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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
新拠点
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01-64.狂暴につき

こんにちは。

いつもありがとうございます!

翌日。

火の番と見張りを交代でやり、

そこそこ身体の疲れも取れた。


剣を取り出して眺める。

ちゃんと昨日手入れをして寝た。

今のところ、歯こぼれも少ない。


"刃がついた鈍器"と武器屋のじいさんが

言っていたが、その通り。

あんまり研ぐ必要がない。


「おはよー。アータル。」


タンクトップみたいなのだけしか着てない。


 ウーッンッ!


腕をぐいーと伸ばすヴィーナ。

掛けていた上着のせいで、

おヘソは見えなかった。


「うーん?」


オレの顔をみるヴィーナ。

いつものしっかりしている雰囲気と違って

少し間が抜けているような。


「ちょっと。アータル。

 いつまで見てるんの?」


「あ。ごめん。」


慌てて目をそらす。


剣を鞘に戻して、

素振りでもして来よう。


────


昨日の歯が立たなかったのは、

スキルのせいだけではなく、

戦闘経験と応用力がなかったんだと思う。


昨日、見張りのあと、

考えながら横になっていたら・・・

いつの間にか朝だった!


考えて、結構色々分かった・・・

つもりになったんだけど、

何を考えていたのかスッカリ忘れた。


頭はスッキリしてる。


今日はグンナーの動きを良く見て

良いところを盗もう。

悪いところは真似しないようにしよう。


よし。立ち直った。

立ち直った!!


「オレはオレだ!」


────


意気込んだは良いものの、

オレは気がついた。


オレ、(おとり)じゃない?コレ。

まず、オレが初撃(ファーストアタック)をくわえる。

魔物がオレにやり返そうとする。

イオアンが攻撃。

魔物がイオアンに向かおうとしたところに、

グンナーとヴィーナが攻撃。

で、最後にオレが攻撃で最初に戻る。


あ。エサってそう言う意味か。


────


中層に入ると、

木に擬態するような魔物だけでなく、

魔獣と言われる、獣系の魔物が出てくる。


最近のオレのお気に入られは、

グリズリーだ。

2日間で2匹に遭遇している。


ってことは、もちろん。


 GYUWHIWAOOO!!


遭うよねー。


しかも今まで見たヤツより大きい。

そして、初撃(ファーストアタック)を加えるオレが一番の標的。

叫び声と一緒に振り回される両手を

ギリギリで避けたり、

避けられずにぶっ飛んで、

オレ専用になってしまっているミハイルに

回復魔法(ヒール)を掛けられる。


「ミハイル!

 そのくらいで魔力を温存しろ。

 もうほっとけ。」


イオアンの声が聞こえる。


まぁ、オレ自体はダメージを与えられて

ないからな・・・。


もう、避けるのに専念しよう。

長剣も攻撃するんじゃなく、

攻撃をかわしたり、

間合いをはかるためだけに使おう。


超人じゃねぇんだ。

冒険者始めて一年かそこらのヤツが、

グリズリーと戦うなんて、

正気の沙汰じゃねぇ。


攻撃を任せて、防御に専念する。

スキを見て攻撃するけど、

ギリギリは攻めないで我慢する。


「アータルそのまま押さえとけや!」


グンナーが叫ぶ。


「言われなくともっ!やってるよ。」


だが、致命傷を避けるのに必死で

声は尻つぼみになってしまう。


さっきよりはマシ。

10回に1回くらいは、

かわせるようになったし、

何より死んでないし。


ガッチガチに堅くなってはないと思う。

見えてる。見えてる!


避けられないけど!!


心なしか、ミハイルの支援/回復魔法の

頻度も下がっているし、

ホント調子いい。

ホントにオレは調子いい。

いいぞ。いいんだ。


頑張って自分を誤魔化してみようとするけど、

やっぱり自分の心には勝てなかった。

ぶっ飛んで、木に叩きつけられる。


何だろう。

背骨から鼻に抜けるキーンとした、この感じ。

懐かしいような・・・。


身体を起こすと、

ヴィーナとグンナーが

グリズリーと戦っているのが見える。


オレの剣は・・・。

吹っ飛ばされて、そこらに転がっている。


明らかにオレの実力は足りてない。

でも、だからって不貞腐れて

テキトーに動けば死ぬ。

それだけでなく、

他のパーティーメンバーを危険にさらす。


イオアンの言うように、

ミハイルがオレに付きっきりじゃ、全滅だ。

今はまだ余裕があるから、

対応していてくれたんだと思う。


何とかしなくちゃ。

焦りばかりがつのる。


「アータルッ!

