01-59.真実は・・・
昨日はあれこれ考えている内に
眠っちゃったらしい。
今日は少し休もうかな。
剣の素振りもそこそこに
宿を出て、冒険者ギルドに行く。
────
ギルドホールは、人がほとんどいなかった。
朝の臨時パーティーラッシュが
済んだところだろう。
ウェスタンなドアが
後ろでギーギー音を立てて閉まる。
と、2人の男に両側から、腕を取られてしまう。
クソッ。体格差もあって、全然動かない。
「大人しくしろ。
俺らは命までは取らん。」
「暴れたりすると、
・・・腕の2、3本は覚悟しな。」
腕は2本はしかないだろうが。
あ。折る骨の数か。
がっしりと両側から捕まえられたオレは、
そのまま奥の部屋に運ばれていく。
周りを見ても、みんな目をそらす。
あ。これ、終わり?
────
奥の部屋に通されたオレは
ぞんざいにイスに座らされる。
木でできた背もたれもない丸イスだ。
正面にはソファが置いてある。
尋問でも始まるのかな・・・。
思い当たることと言えば、
元いた街の冒険者ギルドの
上級職員、ツェルトに
"アータルを秘密裏に処理しろ"って
手紙を持たされたけど、
手紙を闇に葬ったことかな。
ホントに闇に葬ったお陰で、
ゾンビ的なアンデッド的なヤツが、
寄ってくる身体になってしまったけど。
オレは特にロープとかで縛られてない。
ここに連れてきた2人は、
オレをイスに座らせると、
すぐに出ていってしまった。
これ、逃げられるかもな・・・。
でも、逃げてどうなるんだろう。
一生、闇の世界で生きる??
ハードだなぁ。
暗殺とか、響きはカッコいいけど、
絶対向いてないわ。
用意周到に計画を立てて実行するとか、
性格的に無理!!
あと、闇ギルドとかあっても
辿り着ける自信がない。
きっと盛大に道に迷うだろう。
ガチャ
などと妄想している間に、ドアが開く。
入ってきたのは、メガネのおねーさんこと、
ヘルミオネさんと、口髭を生やしたオッサン。
嫌な予感がしないでもない。
「待たせたかな?」
髭のオッサンがダンディーな声で言う。
「今来たところです。」
って、デードの待ち合わせで
先に来てた方のセリフみたいで、
ちょっと気持ち悪い。
「そりゃあ良かった。
なんでここに連れてこられたか
分かるかな?」
「いえ。全く。
心当たりもありません。」
「そうかそうか。
じゃあさっそく牢屋にぶちこむか。」
「え?!
ちょ、ちょっと待ってください。」
オレが言う前に
ヘルミオネさんが止めてくれる。
「まずは事情を!
捕まえるにしても何にしても、
ちゃんと事情を聞くべきです。
色々分かることもあるでしょうから。」
「そうか?
あからさまに何かやりそうな顔だ。
だが、わかった。
キミの顔を立てるためにも
情報を引き出そう。」
その裏事情、オレに聞かせて良いの?
それより、"何かやりそうな顔"ってなんだよ!
「初級冒険者のアータル、
キミは数日前、長距離馬車で
この街にやってきた。相違ないね?」
相違?何か難しい言葉を使うなぁ。
「はい。間違いないです。」
「この街にある荷物を運び込むためだ。」
「はい。そうです。」
オッサンは、ほらやっぱりと言う顔をして
ヘルミオネさんを見るが、
彼女は先を促すように、目で合図する。
「その荷物とは、大量の"火石"、
つまり"爆弾"だ。」
「え!?」
今度の「え?!」はオレの方。
確かに俺の連れてきたジイサンは、
爆弾みたいに危ないヤツだったが、
門を破壊するほどの威力はないと思う。
せいぜい、人に迷惑を掛け、
要らんスキルを押し付けてくる程度の
危険人物だ。
爆発したとき、横にいたし。
じゃない。
そうじゃない。
「それは、肯定と取って良いな。」
「いやいやいや。
知りませんって。」
「じゃあ、なぜ、爆発のあった馬車に
乗っていて無事なんだ。」
「それは・・・。」
「それにその馬車の出発点は、
我が侯爵に仇をなす勢力に関連している。
つまりは、キミの背後にいる冒険者ギルド
それに影響力を持っているアールウッド卿。
状況的には揃っているんだよ。」
オッサンは早口でまくしたてる。
全然状況が把握できない。
もしかして、最初っからこれ仕組まれていた?
手紙を途中で捨ててしまっても、
最終的には爆発で殺す、
上手く逃げたとしても、
テロの容疑者として捕まる・・・。
なんだそれ。
馬車に乗った時にもう
運命が決まっていたってこと?
