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お題シリーズ

面倒勇者

作者: 仲仁へび



 目の前で勇者が寝ころんでいる。

 けれど、遠くからは魔物の唸り声が大合唱状態。


 しかし俺の前の前にいるこの勇者は、護衛の騎士が建てた野営テントの中から、動くつもりがないようだ。


「ああ、めんどくせぇ」


 勇者が面倒くさがったらだめだろうが!


 心の底からこんな事はしたくないけど、俺はやむなく寝ころんでいる勇者の頭をはたいた。


「いいから働け! この面倒勇者!」

「えーやだよ。他の奴がやれよ。別に俺じゃなくてもあの程度の雑魚倒せるだろ」


 聞こえてくるのは、ここら辺に生息している低級の魔物だ。


 普通の兵士でも、数分あればさくっと倒せだろう。


 しかし。


「勇者が魔物退治でしぶってる、なんて噂が経ったら大変だろうが!」

「何が大変なんだよ。俺に対する労働が少なくなって万々歳だろー」


 こいつはメンツってもんを気にしないのか。

 人の目なんてなんのその、みたいな様子で寝返りをうつ。

 魔物の合唱は子守歌じゃないぞ! くつろぐな!


「臆病者だと思われても良いのか?」

「別にいんじゃねー?」

「小さな子供に、ゆびさされてクソ雑魚とか言われてもかよ」

「言わせとけ言わせとけ、人がどう思うかは重要じゃない。大事なのは自分がどう思うかだってな」


 そのセリフ、こんなシチュエーションで聞きたくなかった。

 字面が立派でも、光景が最低だ!


 こうなったら、あの手だ。


「勇者が働かないと、国から資金が援助されなくなる。すると人の金で酒がのめなくなるぞ!」

「よし、魔物だな。何をやっているさっさと人類の敵を倒しに行くぞ」


 すくっと立ち上がった勇者は、頼もしい微笑みをひっさげて、テントを出ていった。


 やる気を出すツボが、酒ってなんだよ。


 普通、人の笑顔とか平和とかだろ。


 勇者、失格じゃねーか。


 面倒勇者が、遠くから俺を呼んでいる。


「おーい、早くこい。酒がのめなくなっちまうだろ」

「ったく、調子いいんだから」



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