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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
新拠点
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01-65.いわく付き

いつもありがとうございます。

今日は独白が多いです。

苦手な方はご注意ください。

しばらく進むと、森が急に開けて

花畑が広がる。


迷いの森(ダンジョン)のボスが出現する?!

身構えるが、出てこない。


 ポフっ


イオアンに肩を叩かれて、追い抜かれる。

どう言うこと??


ずんずんと皆は進む。

慌てて後を追うと、

急にポッカリと花畑が途切れる。

茶色い地面が見えていて、

少しフカフカしている。


みんなが向かった方を見ると、

岩が積み重なっているのが見えた。


「塚?」


塚は何だか相性が悪いんで、

避けて通りたいんだけど。。。


塚の横を通り過ぎて、

グンナー達についていこうとすると、


「アータル。ここが目的地だ。」


と、言われる。


え?!ここ?!


"要救助者"って言ってたけど、

オレたち以外に誰かいるようには見えない。

どういうこと?


"私にしか見えないアータルに

 話しかけているのかと思った。"


急にヴィーナの言葉を思い出す。

あれ?

何かおかしい??


さっき、"目的地はここだ"って言ったのは、

誰だっけ?

冷たい汗が、背中をつたうのがわかる。


「アータル!

 おい!!アータル!!」


肩をグラグラされて気付く。


「何ボサッとしている。

 掘るぞ。」


と、スコップを渡される。


??


グンナーが地面を指差して言う。


「今回の要救助者(ターゲット)は、この下だ。」


────


オレたちは何も言わず、

塚の周りの地面を掘り起こしている。


「とりあえず何か出てくるまで

 この辺を掘れ。

 何か出てくるまで掘り続けろ。

 何か出たら教えろ。」


と言う、グンナーの荒い指示の元、

オレは地面を掘っている。


このシャベル重いなぁ。

なんて思いながら。

あれ??スコップだっけ??

何が違うか分からないな。


グンナーやイオアン、ミハイルも

スコップだかシャベルだかを手に、

地面を掘り起こしている。


ミハイルは例の祈りの言葉?を口ずさみながら、

グンナーとイオアンは、武器を地面において

ひたすら地面を掘っている。


何するんだろう。井戸でも掘るのかな?

それにしてもみんなバラバラな場所だけど。


あれ?ヴィーナは?

と、辺りを探すが見つからない。


「おらっ!アータル!!

 手が止まっているぞ!!」


とりあえず掘り返して行くのを続ける。

何を見付けなきゃいけないか、

教えてくれれば良いのに。


しばらく黙って手を動かす。

なんの手応えもない。


掘って何かを探すんだからと、

広く浅く掘る。


どのくらいの深さに埋まっているとか、

堅いのか柔らかいのか、

何にも分からない。


最初は恐る恐る、土の表面を少しずつ削って

いって自分の横に積み上げていっていたけど、

今はザックザック掘っている。


何にも言われないから、大丈夫なんだろうな。

ただ言われたまま、何も考えずに掘る。


辺りにはオッサンたちの荒い息づかいと

ザックザックと言う音が、

ミハイルの途切れ途切れの祈りの詩に混ざって

聞こえてくる。


何も出てこない。

つーか、何を探してるんだ?

"要救助者"って言ってたけど、

土の中に埋まってるなら、

もう手遅れだろ?


そう言えば、行方不明者の捜索って

依頼だったけど、

特別急ぐ感じは、なかった。

途中で一泊したしな。


救助に来て、こっちが遭難したら

意味がないのでそう言うことなのかと

思っていたんだけど・・・。

元々急がなくて良かったのかもしれない。


もしかして、"要救助者"って、

生きていない・・・?

何から救助するんだろう??

我慢できなくなってもう一度聞いてしまう。


「グンナー。

 いい加減に何を探しているか

 説明してもらえない?」


ザックザック音が止まり、

ミハイルも祈りの言葉を止める。


グンナーはスコップを土に刺すと、

その取っ手に顎を載せる。


「ガキがうるせぇんだよ。

 俺が戦えって言ったら戦え。

 掘れって言ったら、掘れ。

 考えんな。」


グンナー、イオアン、ミハイル、

それぞれの顔を見ると、

表情は抜け落ちてる。


なんだこれ?

なんだこれ。


何か変な魔法か何かに掛かっている?

