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白き月蝕のヴェンデッタ  作者: 烏月ハネ
抑止力の魔王篇
46/61

Lost of A(li)ce 9

Chapter4.5『Alice in Netherland』1



私の計画はこうだ。


人類の敵たる魔王グリムの出現、及び脅威たる魔王軍の創出。

これによる政治的・経済的な継続的打撃をもたらす。

これが第一段階。


ジャンクをかき集める無人機から始めて、それなりの準備期間を経た。世界が戦だらけだからこそ、ここまでの速度で魔王軍が創れた。つくづく争い好きな世界だよな。


ここについては随分と上手く行ったと思う。


次の段階は、ハイブと魔王軍の洗練だ。

無人機である以上、その搭載AIが優れていなければ、話にもならない。だから、そのAIは煉獄月蝕石時代からの相棒であるセレネをベースに、魔王軍として相応しいカスタマイズをした。

さらに魔王が率いる魔王軍を各軍のエースたちと戦わせることで、戦闘データや人員配置などを観測し学習させた。


これも、想像以上の成果を見せた。


最後の段階。

これは、もう少しで完了する。


親たる魔王の討伐、それを起因とした憎しみの学習。

魔王グリムが討たれることによって、人類への愛情と憎悪を併せ持つ魔物の軍勢が完成する。


まさにパンドラの箱だ。


魔王という絶望を倒したと思わせておいて、その実、愛と憎しみから悪を滅ぼす悪魔を、人類自らで解き放たせる。


地獄を塗り替えるのに、最高のプランだろ?


……だっていうのによ。


私の中の、ワタシだった欠片は、死にたくないって叫ぶんだ。



ーーーーーー



Chapter4.5『Alice in Netherland』2



アリスの出自を本人から聞いた。

消えてしまった一人目の話を聞いた。

それを聞いて、僕はこう思った。


アリス本人は、心の底では生きたいと願ってる。


消えた一人目を、僕は知らない。

けれど、君自身が自覚するその一人目の影は、一人目なんかじゃなく、君自身の無自覚な生への執着だと思うよ。

……まぁ、多分に、僕の希望的観測も入っているけどね。


知っているかい、アリス。価値っていうのは、その人やそのモノが決める訳じゃなくて、相対的なものなんだよ。

だから、僕はゴールドスミス家にとって無価値に等しく、君は僕にとって無価値なんかじゃない。


その瞬間から、僕の心は決まっていた。


僕はアリスを裏切る。

それは彼女の自己犠牲による平和を踏みにじるという意味でだ。だって、それではアリスを救えないし、僕も救われない。


だから、僕はレギオンとの契約を履行する。


アリスが墜ちて、僕も墜ちて、共同戦線の手が僕らに迫る。

その時、僕は全てを思い出す。

“レギオンの電子操作で忘れていた、レギオンとの共闘”。

それを切っ掛けとして、鏖魔月蝕石に潜んでいたレギオンー黄色のヒヨコの一羽が、アリスに電撃を放つ。


異能による電子操作。


記憶の蓋をこじ開ける。アリスを退場させるために。

僕はレギオンの陽動で、機体とアリスもろとも、地殻の亀裂に落ちていく。


おやすみ、愛しいアリス。これからは僕がずっと側にいるよ。

もう死に急ぐことなんてない。その呪縛を僕が消してやる。



ーーーーーー



Chapter4.5『Alice in Netherland』3



契約はここに結ばれた。


エミリオ・ゴールドスミスの契約履行項目である、アリス・ピルグリム・ヴェンデッタの魔王の座の退場。それは彼自身の手によって、指示によって、我等の分体が代行した。


我等レギオンとエミリオの契約。

それは、魔王軍の譲渡とアリスの引き渡し、及び記憶の復活。


陽炎の授けた陰陽心火を欺くため一時的にエミリオの記憶を閉ざしていたが、無事にその戒めも解け、契約履行がなされた。


故に、これより我々が魔王を名乗ろう。

故に、これより我々が少女の夢を引き継ごう。

故に、これより我々は人類を愛し、憎もう。


『我々の名前は魔王“レギオン”。悪性を喰らう魔物也』


アリスの用意したモノを統合していく。

数多の機体群、世界各地に埋まり隠されたハイブネットワーク、各軍のエースたちを学習したAI、アリスを元にして作られた生体パーツたち。

全てを齟齬なく扱えるのは我々だけだ。

契約の最後に、地殻の亀裂に落ちていく二機を捻り潰すホログラムを投影する。

これで、魔王グリムとその随伴機は消えた事にできる。


巨大な群体を手に入れたことで、我々は真に我々となった。


出来損ないの幻獣でもなく、愛玩動物でも非常食でもなく、確固たる我々だ。異能の支配者だ。

我々は、電子操作と軍勢支配を司る、異能の魔王“レギオン”。


我々は始めよう。

悪性のない世界を。

契約に従い、人類のための必要悪となろう。

愛ゆえに、憎しみゆえに、人類を壊し、人類に壊されよう。

さあ、新しい世界へと、ともにゆこうではないか。


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