6話 もう一つの顔
ツイストパーマがかかった黄色っぽい枇杷茶髪。
紺色のジャケットからのぞく、オレンジのパーカーを着た男が、電車に乗っていた。
「ねぇ。ヤバくない?」
「カッコいいー。」
「え、あの人じゃない?」
「ほら、この前、雑誌に載ってた...。」
先に乗っていた、女性たちがざわつく。
そんな、電車内の会話がなにも聞こえていないかのように、次の停車駅で彼は、降りようとする。
そして、振り向きざまに、彼女にウインクで答えた。
シー。
口元には、人差し指を添えて、だ。
彼が、電車を降りた直後、女性たちが発狂したのは言うまでもなかった。
「すいませーん。遅れました。」
そう言って、分厚い扉を開ける。
「良いって。良いって。久しぶりだな!
最近、忙しそうにしてんだろ。」
調子はどうだ?と首からカメラを下げ無精髭を生やした、がたいの良い中年の男性が近づいてきた。
「ぼちぼちです。」
そう答えると、
「最近、雑誌で良く見かけるぞ?テレビにも出てるんだって?」
と、話を終わらせてくれない。
「でも、さすが麻莉ちゃん。
良い子を発掘したなぁ。
あの時、急遽モデルの差し替えが必要になったんだ。
君は、カメラ写りも良いし、明るいし。
そいやぁ、雰囲気も若い頃の麻莉ちゃんにどこか雰囲気似てるしなー。」
ガハハ。こりゃ、将来が楽しみだ。と、背中をバシバシ叩かれた。痛い。
「はは。」
ちゃんと、笑えているのか心配だ。
「今日の相手の麻莉ちゃんの娘も、もう来てるぞ。何か、言いたいことがあるとか。向こうで先にカメラテストしてるわ。」と指を指した。
その方向には、透明感のある白いオフショルに、膝が見えるくらいの、ミディスカート姿の女性がカメラの前に立っていた。