075 精霊の世界
「オリビア、そろそろ出発しようか」
「はーい、ちょっと待ってね、よし準備出来た!」
私は髪の毛を綺麗にブラッシングして身なりを整え終わると黒髪でブルーグレー瞳をした青年に向かって返事をした。
「お兄ちゃん、お待たせ!」
私は王都北方にある森の中にある住居から出ると黒い石板を取り出して住居の入り口を閉鎖した。
♢
王都の地下牢から脱出した後。私たちは王都北方の森に身を隠した。森に着いたときはこんなところで野宿するの大変だなーって思って覚悟してたけど。
アリスは森の中にぽっかりと開けた草地に到着すると何もない中空に丸い窓を開けた。その丸い窓の中を覗くと結構明るくて広い空間が広がっている。なんて不思議な! そして私にこの窓から中に入れという。
アリスが言うには、この窓は「精霊の世界」への入口なんだって。「精霊の世界」はこの世の中から切り離されていてどんな外敵も侵入できない安全な世界なんだって! すごい!
「精霊の世界」に入ると何もない平坦な世界だった。底が平坦な巨大なシャボン玉の中いるみたい。
さて、ここでどうするのかと思っていたらアリスが「オリビアが寝る場所を作るね」ってベッドを作ってくれた! なんの材料もないのに虚空から出現したんだけどアリスの能力だっていうからそんなものだと思うようにした。
だって、ベッド以外にも水はおろか、食べ物だってアリスは作り出してくれた。こんな能力があるんだったら一生この妖精の世界に閉じこもって生活できるんじゃないかな。
翌朝起きると、黒髪でブルーグレーの青年が隣のベッドで寝ていた。このことは昨晩の内にアリスから聞いていた。光の塊の精霊の姿だと退屈だから人間の体を作るけど、オリビアそっくりの男性にしておけば兄と妹って設定で便利だと思うからって言われていたんだ。
その後三カ月の間は精霊の世界の自宅を住みやすいように整えたり、この北の森のぽっかりと開いた草地を綺麗に草刈して外柵を作り、小さい家を建てた。全部アリスの能力を使って。
精霊の世界のなかの住居が充実して生活が安定してきたころ。北の森の家の庭にあるベリーを収穫してそれを摘まみながら四阿でお茶を飲んでいる時にアリスに聞いてみた。
ちなみに、庭の柵も四阿もアリスが能力で作り出した。柵の内側はベリー園や果樹園、そして広い芝生と庭を散歩するための舗装遊歩道があちこちに伸びていて王宮や上級貴族の庭園顔負けの洗練された美しい空間になっている。アリスの好みらしい。自然のままの森よりも管理された庭園が好きなんだって
「アリスって、どうして私を助けてくれたの? なにか目的とかあるのかな? やりたいこととか?」
「オリビアを助けたのはオリビアを気に入ったからだよ。僕もオリビアとこうやって暮らすのは居心地がいいしお互い様さ。オリビア、一緒にいてくれてありがとう」
なんとなくわかってたけど、アリスが私にかなり好意を持ってくれている。心がほっこりと暖かくなって幸せな気持ちになってくる。私って凄く幸せだ。
「目的とか、やりたいことはこの世界で穏やかに、楽しく過ごすこと。たまには人の街に繰り出して買い物とか、お食事とかしたり、旅行してもいいかな?」
「ふふ、アリス兄さん、ありがとう。私を妹にしてくれて。私も凄く幸せなんだ」
♢
というわけで、私たち二人はこの北の森から一番近い街に行くことにしたわけ。
私たち二人はふわりと空中に浮きあがると森の木々のはるか上空に上昇して街の方向に移動を開始した。私が空を飛べるのは空を飛ぶことができる魔法を恩恵として与えてもらったから。もちろんアリスからだよ。
「オリビア様、オリビア様、道中の安全は我らにお任せを。我ら、どの様な敵がいたとしてもオリビア様とアリス様をまもってみせますぞ!」
横をみると私たちに並走するように飛んでいる二羽の白い鳥が話しかけてきた。
「あら。あなたたち来てくれているんだね、ありがとう。よろしくね!」
この白い鳥はアリスがそこらに居たカラスを眷属にして色を白く変えて恩恵を与えた連中でソコソコ強いらしい。普段は庭の周囲で家の警備をしてもらってるけど私たちが街に行くにあたってついてきてくれるみたい。
アリスが言うには「コイツ等はいくらでも替えが利くし便利に使いつぶせるのが良いところだ」なんて冷たいこと言うもんだから私が優しく扱ってあげることにしている。この子達は私が優しいことが分かっているから懐いているだんと思う。
街の傍まで来たところで地面に降りると街へと続く街道を二人して歩き出した。白い鳥たちはつかず離れず私たちの周りを飛び回っている。アリスが「お前たち、姿を隠しなさい」と指示すればスウッと姿を消していった。認識阻害の魔法だって。鳥なのにすごーい。
街道を進むと街の外壁が見えてきた。街への入り口には門番の兵士が。門を通る時はジロリと見られたけど特に呼び止められたりはしなかった。私たちみたいな歩いてくる旅行者や歩行者からは通行税を取らないけど荷馬車や荷車からは積み荷に応じて通行税を取ることになっている。
私たちは町に入ると商業ギルドを目指した。目的はお金を稼ぐため。少しはお金がないと街で買い物もお食事もできないから。
アリスと色々と話し合った結果、簡単にお金を稼ぐならアリスが能力で作り出す品物を販売するのが早かろう、となった。今日持ってきたのは陶器製のコップとガラス製のコップ、ガラス製の容器に入った砂糖と塩。
いちおう、サンプルなのでそれぞれ4つづつ、大きめのリュックに収納してアリスが背負ってきている。
商業ギルドでサンプルを見せて、これを買い取ってくれる商人を紹介してほしいといえば二店舗紹介してくれた。
商人の店舗の場所を教えてもらったのでそのうちの近い方エスコフィエ商会に行ってみる。この商会は王都に本店があって各領都に手広く支店を持っている大商会だ。私も令嬢時代は何回かお世話になったことはある。お母様がまだ健在だった時だけど。
「こんにちは~商業ギルドからの紹介で来ました。商品の買い取りのご相談なんですけど、ご担当の方はいらっしゃいますか?」
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