01-61.監視付き
いつもありがとうございます!!
「ハーイ!アータル久しぶりー!」
オレは、冒険者ギルド付きの冒険者になった。
詳しくは、ヘルミオネさん付きの冒険者。
ヘルミオネさんが抱えている厄介事を
片付けるエージェントみたいな。
カッコいい言い方をすれば、職業奴隷だ。
奴隷かー。
「アータル、聞いてる?」
ヒラヒラ目の前で手を振られる。
「聞いてるよ。ヴィーナ。」
「じゃあ返事くらいしてよね。
アタシにしか見えないアータルに
話し掛けてるのかと思った。」
「なんだそれ?」
今回の依頼は、行方不明者の捜索。
"迷いの森"で行方不明になった
冒険者パーティーを探すと言うものだ。
普通なら、冒険者が行方不明になっても
捜索なんてされないので、何かあるんだろう。
面倒くさい何かが。
今回は5人でパーティーを組んで捜索する
と聞いていたんだが・・・。
「ヴィーナも捜索隊?」
「あれ?アータルも?
スゴいね。
この街に来て日も浅いってのに。」
「んー。
のっぴきならない事情があってね。」
「のっぴきならない???
難しい言葉知ってるね。」
ヴィーナは、オレのオデコを指で
ツンツンしてくる。
「やめてよ。」
って言っても、ツンツンしてくる。
しかもこっちが割りと真剣に
避けようとしてるのに、避けられない。
ムキになって避ける。
ヴィーナは楽しくなっちゃったらしい。
爛々と瞳を輝かせて、ツンツンしてくる。
ネコか!
「遊んでるところ悪いんだが。」
後ろから話し掛けられたので振り向くと、
くたびれた装備のオッサンがいた。
そして後頭部にツンツンが突き刺さる。
「今日の捜索隊に加わる2人と言うのは
あんたらか?」
確認しようとヴィーナの方に振り返ると、
指が目を狙って来たので、はたき落とす。
「惜しい!」
「何がだよ。」
ヴィーナのことは諦めて、
依頼の紙を取り出して、
オッサンに見せる。
「アータルか。宜しく。」
「あ。宜しくお願いします。」
慌ててヴィーナも腰のポーチから
紙を取り出し渡す。
「ヴィーナ。宜しく。」
「よろしくお願いしまーす!」
「全員で5人と聞きましたが?」
オッサンは、後ろを親指で示すと、
2人のこれもくたびれたオッサンがいた。
「じゃあ行こうか。」
って言うヴィーナを少し落ち着かせ、
連携を取るために役割と名前を聞く。
冒険者としてのランクは敢えて聞かない。
「俺はグンナー。壁役だ。
こっちがミハイル。回復魔法が使える。
そしてイオアン。弓使いだ。」
「私はヴィーナ。
斥候技能もあるけど、攻撃なら任せて。」
「オレはアータル。
オレは・・・」
そこで思った。
あれ?オレ要らないんじゃない?
グンナー:壁
ミハイル:回復役
イオアン:物理遠距離
ヴィーナ:アタッカー(+斥候)
オレ:?
「アータルは、そうね・・・。
エサ・・・かな?」
「エサか。ソイツはいい。」
グンナーは笑って答える。
「どう言うこと?」
ヴィーナに聞くが、
「ま。良いじゃない。
行きましょ。
隊列はグンナーさんの後ろね。」
ヴィーナは、そう言うと、
ギルドホールの出口に向かう。
グンナーたちもそれに続いた。
オレは受付カウンターの方を見回したが、
ヘルミオネさんはいなかった。
果たしてオレはどうなるんだろう。
イヤな予感しかしない。
────
"迷いの森"
鬱蒼と繁った木々が、
入ってきた者たちを惑わせ、
一度迷ったら出られない
と言われる森。
数々の植物系の魔物、
特に樹木の魔物が多く存在する。
だが、森の中には貴重な薬の原料になるような
多種多様な資源が眠っているらしく、
たくさんの冒険者たちが押し寄せ、
そのうちの何割かは戻ってきていない。
森の深さは良くわかっていないが、
"草狩り場"に有ったような、
板を敷く作戦は、上手く行かず、
石杭なども効果を成してないようだ。
「それでも行くんですね。」
「そうだな。
冒険者なんざそんなもんだ。」
オレはミハイルと話してる。
グンナーは前、イオアンは後ろ、
オレとミハイルが左右を警戒している。
ヴィーナは少し前を歩いていて、
罠を見付けたり、行く方向を
指し示したりしている。
今のところは、敵と遭ってない。
ヴィーナがかわすのが上手いのか、
そもそも敵が少いのかは良くわからない。
「そうだっ!
