01-70.気を取り直して
遅くなりましたー。
なるべく1日置きでがんばります。
読んでくださる皆様が少しでも楽しめますように。
ヴィーナの言うイイコトは、
聖地でのお祈りだった!
分かってたけど。
そんな美味い話なんてあるわけない!
って思っていただけど。
ウソ。ウソです。
舞い上がってました。悔しいです!
こんな簡単なハニートラップに
引っ掛かって悔しいです!!
ウソつきー!ヴィーナのウソつきー!
心身ともに健康な青少年が望む"イイコト"は、
コレジャナイ!
これじゃないんだー!!
「アータル?
どうしたの?
祈らないの?」
「祈ります。祈ります。」
屈託のない笑顔を見せられて、
舌の上まで出掛かっている
"ウソつきー!!"
の言葉を飲み込む。
言いたいことを飲み込み過ぎて
お腹壊さないかなー。
「アータル?」
「んー?」
「酷い顔しているよー?」
「なんでだろー。」
とぼけて見せる。
さて、せっかくだから祈ろう。
でも祈るって誰に祈ればいいんだろう。
そもそも"聖地"って何?
「ヴィーナ、聞いてもいいかな?」
「良いけど、なんでそんなに小声なの?」
ヴィーナもオレに合わせて小さい声で返す。
「ここは何の聖地なのー?」
「えー?なんだってー?」
「ここはーなんのーせいちなのー?」
「聞こえないよ?」
仕方なくヴィーナに近付き、
普通の声で聞く。
「ここは何の聖地なの?」
「ナーディー様の聖地よ。
全ての困難を乗り越える気持ちを
応援してくれるの。」
「応援?
助けてはくれないの?」
「都合の良いときに神様に祈っても、
助けてくれるわけないじゃない?」
「確かにそうだね。」
「自分で何とかして、
心が折れたときに
気持ちを軽くしてくれるの。」
「カウンセリングみたいな?」
「かうんせりんぐ??」
「あ。気にしないで。
試しに祈ってみよう。」
「お。いいね。
別にナーディー様じゃなくて
誰に祈ってもいいんだよ。」
「へー。」
「何?」
「ヴィーナはそう言うの、
嫌いなんだと勝手に思ってた。」
「私もナーディー様に祈るわけじゃないよ。
ただ、気持ちを整理するだけ。
オマケで迷いの森の人たちをヨロシク
ってナーディー様に言うだけ。
とりあえず、座りなよ。」
「ちょっと引っ張らないでよ。あ。」
ヴィーナが急に引っ張るので、
バランスを崩してしまう。
「キャッ!」
倒れてヴィーナを押し倒してしまう。
「危なかった。大丈夫?」
何だか柔らかい。
オレはゆっくり目を開けると同時に
鼻から息を吸い込む。
草の匂いを期待してたんだけど、
甘い花のような香り。
頬っぺたに柔らかいモノが・・・
そこで気付いて、
慌てて跳び起きる。
「そんなに急に動いて大丈夫?
アータル?」
「大丈夫です。」
「何で正座?」
「これはビックリして・・・。」
「ふーん?」
「あれ?ヴィーナ
何でそんな疑いの目で見ているの?」
「ふぅーん?」
「マユゲ、片マユだけあげるのヤメテ」
「ほほーん?」
「笑顔が怖いよ?」
「・・・柔らかかった?」
オレは後ろも見ずに逃げ出した!
だが、ヴィーナに回り込まれてしまった。
「ちょっとアータルどこ行くつもり?」
「ちょっとトイレに・・・。」
「ふーん。付き合ってくれないんだ。
良いこと。」
「え。」
「お祈りって言ったけど、
お祈りすると、
新しいスキルが増えたり、
スキルがパワーアップしたりする
らしいよ。」
ヴィーナは近付いてきて、小声で言ってくる。
右手を口もとに当てて、辺りを見渡しながら。
思わず近付いて、良く聞きたくなっちゃう。
「つっかまえたー!」
ヴィーナに捕まってしまった!
「で、どうなの?
・・・柔らかい?」
両手で胸に抱かれて、押し付けられる。
オッサンみたいなカラミ方なのに、
全然抜け出せない。
で、抜け出そうともがくと、
柔らかくて、いい匂いのが当たってしまう。
求めてたもののはずなのに、
実際にこんなことになると、
頭が真っ白になって、
なにもできなくなっちゃう。
オレってば、こんなんだったっけ?
いい匂い。もうこのまま・・・
って危ない。死ぬ。
このままだと死んでしまう。
一番幸せな死に方かもしれないが、
死んだら、地獄行きを宣告されている。
ヴィーナの腕をポンポン叩く。
「いやー。アータルも男の子なんだねー。」
ヴィーナがのんきなことを言っているが、
こっちは死にかけてる!
