01-47.宿場町
ごめんなさい。
休むつもりでした。
いよいよ最後の宿場町に着いた。
川の匂い(?)がする。
手紙は埋めることにした。
川に捨てちゃうことも考えたが、
「川下で見つかると面倒だぞ。」
と、ジイサンに言われて止めた。
今は、川とは反対方向の小高い丘の上に来ている。
「ちゃんと持って来ているか?」
手紙を見せる。
ちゃんとヒモは縛ったまま。
板はしっかり固定されている。
「では行くぞ。」
ジイサンは、両手を天に掲げ、口を開く。
「この世を統べる大地の女神よ。
我が声に耳を傾け、その豊穣の力の一端を
我が祈り、我が心を糧に顕現させ賜え。
地の理を解き 地を満たせ
軟地」
ジイサンが厳かな感じで詠唱を終えると、
薄暗い空に光が差し、
地面にその光が吸い込まれていく。
「アータル。」
オレは頷いて、その光の中に手紙を放り込む。
徐々に光がおさまっていく。
地面の上に描かれているその光の輪は、
ゆっくり消えていく。
なんて神秘的なんだ・・・。
司祭と言う名に相応しい
そんなように見えた。
「ふぅ。
これでアータルの持っていた手紙は、
地の底に封印された。
もうきっと誰にも取り出せまい。」
「そうか・・・。
ありがとう。ジイサン。」
オレは目を伏せる。
一仕事を終えたような気分。
感慨深いと言うか何と言うか。
「お。」
ジイサンの声がしたので顔を上げる。
「おぬしにひとこと
言っておかねば ならぬことがある。」
ジイサンを見ると、少し目が泳いでいる。
言い難いこと・・・
考えるのから逃げるなってことかな・・・?
ここに来る途中、馬車での会話を思い出す。
途中で考えるのがイヤになって、
放り出してしまったこと・・・
きっとオレに取って、耳の痛い話に違いない。
「まぁ。その・・・
なんだ・・・
おぬしの預かった手紙は、
確かに地の底に葬ったのだが・・・な。」
ジイサンらしからぬハギレの悪さだな。
「だが、どうしたの?」
オレは思わず聞き返す。
「どうやら、ソコには先客がいたらしい。」
ボコッ
ボコッ ボコッ
地面が急に盛り上がる。
そしてオレの足元も・・・。
「とりあえず、逃げろ!」
ジイサンはさっきまでの厳かな雰囲気なんて
微塵も感じさせず、颯爽と走り出す!
オレのアタマは、はてなマークでイッパイだが、
とりあえず、よろめきながら、ジイサンを追いかける。
なに?なに?どういうこと?
走りながら後ろを振り向くと、
たくさんの人影が地面から這い出してくる。
え。なに?ナニアレ?
ゾンビ的なヤツ?
ゾンビ的なヤーツだよね?
先に逃げているジイサンに追い付く。
「なにあれ?
ねぇ。なにあれ?」
「アンデッドらしいな。」
「そりゃ見りゃわかる!
何で!急に!湧いてきたの?
それに なんだか、
オレを 狙っているような・・・。」
オレの足元がまた、ボコッと盛り上がったので、
ジャンプして避ける。
ナニコレ?いきなりピンチなんですけど!
「ハァハァ。
どうやら この丘は、
鎮魂の ための 墓所 だった
ようだ。」
「えっと、
今 走ってるから!
難しいこと
考えられないから!
簡単に!」
「ここは墓で、
おまえの 手紙の 内容が
叶えられた らしい。」
「もっと 簡単 に!」
「アンデッドが おぬしを 殺す!」
「バカか!!」
ジイサンのすぐ横を走ってるけど、
息切れと大声で、会話がおかしい。
それにオレが殺されるのもおかしい。
手紙の内容・・・?
”手紙を持ってきたものを闇に葬れ”
的なこと書いてあるはず・・・。
え。それが叶っちゃったってこと?
捧げ物として、この墓の主に?
どうして?
つーか、ここ、墓だったの?
とりあえず考えはまとまらないけど、
必死に走る。
今のところ、オレの前には出てきてないけど・・・
チラッ
見なきゃ良かった!!
ゾンビ的なヤツがイッパイ追ってきている。
どこに逃げろって言うの?
とりあえず街へ?
スーパーマーケットに逃げ込めば助かるよね?
いやいやいや。えーと。
こう言うのは、神聖な力でパァーっと土に還す的な・・・って!
「ジイサン!