 おらっ!

 ボーッとしてないで、

 攻めに加われ!」


ええい!

とりあえず今はやるっきゃない!

力を貸して!グリズリーの神様!!


────


グンナーが、盾でグリズリーの右腕をそらす。

ミハイルが、秒も置かずにグンナーに

回復魔法(ヒール)を掛ける。


腕が伸びきったところにヴィーナが乗り、ジャンプ!

すれ違いざまに首を狙って切りつける。


「こりゃー肉厚だねー。

 ナイフがしっかり刺さらないよ。」


飛び降りたヴィーナが言う。


「コイツは中層でも、結構な大物だ。

 頼りにしてるぜ。ヴィーナ。」


グンナーは、既に

グリズリーの右側に移動している。


グリズリーは身体をよじって、

左腕でヴィーナを襲おうとするが、

後ろからグンナーが、

グリズリーの足に向かって剣を振る。


浅くはあるが、赤色が飛ぶ!


「何でさ!」


思わず呟く。

オレの剣は通らないのに、

なんでグンナーの剣は通るの?


 ドスンッ


グリズリーが前のめりに倒れる。


その顔に・・・


 トスッ


小気味よく矢が刺さる。


 GHWOOO!!


グリズリーが立ち上がり、両手を振り上げ威嚇する。

左目に矢が刺さっており、血がダラダラ流れてる。


 トスットスッ


その顔に追い打ちで2本の矢が刺さる。

今度は口の中だ。


途端にグリズリーが反転して

逃げようとし始める。


だが、誰も追わない。


「え。何で?」


思わず口を出る。

グリズリーはそのまま、森の奥へ行ってしまった。


「お前は狂戦士(バーサーカー)か何かなのか?」


イオアンが近づいてきて言う。


そしてオレを通り過ぎ、

グリズリーが踏み荒らした場所を足で凪ぐ。

足払いの練習みたいだな。


そうこうしているうちに、

何かを拾い上げた。


矢だ。


日にかざしたり、バランスを測ったりして、

矢筒に戻す。


イオアンの矢は全部は刺さって無かったんだ。

それを見て、少し救われた気がした。


イオアンでも、百発百中って訳じゃないんだと。


良く見るとヴィーナやグンナーも、

荒くなった呼吸を落ち着かせようとしている。


楽々やっているように見えて、

実際は、そうでもなかったってことかな。


良かった。


良かないんだけど、ホッとはした。


もし、この前のヴィーナみたいに

あんな大物を軽々とやっつけられるとしたら、

オレは自信や、やる気を無くしてただろう。


あのままグリズリーを追って行っても、

まぁ、最終的には倒せたかもしれないが、

面倒なことになっただろう。


優先順位ってことだ。

この依頼はあくまでも、迷い人の確保。


グリズリーを狩っても依頼は達成できない。


狂戦士(バーサーカー)か。」


独り言をつぶやく。

目の前の利益(?)だけを追って、

自分の置かれている立場を省みない。


そんな姿は確かに、

全身傷だらけでも敵にただ突っ込んでいく

狂戦士(バーサーカー)だろう。


生前の自分を思い返す。


"目の前の仕事に全力を尽くす。"

と言えば聞こえは良いかもしれないが、

優先順位も決めないで、

ただただ仕事をこなしてきたオレは、

狂戦士(バーサーカー)だったんじゃないか。

そう思えた。


もう、どうしようもできないことだが。


────


装備をまとめて、奥に進む。

ミハイルは、またあの低い祈りの言葉を

呟きはじめる。


グリズリーが逃げたあと、

静かになっていた森は、

急に生き返ったように色鮮やかに見える。


今は妙にその声が心地よい。

何か難しいことを考えなくても済むと言うか、

心が一点に集中していると言うか。

足を引っ張ったことで凹むことはなかった。


あぁ。ちきしょう。

オレはなんて使えないヤツだ。

なんて、ぶつける先がわからない怒りが、

ブスブスくすぶっていたけど、

今はどうでもいいかもしれない。


森の中には涼しい風が吹いている。


ヴィーナとグンナーの後ろ姿を見て思う。


あれ?蛮族の好奇心ってそう言うこと?

用語説明:

・おヘソは見えなかった。

ヘソチラには夢が詰まってる。


・グリズリーの神様

グリズリーの神様「頼む相手が違うわー!!」





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