大型の魔物が出てきたらどうする?
道具箱とか使えるメンバーは
いるの?」
と、ヴィーナが聞くと、
「そんなに大きな荷物は入らんけど、
バックパック程度なら大丈夫。」
「ですってよー。」
グリズリーはもういい。
ヴィーナに翌日もグリズリーと
遭遇したことを話したら、
グリズリーホイホイと勘違いされた。
グリズリーは、迷いの森の中層にいて、
滅多に森の外に出てこないらしい。
え。何かのフラグ??
これから山ほどグリズリーが
森から出てくるとか、
もっと強い何かから追われて出てきた
みたいなフラグ??
それか、スキルのせい??
一番考えられるのが"騎士の誓約"だけど、
動物には関係ないと思う。
動物は約束なんか守ったりするかな?
あとは・・・"巨乳ハンター"?
メスのグリズリーかもしれない。
そもそも魔物にオスメスあるのか?
"巨乳ハンター"自体、謎スキルだし。
あ。"蛮族の好奇心"ってのも考えられるなぁ。
魔獣狩りとか、蛮族っぽいし。
「ほら、周りを見て、
真っ直ぐ歩け!」
イオアンに怒られてしまった。
考えるのを止めて、
本気で周りを警戒する。
そろそろ上層の中頃だ。
この辺りの冒険者は、出口に近いところから、
上、中、下と割り振るらしい。
「警戒して、樹の魔物よ。」
ヴィーナが言うが、全然姿が見えない。
「アータル、前に出ろ!」
イオアンが叫び、
オレは相手も分からず、
ヴィーナの横まで出る。
ヴィーナがオレの左肩をぐっと引き寄せ、
顔を近付けてくる。
「私の目線の先、
道からちょっとはみ出てる、
ちょっと黒くて太い木分かる?」
今日も何か良い匂いがする。
斥候って、
こんな良い匂いさせてていいのかな?
気付かれそう。
ギュッ
「アイタタタ!」
「アータル、集中。」
左ほおをツネられ、
犬みたいに命令された。
「相手がトレントだから良いけど、
他の魔物だったら危ないんだからね。」
そしてもう一度、右手の黒いナイフで、
一本の木を指し示す。
あ。確かに。
良く見れば他の木と違うかも。
「じゃ、初撃をよろしく。」
「え。ふぁーすとあたっく?」
何だその必殺技みたいのは!
カッコいいぞ。
「良し。わかった。
アータル。行け。一撃加えてこい!」
ヴィーナは言い直す。
オレは長剣を抜き、
その怪しい木の幹に向かって
長剣を振り下ろし、バックステップする。
GHUGWAAH!!
斬ったところに顔が浮かんだ!
「アータル!ハウス!!」
ヴィーナが後ろから叫ぶ。
おい。オレは犬かい!
トレントに背を向けないように
ジリジリと下がる。
と、何かが右肩を掠める。
トスッ トストスッ!
矢がトレントの顔のような部分に
次々と刺さる。
怖!!
矢に当たりたくないので
左に少し寄りなかがら、
ジリジリと下がろうとする。
GHUGWASHA!!
カン高い声だか音だかをあげて、
トレントが枝を振って襲ってくる。
左腕の盾はお金が無くて買えてないので、
長剣でなぎはらう。
堅!
幹は、剣先で傷を付けただけだったから、
そんなに手応え無かったけど、
枝、堅い。
真剣で打ち合っても、
こんなに衝撃来ないぞ。
と、左に寄ったオレの横を
ヴィーナが走り抜けて、
矢の刺さったトレントの顔に
黒いナイフを突き立てる!
バシュッ
黒い煙と共にトレントの顔が消える。
それまで空気だったグンナーが来て、
トレントだった木を道の方から押す。
ガラガラガラガラ
音を立てて木が倒れる。
「さ。行くぞ。」
グンナーの声に
肩で息しているオレ以外は
歩き始めた。
用語説明:
・草狩り場
アータルが前に居た街にあったダンジョン。
中級者向け。
・板、石杭
冒険者が迷わないように設置した案内の様なもの。
・道具箱
重量を無視してモノを運べるファンタジー魔法。
・"騎士の誓約"、"巨乳ハンター"、"蛮族の好奇心"
いずれも、アータルのギルドカードに記載されているスキル。
スキル鑑定士が鑑定し、アクティブ化したギルドカードでのみ確認ができる。