この生気の抜けた顔。


見覚えがあるかもしれない。

生前働いていたときの、

仕事場の人たちの表情、自分の表情だ。


何も考えず、ただ手を動かして

上から言われたことを、

「はいはい」って言って

とりあえず終わらせようとする。

そんな人間の顔。


なんでこれが必要なんですか?

とか、これやると何がよくなるの?

とかそう言うのを考えるのを

諦めて仕事を"やっつける"感じ。


で、提出すると、

考えが足らんとか、ちゃんとやれとか

頭を使えとか、方向性が違うとか

色々言われ、罵声も浴びる。


言われたことをやったのに、

怒られる理不尽。


言ってないことを汲み取れ、察しろって

言われて考えるのを辞めた人の顔。

ロボットだ。

歯車とか金属ではできていない

ロボットたちの顔だ。


失敗したくない。

面倒なことからいち早く逃れたい。

だから無難にやり過ごす、

そんなオレの顔・・・。


結局は金なんだよ。

金のために仕事してるんだから、

我慢しなきゃで、抑えていた。


せっかく転生したんだ。

負けずに生きたい。


でも面倒だから、

やらなきゃだから、やらなきゃって

長いものに巻かれてしまう。

そんな自分がうらめしい。


黙ってまた掘りはじめる。

何が出てくるんだろう。


────


グンナーたちは、

あちこちバラバラに

好きなように掘り起こしている。


石が積まれた場所の近くは、

ボコボコになっている。


地面の下なんかに生きてる人間なんて

いやしないから、

"要救助者"は人間以外だろうな。

たとえ生きてる人間が出てきても、

地面の下で生きているんだから、

ただの人間じゃないだろうし。


そう言えばダンジョンで死んだヤツは

どうなるんだろうな。

ダンジョンに吸収されてダンジョンの一部に

なるのだろうか。


骨とかはたまにダンジョンに残っているらしいから、

骨までは食わないんたろう。


そんなこと考えながら掘っていると、


 ガキンッ


スコップの先端が堅いものに触れる。

慎重に周りの土をどけていくと、

そこには金属製の盾が埋まっていた。


グンナーが装備している盾の1.5倍はある。

地面の上に立てると、

グンナーたちは気付いたようだ。

何かを言いに寄ってくる。


「それは、"要救助者"の遺留品の一部だ。

 おい!お前らもこっち来い。

 この辺りを中心に探すぞ。」


イオアンとミハイルがやって来て、

オレが掘っていた周りを掘りはじめる。

オレは()け者にされた感じだ。


これ、要救助の救助じゃなく、

墓荒らしと言うか、落ち武者狩りと言うか、

死者のぼーとくじゃないだろうか。


グンナーが、鞘に納まった大剣を掘り出した。

ミハイルは、相変わらず祈りの言葉を

唱えている。


仕事の内容について、正しい正しくないなんて

今まで考えたことはなかった。

金が貰えればそれはそれでいいと。


グンナーたちは、これを持って帰って

どうするのだろう。

そもそも、この武器や防具は誰のもので、

なんでこんなところに埋められてるんだろう。


そしてどこが"要救助者"の救助なんだろう。

今は姿の見えないヴィーナは、どこにいて

このことをどこまで知ってるんだろう。


疑問ばかり頭に浮かぶ。

それを振り払うように機械的に身体を動かす。


なんだこれ。

身体が重くて全然動かない。

呪われてるんじゃないか。


オレは何も理解しないまま作業を続ける。

あの日のオレのように。


何も考えず、

目的も分からず、

ここがどこかも分からず、

金を稼ぐためにひたすら

手を動かす。


面倒くさい。

背景とか目的とか考えるの面倒くさい。

誰が何が欲しいとか、

どうして欲しいとか、

どうでもいい。

とりあえず、とりあえず今は考えない。

考えない。


どうやれば効率的に

武器や防具が土の中から取り出せるか、

それだけ考えて手足を動かせば良い。

自分の思いや考えを捨てて、

ひたすら、ひたすら、土を掘った。

用語説明:

・シャベル / スコップ

違いはその人が属している文化による。


・ロボット

ここで言うロボットは、高度な知能を持たないプログラムされた通りに動く機械。


・落ち武者狩り

権威を失った者を追い立て、蓄財や装備を奪う行為。


────

次回はたぶん8/2です。

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