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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
新拠点
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01-52.露店

いつもありがとうございます!

「この剣を見せてもらってもいいですか?」


オレは、剣を指差して聞く。


ミイラの人は座ったまま、剣を渡してくる。

立てひざを付いているので、

きっとオレがこれ持って走って逃げても、

追い付ける自信があるんだろう。

やらないけど。


オレは剣を取り、眺める。

何だろう。この感覚。

この通りで布を広げているミイラの人を

見掛けた時から、何だか落ち着かなかった。

ワクワクな感じ?


おっと。剣に集中しよう。

剣は短刀と呼ばれる種類のものだと思う。

長さ的には、オレに適した長さより

ちょっとだけ長い。


下手に振ると足を切ったり、

地面にこすったりしちゃうだろう。

でも軽いし、スゴく手に馴染む。

名工が作った剣って感じだけど、

どうなんだろう。


「スゴく良い剣ですね。」


「金貨50」


「え?」


凛とした少し低い声だけど、女の人の声だ。


「金貨50なら譲る。」


「確かにスゴく良い剣ですけど、

 さすがに金貨50は出せませんよ。」


「いくらなら買う?」


「うーん。

 物凄い良い剣だとは思います。

 思いますけど、金貨なんて出せないですよ。

 オレは、まだ駆け出しの冒険者なんで。

 今の手持ちのお金を全部合わせても、

 金貨1枚にもならないです。」


ギルドにある借金も合わせるとマイナスだけど。


「ギルドに金を借りることもできる。」


「いや。そこまで欲しい訳ではないし。」


これ以上借金作りたくない。

もういっそ開き直って返さない!

ってどうだろう。

ダメだな。冒険者ギルドの施設が

使えなくなりそうな気がする。


素材やダンジョンで発見した品を

買い取りしてもらえないと、

普段の暮らしもままならなくなりそう。


ミイラの人と目が合う。

紅い瞳。

何だろう。この感じ。

以前どこかで感じたことがあるような・・・。


「じゃあ無理。」


「ごめんなさい。」


オレは素直に剣を返す。


「ホントに要らない?」


「正直、自分に合う剣を探しています。

 そしてこの剣は、オレの理想より

 ほんのちょこっとだけ長いですが、

 使いこなせる範囲だと思います。」


「じゃあ、何故?」


「お金がない!」


「ギルドに借りれb・・・」


「返せない!」


「悪魔と契約すれば・・・」


「他人事だと思ってる?」


「うん。」


あ。これは本気で思ってるな。

つまり、絶対、値段は落とさないぞって

意味だ。

よし、立ち去ろう。


「ありがとうございました。

 金貨を稼げる様になったら、考えます。」


と諦める素振(そぶ)りをみせる。

商売人なら、ここで引き留めて値段交渉に

入るはずだが・・・


オレが金貨も持ってないと言うのが

ばれているのか、引き留めはなかった。

まぁ。あの剣を銀貨でとかは無理だろうな

ってのくらいはわかった。


────


大通りに出ると、色々露店が立ち並んでいる。

食べ物関連から、防具、武器、道具など、

ありとあらゆるものが並んでいる。


何か掘り出し物ないかなー。


剣を売ってる露店があった。

だが、どれもオレが扱うにしたら長めだ。

作りもオレの目から見てもちょっと・・・。

さっきの剣はやっぱりスゴい良かったなぁ

って思ってしまう。

でも、消耗品で使い潰して買い換えるって

考えると、これで十分かもしれない。


もっとお金を稼げる様になったら、

良い品を長く使うってやってみたいなぁ。


「ボウズ、買うのか買わんのか?」


「あ。見てるだけです。お構いなく。」


「買わないのなら、邪魔だから

 どっか行っとくれ。」


ひげ面のオッサンは、

アゴで大通りの先を指した。


他の露店をのぞいてみる。

うーん。斧とか盾とか、槍とかあるんだけど、

剣は少ないなぁ。


人気がないのかな?

そんなことないよね?

バル(ねぇ)も剣使っていたし、

兄貴や親父も使っていたし。


一般的なんだけど、

この街の冒険者の中ではあんまり、

人気がないのかな。


いやいや。

さっき見た冒険者ギルドのホールにいた人を

思い出せ!

