01-71.先行研究
暑さ厳しくなってきましたね。
彼岸までって言いますが、どうかなぁ。
お身体ご自愛くださいね。
───
思ったより進みませんでした。
オッサン多いなぁ。
武器屋を出たオレは、
色々迷った挙げ句、
冒険者ギルドに向かった。
"考えてみる"って言っても、
取っ掛かりがないと・・・。
もしかしたら、
手を動かしていたら、
よい考えが浮かぶかも・・・なんて
考えていたのかもしれない。
ギルドホールには、
ほとんど人が居なかった。
余裕のありそうな冒険者が何人か、
カウンターで話してる。
オレは、それを横目に一人用の依頼を見る。
やっぱり薬草採取の依頼は人気がないらしく、
いくつか残っている。
以前、薬草採りを一緒に行ったオッサンに
この辺りの薬草の採り方を教えてもらった。
小銭を稼げるし、考え事をするのには
丁度良いかもしれない。
ちょっと行ってみよう。
────
迷いの森のすぐ横、獣道を歩く。
背の高い木々が多く、
日の光を和らげてくれる。
時間は、もうすぐ太陽が一番高いところ。
お腹は意外と空いていない。
さすがにもうグリズリーとは
遭わないだろうが、
念のため剣を確認する。
ま。いつも通り腰にさげているから、
わざわざ確認する必要なんてないんだけど、
剣の柄に手を掛けると、少し落ち着く。
どんだけバトルジャンキーなんだって思う。
腰につけたまま、薬草採りをする。
ちょっと邪魔だ。
薬草を集めながら、
故郷でやっていた剣の修行を
ぼんやり思い出す。
「ただ腕を振り下ろすな。
さっきより速く振れるように
考えながら振れ。」
「剣を振る筋肉を一本一本意識しろ。
ただ振るだけなら赤子でもできる。」
「広い視野を持て。
そして集中しろ。」
思い出すが、怒られてばっかりだった。
誉められたことなんて、あったかな・・・?
記憶を掘り返しても、全然思い出せない。
たくさん剣は振ったし、
今も毎朝振ってるけど、
意味なかったのかな。
いまだに"剣術の心得"だし。
「要は敵をぶっ殺せば良い。」
確かにそうだよな。
誰が言ったか忘れてしまったけど、
その通りだ。
カッコ悪くても、生き残ったヤツの勝ちだ。
そう言う意味では分かってる。
死ぬのはイヤだ。
できるだけ長く、この世界を生きて、
そして・・・
キャッハウフフを貪りたい。
怠惰な生活を送りたい。
そのための剣術、
そのための一攫千金だ。
誤解してはならない。
お金を稼ぐ方法は
別に冒険者じゃなくても良いはず。
それでも冒険者を始めたのは、
元手がなかったのもあるが、
他に選択肢が見当たらなかっただけだ。
戦闘に有利なスキルとか、武器とか、
そう言うのを普通の人より
少し持っていただけだ。
「おぅ。ボウズ。
また会ったな。」
まるでクマのような筋肉。
歴戦の戦士を思わせる風格。
間違いない。駆け出し薬師のオッサンだ。
名前聞いていなかった!
「ひさしぶり。」
声を掛けると、オッサンは
周りを注意深く見渡し、
息をひそめて、周囲の音を聞く。
そして、
「今日はグリズリーを連れてないんだな。」
「オレは
グリズリーの待ち合わせ場所じゃない!」
「知っているよ。
待ち合わせ場所が移動したら、
落ち合えないだろ?」
「う、うん?そうだな。」
「何の話をしてたんだっけな?
まぁ。いい。
ボウズは今日は薬草採集か?」
「そ。ちょっと静かなところで
考えごとをしたくてさ。」
「そいつは悪かった。
新顔かと思ってな。
薬草の採り方を叩き込もうとしたら、
"グリズリーパフューム"だったとは。」
「何それ?」
「ボウズは香水って知っているか?
色んないい匂いをさせるだけじゃなく、
何でも組み合わせによっては
魔物をおびき寄せに使う薬として
使うこともできるんだそうだ。」
「んー。そこは何となく分かるけど、
"グリズリーパフュームって何さ?」
「それは知らないのな?
冒険者ギルドで噂になっているど。
2日連続で"迷いの森"の外で
グリズリーに会ったヤツがいるって。」
「ナニソレ!?」
「誰が呼び始めたか分からんが、
"グリズリーパフューム"
って名前で売り出し中の凄腕冒険者
らしいぞ。」
「凄腕冒険者!?」
「ああ。
2回もグリズリーに遭って生き延び、
その上討ち取ったからな。
噂では、筋肉盛り盛りの錬金術師だそうだ。
素手でグリズリーを引き裂くそうだ。
オレはグリズリーと聞いて、
ボウズのことかと思ったんだが、
違うのか?」
「違うよ!
