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2話 伊世早美優

「じゃあ、次の人!お願いします!」



 井勢谷桜の自己紹介が終わり、クラスの空気も落ち着いたところで、望月先生は桜の後の人に声をかけた。





「はい。」

 教室に凛と透き通った声が響いた。



 俺は、その真後ろの席な訳だ。

 だから、彼女の姿はとても良く目に入ってくる。



 黒くて長い髪。彼女から漂ってくる雰囲気は普通の高校生とは思えなかった。

 とても落ち着いている。

 丁寧な所作。


 自己紹介慣れしているなと思った。




「皆さん、こんにちは。私は、伊世早美優(いせはやみゆ)と言います。」




「伊世早だって!」

「珍しい名字だな。」

「おいおい。それだけかよ。珍しい名字ってことは、ヤバいんだって。」

「俺、テレビで見たことあるぞ。何かの記者会見で横に女が2人居て...。」


「この前の会見、テレビ中継してたけど、あの後ろに控えてた秘書?使用人っぽい人、見た?」

「見た見た!マジ格好よ。」

けほ。

我慢しきれず、咳払いをしてしまった。



「でも、伊世早って、あの伊世早だよな~。」


「もしかするかもよ。」

「ヤバいよ。将来、安泰かもしれない。」


 教室が折角、静かになってきていたのに、彼女の発言、と言うか、自己紹介でまた振り出しに戻った気がする。


 だが、彼女は、騒がしい空気のなかでも、話すことは止めなかった。

 まるで、自分の主張に、皆が群がるのに慣れているかのように。




「名字の通り、この学園の創設者であり、伊世早グループを牛耳る伊世早浩介(いせはやこうすけ)の長女であります。

 私も、先ほど紹介された、井勢谷さんのように、高校に進学するか、父のもとで研鑽を積むか悩みました。

 ですが、ある方の助言から、私もこの学園に進学する事を決めました。

 ですので、私も、普通の女子高校生として、勉学に遊びに、励んでいきたいと思っております。

 どうか、よろしくお願いいたします。」


 さすが、社長令嬢。

 遊びは別に励まなくとも、普通にしていれば、勝手に遊んでいるものなのだが、考え方が違うようだ。




 伊世早美優はそう言うと、最後にと、こう、付け加えた。


「それと、私に媚を売っても将来は保証できませんのでご安心を。」

 彼女は、最後のウインクも忘れなかった。




「はぅ。」

「俺、今日が命日になりそう。」

「お嬢様~。」

 この最後の一撃で軽く3人は死んだ。




 おいおい。


 女優の娘に、大手グループの社長令嬢が同じクラスって、ある意味すごい。

 うん。すごいな。



 それで、次が俺か。それもまた、すごいな。

皆の興味なさそうな視線が痛い。

できるだけ、手短に終わらそう。





 そう思い、彼女が座ったのを見て、俺は、椅子から立ち上がった。

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