あの小悪魔メガネお姉さんの顔しか

思い出せない・・・。


歩いていると、店の前に箱を出して

一本いくらみたいに売っている店があった。

うーん。確かにこれはどうだかなぁ。


「どうした?ボウズ。剣を探しているのか?」


「そうなんです。

 ちょうど自分に合ったヤツがなくて。」


ムキムキな店員が話し掛けてくる。

以前は、話し掛けないで!って思っていたけど

この世界じゃ、聞かないと

教えてくれないことが多すぎる。

聞いても教えてくれないこともあるけど。


「これなんてどうだ?

 長さなんてピッタリだ。」


と、トロールが持ってそうな

トゲトゲのこん棒を勧めてくれる。

どう考えても剣じゃないし。


「剣を探してるんです。」


はっきり伝えないと、

余計に時間を食ってしまう。


「じゃあコレなんかどうだ?」


と、ボロボロな剣を取り出してくる。


「研いでやればまだ十分使える。」


あきらかに在庫を

押し付けて来ようとする気満々だ。


「ここは、

 まともな剣の一本もないんですか?」


思わず言ってしまう。


「お前みたいのには、売る気はないな。」


うわっ。面倒くさい。

無言で出ていく。

さすが都会。

子供なんて全然相手にされない。

何かを買うんであれば、

冒険者ギルドの紹介がいる。


そう言う意味では

さっきの路地裏にいたミイラの人の方が

良心的だった。

差別もなかったし。


現実を思い知らされたオレは、

もう一度冒険者ギルドに戻る。


もどる・・・もど・・・。

迷った。


────


何とか冒険者風の人を付け回して、

冒険者ギルドにやっと戻ってきた。

だいぶ疲れた。


最初から逃げ出さないで、

話を聞けばよかった。


でも、あのメガネのお姉さんは

違う意味で怖いんだもの。


カウンターはそこそこ混んでいた。

報酬受け付け用のカウンターは

かなり並んでる。


大型の納品物のカウンターは

また別にあるんだろうな。


「良い武器屋を紹介して欲しいんですが。」


今度は間違えないように

オッサンのギルド員がいる列に並んだ。


「ギルド公認の武器屋なら、

 まぁそこそこの武器なら手に入るよ。

 もっと良い武器が欲しいなら、

 誰かから紹介状が必要だけど、

 冒険者ギルドでは、

 この街のギルドで実績がない冒険者には

 紹介状を書けないんだ。」


「なるほど・・・。

 まずはギルド公認の武器屋で

 装備を整えてから、

 何かのクエストを受けて、

 実績積みます。」


「それがいい。

 いきなり高望みをしちゃうと

 ロクな結果にならないよ。」


「ありがとうございました。」


お礼を言って、

ギルド公認の武器屋の場所を教えてもらう。

ギルドのすぐ近くだった。


 カランカランッ


ドアにベルが付いていたようで、

入ると音がする。

武器屋らしい、鉄と油とホコリの匂いがする。


「いらっしゃい。」


眼鏡を掛けたジイサンが奥に座っている。


「オレの身体に合った

 安めの剣が欲しいんだけど・・・。」


「ほいほい。それなら、あっちだよ。」


ジイサン左側の通路を指差さす。


そこには、鞘に収まった剣が何本も

タルに刺さっていた。

一本取り出してみる。

ちょっと長めだけど、ちゃんとした剣だ。

変にボロボロだったり、

バランスが悪いこともない。


何本か剣を引き抜き、中を確認する。

どれも錆びていない。

ちゃんと手入れがされている。


「気に入ったのはあったかね?」


ジイサンは奥から声を掛けてくる。


「どれも状態がいいので迷ってます。」


「それは良かった。ゆっくり選ぶといい。」


良心的だな。

いや。今日出会った商人たちの印象が

あまり良くなかったせいか、

ここの雰囲気は本当に心地よい。


みんなココに来ちゃうせいで、

他のところが売れてないのかな?

それにしては人がいない気がするけど。

用語説明:

・ミイラ

こちらの世界では古代エジプトのミイラが有名。

本文中のミイラ色は、コーヒー豆を入れる袋の様な色だと思われる。


・悪魔に魂を売る

この世界では、実際に売れるらしい。


・掘り出し物

素人が手を出して、本当に価値があるものを引き当てるのは、至難の技


・トロール

巨躯で粗暴のイメージが強い魔物

この世界にいるかは現状不明



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