首を抜こうと、もがく。もがく。もが・・・
水の中でなくても窒息って出きるんだ・・・。
────
ぺちぺち
「うーん。痛い。」
手で振り払う。
ぺちぺち
「うーん。やめてー。」
なんだろう。
柔らかいポヨポヨの上に頭を乗せてる。
オレはダルい頭を左右に振って、
ゆっくり目を開く。
目の前に、ヴィーナの心配そうな赤い目が
こちらをうかがっている。
もしかして、これって膝枕ってヤツ?!
オレは跳び起きてバックステップ正座で
距離を取る。
「起きた。アータル。
気絶しちゃうなんて・・・。」
オレもビックリだよ。
死にそうなのに、気付いてもらえてないなんて。
ヴィーナの顔は逆光で良く見えないが、
少し赤い顔をしているように見えた。
「まさかアタシの身体に興奮して
気絶しちゃうなんて。」
「言い方!」
キョトンとするヴィーナ。
本当に死にかけてるの、気付いてなかったのか?
「あんだけ首を絞めたら、
普通の人なら死んでいます。」
「そうなの?」
「自覚ないのがすごく怖い。」
「じゃ、ちゃっちゃとお祈りして
帰ろうか。
アータルにご飯をおごらなきゃ。」
「え?」
「良いことさせてあげるって言ったけど、
お祈りは高レベルの冒険者なら、
みんな知っていることだからね。
それじゃあ足りないかなーって思ったの。」
「闇ギルドの中には、
事前に食事などをごちそうして、
油断させて、後でブスリとするそうです。」
「なんで丁寧語なの?」
「なんで否定しないの?」
ヴィーナは楽しそうに笑い、
ひざまずいて、祈り始める。
オレも何だかんだあったけど、
とりあえず祈る。
"ナーディー様。
ラッキースケベをありがとう。
でも加減をお願いします。
気を付けないと死んでしまいます。
オレに加護をくれている神様・・・
特に何もないけど、アリガトウ"
ギルドカードが光ったような気がした。
────
ヴィーナとのご飯は
また別の日にしてもらった。
別にドキドキ意識しちゃって・・・
と言うわけではない。
ないんだぞ!!
盾が欲しいんだ。
そうだ。命に関わるからな。
変に意識しちゃったわけじゃないぞ。
ホントだぞ。
と、言うことで
冒険者ギルド公認の武器屋に向かう。
カランッカランッ
ドアを押して入ると、
いつものジイサンがいた。
「籠手か片手で扱える盾を
さがしてるのですが・・・」
「それならその棚だ。」
ジイサンは、剣を磨きながら言う。
迷いの森での戦いで、盾が必要なのを
身に染みて感じだ。
いや、実力が上がれば、
剣で守ったり出きるんだろうけど。
そんなん無理。
でも、剣で全部できるように慣れないと、
いつまで経っても強くなれない気もする。
どうしてらいいんだろうなぁ。
「何か迷っているのか?」
ジイサンが話し掛けてきた。
ちょっと考えたけど、
せっかく話しかけてくれたので、聞いてみる。
「盾を持たずにダンジョンに行ったら、
思った以上に苦戦したので、
新調しようか、それとも
もっと修行して剣だけにしようか
と、自分の戦闘スタイルに迷っていまして。」
ジイサンはオレを上から下まで見ると、
「色々試してみな。
これって決めないで。
これしかないって言って、
その道を極めて達人と言われるまでに
なったヤツもいるが、
世の中の人々は、色々試して
自分に合うスタイルをずっと探している。」
「そうは言っても・・・。」
オレは武器屋を見回す。
槍や剣、棍、杖・・・この武器屋のなかでも
かなりの数の武器の種類がある。
自分に合う武器やスタイルを見つけるなんて
気の遠くなる作業が必要になりそうだ。
「確かに運とかも
あるかもしれないがな。
自分が何が得意か、何が好きかを
考えるって言うのもいいし、
自分が嫌いなこと、不得意なことを
避けるってもいいだろう。
だが、一番必要なのは、手に取って
使ってみることだ。」
ジイサンは磨いていた剣を明かりにかざす。
「新しいことに挑戦しなきゃ、
ソイツは、ずっとそのままだ。
いや。同じことに慣れて
腐っちまうこともある。」
今度はオレを見て言う。
「安全地帯から出ろ。冒険者だろ?」
オレはひとまず、ジイサンにお礼を言って
何も買わずに店を出た。
用語説目:
・ハニートラップ
色仕掛けに寄る諜報活動を指す。
アータルはこの類いの罠に弱い。おつむのせい。
・健全な青少年
文章に出て来るときは、不純感を匂わすことが多い。
自分で健全と言っているアータルは、自覚があると思われる。
・闇ギルド
ヴィーナが特に何の反応もなかったことから、
存在するんじゃないかと思われる。
きっと、暗殺とかするんだろうな(アータル談)
・オレに加護をくれている神様・・・
???「まだ足りないらしいな」




