には鋭い針状の『ポイント』が沢山と、細めで心持ち長めの『シャフト』がサイズ違いで数組に、それに取り付ける矢羽である『フライト』が数種類、そしてそれらを繋げて、重りの役割をする『バレル』が数種類入っとった。


「なんだいそれ?」

「んん?酒のアテやがな。」


 覗き込んだダリアが問い掛けてくるのを、適当にあしらいながら、ケースの中のそれを組み立て始めた。

 

「せや。暇しとんねやったら、裏庭に置いとるコンパネ取ってきてくれんか?」

「こんぱね?」

「………あぁ。こんぐらいのでっかい木の板や。」

「旦那ぁ。それだったら、俺が運んでくるぜ。」


 ダリアと喋っとると、横合いからトマスが口を挟んでくる。


「なんだい急に?アタイが頼まれたんだよ。」

「良いじゃねぇか。そんな面倒な事、関わり合いたくねぇだろ?」

「バカだねぇ、こんな時の旦那の話には、絶対に面白くなるから乗っかとく方が正解なのさ。アンタこそ、水霊に取り憑かれないうちに、とっとと帰ったらどうなのさ。」


 水霊?


『この世界では、風邪引きの初期症状を、[水霊に取り憑かれる]と言います。』


 へぇぇ。


 思わず二昔前に流行った、水色のボタンを連打しとうなった。

 所変われば、表現も変わるもんだねぇ。

 結構興味深いわ。


 せやけど、このままやったら埒が明かんなぁ。


「やぁーやぁー言うてんと、重たいもんやさかい、二人で運んできてんか。」


 この俺の提案に、取り敢えず二人は納得したらしく、大人しく裏庭に向かって行きおった。

 なんやら小声で言い合いをしながら‥‥‥‥‥‥

 なんやねん、あいつ等‥‥‥‥


「おじさん、モテモテだね。」

「子供が要らん表現を覚えんでええねん。あほな事言うとらんと、彼奴等の分のお酒持って来たって。」

「はぁーい。」


 誰や?

 ミアに要らん言葉を教えとる奴は?

 この生活環境が余り宜しくないとはいえ、子供に要らんこと教えとる輩が居るんやったら、取り敢えず頭叩いとかなあかんなぁ。

 そんな事を考えながら、色々と組み合わせを変えて、自分に最適なもんを探して組み上げていく。


「「旦那ぁ。何処に置くんだい?」」


 見事に声をハモらせたトマスとダリアは、コンパネを仲良く持ちながら、ハモらせた事が不愉快の様で、お互いを視殺しようとしていた。


 こいつ等、実は仲ええんとちゃうん?

 確実にややこしい事になりそうやから、絶対に口にはせえへんが‥‥‥‥


「おぉ、こっちこっち。ここの壁にばしっと取り付けてんか。」


 事前にハルア婆さん等に許可を取り付けてある、酒場の隅の一角を指差した。

 そこに木の板を貼り付けると、俺は直径40センチ弱程度の、円形の盾状の物を取り出した。


 基本的に黒に塗られたそれは、五重の円と20本の放射状に広がった直線で区切られており、その線上を細い針金が走っとる。

 それらに区切られた所を、やや暗めの朱が格子状になるように彩られとるそれは、芯に硬い木材を使い、そこにコルクの様な素材を重ね、最後に麻布を幾重にも貼り付けてある。

 枠外には数字が1から20までの数字がランダムに記されておる。


 因みに、この世界にも数字が存在するが、驚くべき事にアラビア数字そのまんまである。

 流石に呼び方は違ごうて、『神代言語数字』と言うらしいが‥‥‥‥


 以上、『知識はんの豆知識』でした。


『御清聴有り難う御座います。』


 誰に言うとんの、君ぃ。

 話がややこしく為りそうやから、時を戻そう‥‥‥‥ひゅぅ〜


 さて、中心部分の直径3センチの円の中は、黒を中心として朱が外周を染められており、さながら『牡牛の目』様や。


 そう、これは『ダーツボード』や。

 それも機械式の『ソフト』やのうて、昔ながらの『ハード』や。


 この前、ふと向こうの世界での事を思い出した時に、ダーツの事が頭に過ぎってから、久々にやりたなってん。

 昔にやっとんたんは機械式の『ソフト』やけど、あのボードをこちらの技術で再現するんは、現状不可能やと思えるんで、やったことはないけど『ハード』にしてみた。

 これぐらいやったら、こっちの文化にも影響ないやろ?


 ガキん頃、親戚の兄ちゃんの部屋に飾ってあった、ダーツに妙に憧れたなぁ‥‥‥‥

 壁に穴開けるからって、触らせてもくれんかったが。


 てな訳で、貼り付けたコンパネにいそいそとボードを取り付けた。

 場所を借りとるだけやさかい、壁は保護しとかんとね。

 高さは、中心が170センチ位、だいたい目の高さになるように設置し、そっから250センチ程離れた床に線を引いた。

 ボードの横に黒板を取り付けたら、取り敢えず準備完了や。


 早速、さっき組み上げたダーツを手に取り、スローイングラインを越えない様に構えると、三投してみた。

 トッ、トッ、て響く音が気持ち良い。


 ‥‥‥‥もうちょい重めがええかな?


