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073 無実の罪で地下牢に



「オリビア・クロッカス、君のしでかした妹ガーベラ嬢に対する非道の数々、申し開きはできないぞ! 憲兵! この毒婦を直ちに拘束せよ!」



 私はあまりのことに頭が真っ白になった。


 オリビアは控えめで優しい令嬢だ。容姿も十分に優れていて亡くなった母親が生きていて健在であればこんなひどい扱いにはなっていなかっただろう。


 12歳の時に婚約して以来、週に一回は第一王子の治療を行ってきた。最初の内は第一王子はオリビアのことを素直に慕ってくれていてオリビアは幸せだった。でも14歳の時に母親が突然倒れて亡くなって半年もしないうちに継母が義妹とともに伯爵家へやってきてからは変わってしまった。


 私は屋敷の隅の方の使用人部屋に押し込まれた。


 宝飾品やドレスなど価値あるものは妹に奪われていった。


 粗末な食事を自室で取らされた。


 でも第一王子は優しかったから治療のためとはいえ王子と会うことはオリビアの心の支えだった。なのに次第に王子はオリビアを疎ましそうに冷たく当たるようになった。






 王子から一方的に婚約破棄されて呆然と立ち尽くす私は、いつの間にかパーティー会場に入ってきた憲兵たちに連行されて王城の地下牢に入れられてしまった。

 地下牢で一夜明かして朝食の薄い野菜スープと硬いパンを食べ終わって。

 お昼になって朝食と同じような昼食が配膳されて食べ終わったけど誰も尋問にも、面会にもやってこない。

 おかしい。そういえば、パーティー会場で第一王子に婚約破棄を告げられて妹のガーベラを虐めていたと告発されてすぐに憲兵に拘束された。すべては流れるように、計画どおりだったようにここ、王宮の地下牢に連れてこられた。



 そっか。全ては予定通り。第一王子殿下、国王陛下はじめ王族の方の都合のいいように私は断罪されて、伯爵家長女で第一王子の婚約者なのに罪人にされた。

 第一王子や王族の人たちにとっては私は用済み。伯爵家にとっても邪魔者ってことか。なんとなくそんな感じはしていた。


 でも改めてこんな現実に直面すると、寂しさと恐れと悲しみに押しつぶされてしまう。

 わたしが何をしたっていうのよ……言われたとおりに治療し続けたのに。ひどいよ。命を削って王族の治療をしてきたのに。




 私は自分自身にごく弱い治癒を掛けてみる。これによって自分の命がどれほどすり減っているのかを自覚することが出来る。やはりあと5年ほどしか残っていないみたい。

 私は両親にいわれるまま治療を行っていた。治癒をすることによって自分の命が減っていく。治癒が命を対価にする行為だと気が着いたのはつい最近。治癒がそういうものだとは両親や第一王子は知っていたのに教えてくれなかった。





 地下牢の粗末なベッドに腰かけて今までに伯爵家や王宮で自分に向けられてきた悪意や虐めの数々をジッと思い返していると視界の上の方に柔らかな光を感じた。


 私は顔を地下牢の天井に向ける。そこには拳ほどの大きさの、柔らかな光を発する光の塊が空中に浮いていた。



「これはー-?」



 光の塊はゆっくりと降下してきて私の目の高さまでくるとピタリと静止した。



「オリビア大丈夫? あの第一王子、婚約破棄しただけじゃなくて無実の罪をきせて地下牢に閉じ込めるなんて悪い奴。でも安心して? 僕はオリビアの味方だよ、助けてあげる」



 光の塊が喋った! 私は悲しみとショックのあまり気でも狂ったんだろうか?



「オリビアの気はくるってないよ。僕がこうしてオリビアに会いに来たのは間違いなく現実だよ」


「そうなの……あなたは、何なの?」


「僕は、あ…… せいれい。そう、光の精霊なのさ。こう見えてもかなり強い精霊だよ。この世界のだいたいの存在には負けないと思うよ!」


「そうなんだ。魔物とか、強い兵士、例えば騎士団の騎士よりも強いの?」


「ははは。当然だよ。ちなみに魔物ってどんなのが居る?竜とか?」


「竜は、どうだろう。見たことないからわかんないけど、いるらしいよ」


「ふーん。たぶん竜には勝てるよ。この世界にいるかわかんないけど悪魔にもね。よっぽど強い奴だったらわかんないけど。

それより僕は昨日、たまたま学園のパーティーを見ていたんだけどさ。みんなが居る前で婚約破棄なんてあの連中、あんまりだと思ったんだ。

オリビアは何にも悪くないのに。だから僕がオリビアを助けてあげようとおもったんだよ。オリビアはいい子だし、気に入ったからね」



 私は意外過ぎる展開に驚きつつ、目の前に浮かぶ光の塊が私の味方をしてくれて、しかも強い(自称)ということが分かってなんとなく力が湧いてきた。


「ありがとう精霊さん。でも私は地下牢に閉じ込められて、これからどんな罪に問われるか分からない罪人なのだけど。助けてくれるのは嬉しいけど、どうやって助けてくれるの?」



「そうだね。助けるといっても、オリビアの身の上を考えると、簡単じゃあないのか。

あの伯爵家で平穏に、幸せに暮らすって言っても家族があれじゃね。あ、ごめんね、昨日オリビアが寝ている間に記憶を見ちゃったんだ。だから伯爵家の様子とか、王宮での様子もいちおう把握しました。

オリビア、頑張ったね」



 私は光の精霊さんに優しい言葉をかけられて泣き出してしまった。

 ……その後、精霊さんには慰めてもらったり元気づけてもらったりしてなんとかお話を続けられるようになった。思いっきり泣いたらちょっとすっきりしたみたい。精霊さんが側にいて味方してくれると思ったら凄く安心できた。ありがとう精霊さん。


読んでいただきありがとうございます。

『その光の精霊は精霊じゃない』『そんな強い精霊が居るわけない』と思われましたら【評価】と【ブクマ】をどうぞよろしくお願いします

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