魔法で アイツら
どうにか できないの?」
ジイサンのノドが動いて、息を飲んだのが見えた。
「できん!」
「なんで!?」
「そんな魔法、知らんから!」
「自称司祭だろ!!」
「知らんもんは 知らん!」
ぜーぜー言っている。
やっぱりジイサンだ。
「二手に 分かれよう。」
良い笑顔でサムズアップしてくる。
「ジイサン、オレのこと
見捨てる気だな!」
「だから、おぬしは扱いづらい。」
「くそぅ。こうなりゃ 道連れじゃー。
一緒に地獄に堕ちようぜ!」
「何で 地獄行き 決定なんだ。」
「そーなってるの!」
そろそろ言い合いする体力も尽きてきた。
後ろを振り向くと・・・
アレ?意外と後ろの方にいるぞ?
逃げきれるのでは?
と、思ったら足を掴まれた!
ジイサンは、そのままのスピードで行ってしまう。
ナイフを取り出し、足に絡み付いた
ゾンビ的なヤーツを攻撃!
ゴロゴロと転がり、何とか脱出した。
そして立ち上がると・・・
周りにはゾンビたち。
意外と足が速いのね・・・。
その時、オレは感じた。
強者の気配。
圧倒的な力を備えた、強者が近づいてくる予感!
「急に"邪なるもの"の気配が増えたと思ったら・・・。」
地平線にわずかに残る光と、
天頂を覆う闇の中に、
漆黒の服をまとった、僧侶が立っていた。
─────
「死の理から外れた者共よ。
拙僧が悉く無に還してやる!」
オレは息切れの中、汗をぬぐって、
その姿を見る。
「天よ。我が主よ。
理から外れしものどもに、鉄槌を。
死者送還」
鉄槌下しちゃうんだ。
と思っている間もなく、
ゾンビ的なヤツらは、まばゆい光の中に溶けていく。
ヒョエー
変な声?音?を立てて。
オレの周りを囲んでいたほとんどのゾンビは消え去った。
オレはガックリとひざまずく。
疲れたー。
マジこの人が来なかったら、オレ、終わってた。
ジイサン、肝心なときにダメだな。
「まだ終わっておらぬぞ。
油断めされるな。」
えっと、何だろう。
この人の言葉、スッゴく聞き取りづらい。
何か独特の訛りみたいのがあるな。
ボコッ
地面からナニか出てくる。
オレはナイフを構え、襲撃に備える。
それは、鎧を着た騎士だった。
手には古びて居るが剣を持ち、盾を地面から取り出す。
兜は顔全体を覆うもので、表情はうかがえない。
騎士は剣を下げ、空いた手を振ると、
空中に淡く光る紙が現れる。
そこには、
"この文書を持ってきた者を
秘密裏に処理すること"
と、ハッキリ書かれている。
騎士は、ゆっくりと手を伸ばし、
オレを指差す。
あ。これは完全に裏目に出たヤツだ!
手紙はフッと空中で消えた。
騎士は再び剣を構える。
どう考えても、リーチが違う。
ウルワンに着いたら、槍か剣か
間合いの広い武器を買おうと、心に誓う。
騎士から距離を保ちつつ、
隙が生まれるのを待とうとすると、
横から漆黒の僧侶が走り抜ける。
そして、手に持っていた"本"のカドで騎士を殴り付ける!
盾で防ぐ騎士。
だが、完全には防げなかったのか、片ヒザを付く。
今度は、本の表紙で騎士の兜を殴る!
その中で漆黒の僧侶は、何かを唱えている。
右手の本のカドを騎士の肩に叩きつけ、左手を突き出す。
「聖なる儀式!」
騎士は光を浴び、後ろに吹っ飛ぶ。
ガッシャン!
地面に叩きつけられるが、剣を支えに起き上がろうとする。
そこに漆黒の僧侶は、容赦なく追い討ちを掛ける。
飛び蹴りからの、本のカド攻撃。
そして、
「聖なる儀式!!」
今度は空中に打ち出された騎士の鎧は
少しずつ光に溶けて見えなくなった。
漆黒の僧侶は、その消えてく様を見送り、
辺りを見回しながら鼻を鳴らす。
スンスンッ
スンスンスンスンッ
どうやら、匂いを嗅いでいるようだ。
そして、しばらく周囲を嗅いで、諦めてこちらを向く。
これは・・・!
先ほど感じた圧倒的な強者感。
その原因がわかった。
これは新しく手に入れたスキルの影響だ。
"彼女"は圧倒的なボリュームで、オレに迫る。
「拙僧は、アルマイタと申す。
名を伺ってもよろしいか?」
用語説明:
・アンデッド
生命の理から外れた者たち。
ゾンビ、グール、屍鬼など。
宗派によって扱いが多少異なる。
・スーパーマーケット
ゾンビモノで最後に立てこもる場所。
もちろんこの世界にはない。
・独特の訛り
この世界の訛りの表現が難しかったため、
古典を参考に訳した。
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明日、明後日はきっとお休みします。




