《trip3-①》
今回、少し難しいテーマで書き始めました。
おっさんが、どんな答えを出すのか、少し楽しみです。
拙い文章の羅列ですが、
御読みいただけたら幸いです。
夜明けの町並に、俺の吐息が溶けて行く。
優しく包み込む朝霧が、体表から熱を奪っていきおる。
それに悪寒を感じる訳やなく、寧ろ心地良さを感じとった。
ここは『夕霧亭』の裏庭。
ここで俺は時折、薪割り等をして小銭を稼いどる。
そして今は、ここに泊まる様になってからの日課にしとる、朝練の真最中である。
以前の……生前の俺を知る者からしたら、目を疑う様な光景かも知れんけど、この世界に来てから少しだけ勤勉になった。
せやかて、この世界の命の価値は低い。
今ん所なんとかやれとるが、今までの経験上、何時死んでもうてもおかしない。
せやから生存率を上げるために、生きる努力をせなならん。
折角、生き返ったんやしね。
幸い、『健康な体』を貰っとるお陰で、頗る調子が良い。
二日酔いも何のそのや。
感謝、感謝。
取り敢えず、走り込みと打ち込みをした後、剣道形の小太刀の確認を行う。
最後に、物干し竿にぶら下げたボールを突く練習をしていると、この宿の娘であるミアが、井戸水を汲みに来た。
「おじさん。もう少しで朝御飯できるよ。」
「おぉ、すまんなぁ。ほな、汗流すわ。」
そう言いながら井戸端に近づき、ついでに水汲みを手伝ってやる。
ここに泊まる様になって、それなりの日数が経ったせいか、ミアの呼び方が『お客さん』から『おじさん』に、いつの間にか変わっとった。
少しは馴染んだんかも知れん。
そう思いながら釣瓶を巻き上げる。
ここに有るんは、日本風の釣瓶が二つ有るタイプではなく、海外で見掛けた事が有る様な、手回しでせっせと巻き上げるタイプのやつや。
この作業は子供にはしんどいやろ。
その内、なんか考えよか。
漠然とそんな事を考えながら、木桶に張った水に手拭いを突っ込んだ。
「薬草の採取?」
ここはガルストンさんの商会。
何時もの応接室である。
あの後、しっかりと朝食を頂戴して、今日も肉体労働に勤しもうと、この店に日雇いを探しに訪れた途端、店のモンに袖引っ張られて、ここに案内されて座らされた。
んで、ガルストンさんが開口一番言うたんは、こんな仕事の依頼やった。
「本来なら荒事士個人に依頼する様な案件では無いのですが、依頼者の方に少々事情がありまして……貴方様の御希望にも近いと思われますので如何かと……如何為されました?」
話もまともに聞かんと………いや一応聞いとんやけど、長ぁい事黙ってフリーズしとる俺をガルストンさんが訝しんどるが、こちとらの心中はそれどころやない。
俺は、感動で打ち震えとってんから。
超ド定番、初期初級クエスト来たぁぁッ!
まさかこのタイミングで、薬草採取のクエストを振られるとは思てなかったわ。
今まで、普通の日雇い労働しかしとらんかったから、こんな仕事は無いもんやと思てたけど、まさか回ってくるとはねぇ……
いやぁ、少し感動ぉ。
「大丈夫ですか?」
「ぉお?あぁ、スマンスマン。少し世界の神秘について考えとってん。」
「?……説明を続けてもよろしいか?」
「宜しく頼んます。」
ガルストンは、まだ腑に落ちない顔付きだが、取り敢えず仕事の説明を続けた。
「先程も申しましたが、荒事士個人に依頼する案件では無いのですが、依頼者の方が求めておられる物が少々特殊でして………今の所、量も求めておられる訳でも御座いませんので、通常の採取業の者に依頼する訳にも行かず、貴方様の御要望にも近いと思われるのですが、如何でしょう?」
なるほど。
まぁ、酒代が稼げるんやったら、特に文句はあらへんけど。
せやけど、こんな楽な仕事でそこそこ稼げるんやったら、他のモンもしたがるんちゃう?
「メルリヤは腕は立つのですが、どうも性格的な事なのか、こういった探索等は苦手な様でして。他の者ですと、何と言いますか………どうも依頼者の方との相性が、今一つ宜しくない様で。」
ん?
ガルストンさんにしては、えらい歯切れの悪い言い方しよんな。
なんぞ有るんかいな?
「それは、依頼人の方に会って頂ければ解るかと。この依頼を御請けなさるかは、それからで結構です。」
そう言って、ガルストンさんが用意していた物を取り出した。
「取り敢えず、通行証と身分証を御渡しいたします。これは今後も必要となると思われますので、そのまま御持ちになって、紛失為されない様にしてくださいませ。それと、これは依頼人方の住所です。出来ますれば、この依頼を請けて頂ける事を望みます。」
そう言って、軽く頭を下げてきおった。
なんや、えらい大層やな。
取り敢えず、依頼人と会うてから、依頼を請けるかどうか決めてもかめへんってことやんな。
そやけど、出来るだけ請けて欲しいと。
まぁ、こちとら仕事を選り好みできる立場やないしね。
前向きに検討すっか。
犯罪に関わらんかったらええか。
「取り敢えず、頑張ってみるわ。」
そう言って席を立った。
ーーー《sideーB》ーーーーーーーーーー
「酷い言い様。」
私は、あの男が部屋から出たのを確認してから、別の扉から部屋に入って行った。
別室で会話を聞いていたのだ。
それを知っていながら、あの言い様。
私の性格がどうだと言うのだ。
少し不愉快。
「あながち間違いでもないでしょう。」
薄く笑みを浮かべながらそう言って、ガルストンはクッションの効いたソファーに沈み混むと、深く息を吐いた。
「あの御仁と会話するのは、少々気疲れいたしますね。」
「貴方の心臓は、ミスリル製だと思っていた。」
「貴女よりは、普通の人族のつもりですが。」
軽い嫌みの応酬をしながら、私はガルストンの向かえに座った。
「で?」
「で、とは?」
「なぜ、この仕事を振った?」
何処までも喰えないこの男を、睨みながら問い掛けた。
「大した理由もないのですが………まぁ強いて言うならば、いい加減この依頼も片付けなければなりませんし、それに……」
相も変わらすの悪どい笑みを浮かべ、温いはずの御茶を一口啜った。
「あの御仁なら、何やら事態を動かしてくれそうな気がしますしね。」
そんな様子のガルストンを見て、私は心の中で溜め息を吐いた。
確かにあの男なら、何らかの方法で事態を動かしていくだろう。
正攻法かどうかは別にして。
また、正道かどうかも別にして。
何時もあの男は、私達の考えの斜め上を行く。
そして結果も、私達の予想を裏切る道を好んで選ぶ。
ガルストンは軽く考えている様だが、果たして上手く事が運ぶのだろうか?
………不安しかない。
《See you next trip》
いかがでしたでしょうか?
新しい物語が動き始めました。
頑張って書き連ねて行きます。
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当方とうふのメンタルですので、
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