どうにかしなくっちゃ。
このままだと、死亡エンド以上の
バッドエンドを迎えることになる。
「爆発の時は、
別の部屋で衛兵と話していました。
クエストの完了のサインも
その人にもらっています。」
「それは私も確認していますし、
クエストの完了報告でも確認しています。」
ヘルミオネさんが補足してくれる。
頑張れオレ。もう少し・・・
かどうか分からないけど頑張れ!
もう一押し!
「それにテロリストだったとしたら、
まだこの街に居ますかね?
オレだったら、騒ぎに紛れて逃げますよ?」
「そりゃオマエがマヌケだからだ。
考えなしで行動しそうなツラをしてる。」
なんだそれ。根拠なんてねーじゃねえか。
「オレ以外にもあの馬車に乗っていた
人間がいたでしょう?
その人たちは調べたのですか?」
「"乗客名簿"を見る限り、御者も含めて
お前以外の人間は、全て死んでる。
死体も確認した。」
そうか・・・
みんな巻き込まれて死んだのか・・・
御者のオッサン、イイ人だったのにな。
「いや。だからって、
オレが犯人ってわけじゃないでしょ?
何の理由があってそんなことするんですか?」
「オマエは、冒険者ギルドに借金があるな。
それも簡単には返せない額の。」
「ありますが・・・」
それとこれとは関係ないと言いたかったが、
「それを減免してやろうと言われたんだろう。」
完全に逃げ道をふさがれている・・・・。
何か手立てはないのか?
何でオレは助かった?
衛兵に馬車から降ろされたんだ。
「ちょっ、ちょっと待ってください。
オレは、衛兵に馬車から
強制的に降ろされたんですよ。
だから爆発に巻き込まれなかった。」
足掻くしかない。
少しでも有利になるように。
「ほほぅ。どいつにだ?」
「それは、・・・・
名前は知らないけど、衛兵の人。
クエストに受取のサインをもらった。
さっき言ったじゃないですか。」
オッサンはアゴに手を当てて考えている。
「確かに"火石"を起爆させるには、
その場に居ないと、ほぼ不可能だ。
だからと言って、
オマエが犯人でない証拠にはならない。
誰かにやらせることもできるからな。」
「オレではありません。」
「犯人が自分で言うはずもない。
捕まったら叛逆罪で公開処刑だからな。」
なにそれ怖い。
「誓ってやってません。」
「何に誓う?」
え。何それ。
あ。そうか。
この世界はファンタジー。
神も悪魔も実在する。
神への誓いは、重い。
本当に天罰が下るから。
「契約の神に誓います。」
「ほう。ミスラ様にか。
その契約、違えることはできぬぞ。」
「あなたは何を賭けるんですか?」
こうなりゃ破れかぶれだ。
「何をd」
「もし、オレが犯人ではなかったら、
あなたはどうするんですか?」
もう押し切るしかない。
なぜなら、オレの心のHPは、
ゼロに近いんだ!
「何をバカな。賭ける訳がない。」
「オレは命を賭けているのに?」
「・・・必要がないだろう?」
「あれあれー?
確信があったんじゃなかったんですかー?」
「そんなことは言っていない。」
「何かやりそうな顔なんでしょ?」
わあ!ぐぬぬ顔だ!
初めて見たー!!
そして、
ピシャッ
ヒザを叩いて身体を起こし、
顔を近付けてくる。
「調子に乗るなよ。小僧。」
「アンタでしょ。人を犯罪者呼ばわりして。」
負けずに、にらみ返す。
もう引けない!
用語説明:
・臨時パーティーラッシュ
この街のクエストの大半が3人以上の組が基本なので、クエストこなすために臨時でパーティーを組む。
行き当たりばったりで、死ぬことが多い冒険者が多いので、前日から約束はほとんどしない。
なので、朝はそこかしこで募集がある。
・ウェスタンなドア
スイングドアとも言うらしい。
・ツェルト
アータルが元居た街の冒険者ギルド上級職員
全力でアータルを消しにきている。
詰めも甘くなかった。
・闇ギルド
アータルの想像上の産物なので、
本当にあるかは今のところ不明。
・ヘルミオネさん
この街の冒険者ギルドの職員
優しいけど、ある意味怖い(アータル談)
・髭のオッサン(ギルド職員?)
ヘルミオネさんと一緒に現れた男
口振りから、ヘルミオネさんより高い役職だろう。
・何かやりそうな顔
おつむのよわそうな顔の間違い?
・ジイサン(ザンディーグ)
宿場町でこの街に運ぶことになった荷物(人)。
スゴい(けど)厄介(アータル談)
・火石
爆発物
・ミスラ
契約の神
・真実
主観的なもの。⇔事実:多くの人が認める出来事。客観的なもの。
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