見れば分かるでしょ!?
駆け出し金欠初級冒険者で、
グリズリーも自分が死なないように
頑張ってなんとかギリギリで
倒したヤツだし。
凄腕冒険者なんかじゃ・・・。」
「だども、グリズリーを
一人で殺ったでねぇか。」
「そうだけど、毎回
あんなに上手く行かないよ。」
「まぁ。ボウズには命を救ってもらったから、
ボウズが"グリズリーパフューム"だろうが、
駆け出し冒険者だろうが、
俺には関係ないな。
そう言えば、あの時の薬は効いたか?」
「あぁ。ありがとう。
あの時もらった薬草を使ったら、
あっという間に傷が治ったよ。
水薬と同じくらい効果があるって、
異常じゃない?」
「丁寧に採って
丁寧に乾燥させれば
あのくらいの効果が出るんだ。」
「スゴいな。教えてくれ。」
「流石にそれは命の恩人でもダメだな。」
「だよなー。」
「何と言うか、
俺もよう分からんのだ。
感覚で作ってるからな。
工程とかもうまく説明できん。
何となくやって、良くできた!
ってヤツをボウズに売ったんだ。」
「確かに助かったよ。
効果を知らなかったから、
普通の値段で買っちまったけど、
良かったのか?」
「効果が高かったって言われただけでも
俺には十分な収穫だ。
何となく"良くできた!"
としか分からなかったからな。」
「それって、実験台になったってこと?」
「んー。
そこは経験だな。
元々回復する薬草だったんだから、
毒にはならんだろうよ。
自分では試していたが、
他のヤツに同じ効果が出るか
分からなかった。」
「答え合わせ的なことだったんだな。」
「まぁ。そうだな。」
「オッサン、
自分で採らないで、
誰かが採ってきたのを加工する薬師に
なれば良いのに。」
「はぁ?
そんなの考えたこと無かったな。
自分が使うために自分で採って
自分で加工する。
じゃダメか?」
「ダメじゃないけど、
そりゃ職業じゃなくて趣味だな。
金が続かなけりゃ辞めなきゃならんだろ?
たまに出るグリズリーも何とかしなきゃだ。」
「だども、そんなに上手く行くかな?」
「わからん!」
「そこは、
"絶対上手く行く!
このグリズリーパフュームが保証するぜ!"
じゃろが。」
「グリズリーパフュームじゃない!」
などと迷いの森の横の獣道で
薬草を採取しながら、
オッサンと語り合った。
そのあと、あの時飲みに行けなかったので、
改めて飲みに行くことにした。
場所はギルドホール。
金がない冒険者ならみんなそこだ。
オッサンは、薬草の話を色々してくれた。
ホント好きなんだな。薬草。
いずれは自分で畑を持って
薬草を育てたいらしい。
あれから少し気持ちを入れ換えて、
普通のパーティに混ざって、
迷いの森にも挑戦しているそうだ。
そこで出会った薬草の話もしてくれる。
むしろ、組んだパーティのヤツらのことより、
薬草の話の方が多い。
でも、話を聞いてて面白いんだよなぁ。
キラキラ少年のように目を輝かせて。
滅多にお目にかかれない珍しい薬草は、
実は毒草だったって話だの、
あまりにもその毒草が気になってしまい、
油で揚げて食ったら案外イケるが、
あとで腹を壊しただの。
楽しく生きてんだなーって思えた。
オッサンの場合、
別に金儲けしなくても、
続けていければ楽しい人生が
送れるのかもしれない。
加工薬師になればいいなんて、
オレの押し付けだったなぁ
と反省した。
用語説明:
・「要は敵をぶっ殺せば良い。」
???「その通りだ。」
・駆け出しの薬師のオッサン
戦士っぽい外見だが、駆け出し薬師のオッサン
以前、薬草採取のクエストで意気投合。
・パフューム
「オッサンです。」
「オッサンです。」
「オッサンです。」
三人合わせて・・・
※作者は大ファンです。
・グリズリーパフューム
グリズリーを素手で引き裂く錬金術師
架空の人物と考えられる。
・元々回復する薬草だったんだから、
毒にはならんだろうよ。
過剰摂取など、
元が良いからって言ってそれが薬になるとは限らない。
用量用法を守って正しく使ってください。