 投げてみて、少し気になったんで、バレルを変えてみる。

 好みは『ストレート型』より、前が少し膨らんだ『バレット型』がええな。


「なぁ、旦那ぁ。そろそろ教えておくれよぉ。」

「まぁ待や。ちゃんと遊ばしたるさかい。」


 鼻歌交じりにダーツを組み替えて調整しとると、ダリアが辛抱堪らず聞いてきおった。

 流石にトマスは口を出さんが、気持ちは同じな様や。

 別に焦らしとるつもりは無いんやがね。

 二人の背後に犬のしっぽが、ぶんぶん揺れてる幻が見えるわ。


 二人に待て待てと言いながら、調整し終わったダーツを、トッ、トッ、と三投して確認して納得すると、もう一つのケースを開けて、中のダーツを組み立て始めた。


「こっちのは作りが簡単なんだね。」

「こっちには耐久性も求められとるからなぁ。」


 一種類しか無い平均的なストレートなバレルに、フライトと一体化したシャフトを取り付け、少し太めのシャフトを嵌め込んだ。

 それを3の倍数、取り敢えず9本組み立てると、ルミルさんから貰った使わなくなった木製のカップに差して、スローイングラインに近いテーブルに置いた。


「ほな、トマス、やるかい?」

「‥‥‥‥いや、譲るよ。」

「どうしたんだい?」

「別にぃ。やりたそうだから、譲ってあげるよ。」

「ほぉぉぉ‥‥‥‥」


 なんかトマスとダリアが、変なマウントの取り合いをしとる気がするんやが。

 さしずめ、俺がトマスを先に呼んださかい、気分良うして上から目線で譲ったってるって所か?


 あぁ面倒くさいっ!


「そう言う事なら遠慮なく。んで、どうやるんだい?」

「そない難しい事あらへんで。そこの線から足出さん様にして、腕だけの力で的に向かって投げんねん。」


 そう言うて、例を見せる目的で並んで投げるポーズを取ってみる。


「こう振りかぶって、思いっ切し投げたらあかんで。的が壊れてまうさかいに。」

「乙女に向かって失礼だなぁ。そんなに怪力じゃないわよ。」

「魔猿並みの怪力のくせに。」

「何をぉ!」

「はいはい、喧嘩しない。トマス、要らんちゃちゃ入れんようにね‥‥‥‥せやけど、誰が投げても力いっぱいやったら、的の寿命が短なるもんやさかい、禁止事項になっとんねん。せやさかい、投げる方の手と同じ方の足を前にするんが、投げるときのルールやね。後は、この線から前に足を出さん事位かな。ほな、やってみ。」

「アタイはこっちのを使うのかい?」

「こっちは俺専用やがな。貸し出されるんは、単一規格の数打ちや。」

「‥‥‥‥まぁ『剣聖、剣を語らず。』って言うしね。」


 そう言って、見様見真似で投げてみたダリアの矢は、枠外に出ることはなかったものの、中心からは大きく外れとった。


「さっすが『剣聖』(w)。」

「煩いねぇ。手元が狂ったんだよ。」


 ダリアの言う通り、ほんの少しの狂いで、狙いが大きく逸れるのがダーツなんよ。

 指先が引っかかったとかで、狙いが0.01度でも狂ったら、2メートル半先では何センチ違うか。

 予想外に繊細なゲームなんよ。


「そやけど、結果は悪うないで。点数は外周に書いてある数字の6点やけど、外の二重になっとる所やさかい、二倍の12点やよ。」

「それじゃ、内側の二重枠の中なら?」

「三倍になるで。因みに真ん中は一律50点や。」


 中心の点数は、場所やルールによっては違う場合もあるらしいんやが、ややこしいからシンプルにしとこう。


「それじゃ、旦那ぁ。17点迄なら、中心よりも点数が大きいのかい?」

「おぉ、計算はやいなぁ。せやで。そやけど、狙えるもんなら入れてみ。中心の方が入れやすいから。」


 実際に3倍枠の方が狭いんもあるけど、心理的に中心の方が狙い易いってのもあるみたいや。


「ほな、実際に遊んでみよか。取り敢えず点数勝負で行こか。一回三投づつ投げて交代して、それを8回で勝負や。」

「よぉし!アタイから行くよぉ!」


 勢い込んで投げたダリアの矢は、見事に3倍枠に入ったんやが、僅かに20を外れて隣の1やった。


「さっすが『剣聖』(w)。」

「うっさいわねぇ!」


 トマスのイジリに、顔を真っ赤にしたダリアは、今にも湯気が出そうや。

 ダーツって、意外とメンタルのゲームでもあるさかい、そんなんでまともに投げれる訳あらへん。

 結局、三投の合計は30点にも届いとらん。


「くっそぉ〜。」

「あまいなぁ。まだまだ修行が足らんのとちゃう?」

「旦那まで、そんな事言うのかい?」


 不貞腐れるダリアを横目に、ラインに足を揃えてゆったりと構えると、俺は静かに一投目を投げた。


 なんか上手く投げれた時って、ダーツと的が糸で繋がっとる様な感覚があるよなぁ‥‥‥‥


 それは見事に、中心の枠内を捉える。

 おぉ〜っと言う周囲のどよめきに片手で応じるが、まぁこれは照れ隠しやがな。


 こんなんで経験者が自慢できるもんやないしねぇ‥‥‥‥





《See you next trip》

お読みいただき、有難うございます。


今後も気長にお読み頂きますよう、

伏して宜しく御願い申し上げます。

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