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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
新拠点
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01-55.翻弄

いつもありがとうございます!

今回のクエストの報酬は、

銀貨20枚になった。


銀貨10枚で金貨1枚だから、

金貨2枚分の稼ぎ!


「やっぱりゴブリンをひと集落分

 狩ったオレのおかげでは?!」


「それもこれも

 キミにクエストを紹介し、

 グリズリーからキミの命も救い、

 抜け目なく情報を集め、

 その上キミに社会の厳しさを教えた、

 賢いアタシのおかげよ!」


 ジャーンッ!


カッコいいポーズで威嚇し合う。


「もういい加減、

 そこ退()いてくれないか?」


受け取りカウンターではなく、

普通のカウンターの前で

一大スペクタルを繰り広げていたが、

次に待ってる人に言われる。


スゴスゴ、ギルドホールにある

テーブル席に移動する。


「じゃあこうしましょう!

 アタシがお酒とご飯をおごってあげる!

 もちろん、この街の情報をセットで!」


「う、情報欲しい。

 せめてハズレクエストが分かるように

 なりたい。」


「そーでしょーそーでしょー。

 あっ!おねえサーン!

 エールとカラアゲ2つずつー!

 さぁ飲むわよー!」


オレは情報とメシにつられて、

報酬配分を飲んだ。

ま。いっかー。

銀貨8でも、結構なもうけだ。


────


「ハーイ!カンパーイ!」


 ゴキュゴキュ

 プハーッ


年頃の娘さんが腰に手を当て、

ジョッキを飲み干してる。


「そんでさー。ソイツがさー

 アタシのことを見下してくんのー。

 もーアタマ来ちゃってさー。

 ねー?アータル聞いてるー?」


「聞いとりますよ。

 ヴィーナ、もうお酒は止めた方がー。」


「ウルサーイ!

 久しぶりにまとまった金が入ったんだから

 これが飲まずにいられるかってんだー!」


完璧に酔っぱらいだよ。

あんだけ動いた後に空きっ腹に

お酒を入れればそうなるよね。

ここのエール、度数高いし。


でも、カラアゲうまい。

どうやって作ってるんだろう。

教えて欲しい。


「アータル聞いてっかー。

 飲めやー。」


面倒くさくなってきた。

このまま捨てて行こうかな。


「おーアータル、

 あちしの酒が飲めねーってのかー」


ギルドホールでこんなに酔ってる人、

初めて見たよ。


 ベチャッ


 くかー


テーブルに突っ伏して寝てしまった。

全くもう!


「あらーあらららー?

 アータルくん、送り狼さん?」


 ギギギギィー


油の切れた扉みたいな音がしそうなくらい

ぎこちなく振り向くと、


「こんばんは。アータルくん。」


普段着のメガネの受付嬢のおねーさん。

今日はメガネを掛けてない。


 ズザザザザッ


思わず後ずさりする。


「どーしたの?アータルくん?」


「い、いえ。何でもないでふ。」


ど、どうしよう。取って食われそうな雰囲気。


「大丈夫よ。

 今日()取って食べたりしないから♪」


わー。

全力でオトコゴコロを(もてあそ)んで来るタイプ!


「で、どーするの?

 ヴィーナちゃんをお持ち帰りしちゃうの?」


「しませんよ!」


「そっかー☆」


いたずらっぽそうな目で見てくる。

メガネを掛けていないと、

翠色の瞳が潤んでるのが良く分かる・・・

じゃなかった!


「急に寝てしまってどうしようかと・・・。」


「アータルくん。だいちゃーんす☆」


顔を耳元に寄せて小声で言ってくる。

肩に掛かる髪から花のような甘い香りが・・・

ドキドキなんかしてないぞ。全然!


「じゃあ、ヴィーナちゃんは

 私が責任を持って

 部屋まで送り届けるわね。」


このタイミングで舌なめずりなんかすると、

別の意味で心配になりますって。


「残念だったわねー。

 それとも一緒に来る?」


 ブルブルブル


首が取れんじゃないかってくらい横に振る。

もちろん、否定の意味だよ。


「そっかー。夜道で可愛い女の子が2人、

 あー心配だなー。

 その内一人は酔い潰れてるのに。

 あー心配。」


ど、どうしよう。

冷や汗が止まらない。

怖い!


「い、行かせて頂きます。」


「イカせてだなんて。そんな固くならないで。

 リラックスして、しっかりお願いね☆」


オレは2人を護衛することになってしまった。


────


街は夜の喧騒に包まれてる。

メガネの受付嬢のおねーさんは、

鼻歌でも歌いそうな上機嫌で、

オレの横を歩いている。


オレは何故かヴィーナを背負っている。

酔い潰れてるヴィーナの身体は熱く、

ちょっとヒンヤリする夜道では丁度いい。


「背中に・・・当たってる?」


メガネのおねーさんが、話し掛けてくる。


「・・・何がですか?」


オレはメガネのおねーさんから、

目をそらしながら答える。


「フフン♪」


何とも楽しそう。


「今度ワタシもして欲しいなぁ☆」


負けない!絶対負けない!!

きっと、この手管(てくだ)でたくさんの人たちが

落とされてきたんだろう。

ま、負けないぞぅ。


「そんな機会は無いと思います。」


と、返すのがいっぱいいっぱいだった。


オレは護衛なので、

剣と盾を持って動きやすいように・・・

と思っていたら、メガネのおねーさんが、

手際よくヴィーナをオレの背に載せた。


そしてテキパキと片付けすると、


「じゃあこっちね☆」


と案内をはじめる。

この街の冒険者ギルドには

タコ部屋みたいのはないんだろうな。


冒険者ギルドを抜けて、街の中心部を目指す。

食堂が多く、酔っぱらいも多い。

確かに。ここを2人だけで行かせるのは、

気が引けるなぁ。


「おい。ネーチャン、付いてこい。

 オレらと飲みに行くぞ。」


明らかにガラの悪い酔っ払いに絡まれる。

オレが、ヴィーナを背負ったまま、

メガネのおねーさんの前に出ると、


「ションベンくせぇガキはいらねえから、

 背負ってるネーチャン置いて帰りな。」


と、言われる。

完璧なめられてる。


見た目がこれだし、

実際には駆け出し冒険者だし、

勝てるかどうかは分からないが、

それだって逃げることだけはしちゃいけない。


ゆっくりヴィーナを地面に降ろそうとして、

酔っ払いたちを見据えながら

(かが)もうとした時、


「ヒィ。」


酔っ払いが口の中で何か呟いた。


その目線を追うと、

メガネを掛けたメガネのおねーさんが、

ビジネススマイルを顔に貼り付けて

立ってらっしゃる。

こ、恐い。いつもと違う恐さだ。


「覚えてろー!」


酔っ払いは、人を押し退()けて走っていく。

何?その小悪党みたいな捨て台詞。

オレの解釈が違うのかな・・・?

最近、自分の語学力に自信がなくなってきた。

意味はあってるはずなんだけどなー。


遠ざかる小悪党を見てると、

後ろでカシャンと小さい音がする。


「さ。行きましょ☆」


さっきまでの気配を微塵も感じさせず、

メガネなしのメガネのおねーさんが歩きだす。


オレはそのあとを追うしかなかったワケで・・・。


────


ほどなくして、とある宿屋に着く。

入り口では体格の良い女性の方が座っていた。


「あら。いらっしゃい。」


「どうも。」


メガネおねーさんがあいさつをする。

そしてオレが続いて宿の中に入ろうとすると、


「この宿は男子禁制だよ!」


 ビクッ!


大声で叫ばれて、身がすくんだ。

頭から喰われるかと思った。


その拍子に

背中のヴィーナが、うぅーんとうめく。


「ヴィーナを置いてとっと帰りな。」


部屋まで連れていくつもりだったので

ちょっと戸惑うが、

言われた通り、ヴィーナを降ろす。

でも、背骨がグンニャリしていて、

ドアに持たせ掛けても、横になろうとする。


メガネのおねーさんが来て、

ヴィーナに肩を貸してあげる。


「ありがとうございます。」


お礼を言う。

そして気づいた。


「おねーさんはどうするんですか?」


「あら。送ってくれるの?」


「・・・女性の独り歩きは危険ですし。」


 パアァァァァ!


そんな効果音が見えるくらいの

とびきりの笑顔をもらいました。


こう言うので普通は(だま)されちゃうんだろう。

だ、騙されないぞ。オレは!


「でもダメー。また今度ね☆」


と言ってヴィーナを連れて行ってしまった。

呆然(ぼうぜん)と立ち尽くすオレ。


翻弄(ほんろう)され過ぎ。

用語説明:

・スペクタル

映画、舞台、演劇などで、大掛かりな仕掛けを用いた見せ場

もちろん、そんなにスペクタルではない。


・手管

人を操ったり、翻弄する駆け引きや手段


・タコ部屋

元々アータルが居た街の冒険者ギルドにあった宿泊施設。

狭い。

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