01-46.手紙
いつもご愛顧ありがとうございます。
今日もギリギリでした。
ジイサンに話してて気付いたが、
オレ、ウルワンに、着いたらどうしよう。
生き残るのだけ考えてて、
何も考えてなかった。
オレ何したいかな。
だらけ切った生活したいなぁ。
そのためには先立つもの・・・
金が必要だ。
だから冒険者になって、
大金持ちになろうと思ったんだけど、
逆に多額の借金を抱えちまった。
ひとやま当てて、借金を返さねば!
だらけ切った生活からほど遠い生活。
こんなはずじゃなかったんだがなぁ。
ジイサンをギルドに引き渡せば、
多少の礼金が出るはず。
それを元手にしばらくウルワンで暮らして
借金を減らそう。
どうせ元の街に戻ったら、
ロットンの実家の貴族に嫌がらせを受けるに
決まってるからな。帰れはしないだろう。
気にかかると言えば、
ツェルトが寄越した手紙だ。
ウルワンの冒険者ギルド宛となっている。
中身は見てないが、
どうせロクな内容じゃないだろう。
・・・見ちゃおうかな?
手紙を取り出す。
「どうした?アータル?」
ビクッ
ヒモに手を掛けた時に、声を掛けられた!
ヒモはあっけなくほどける。
もう良いや。ほどいちゃえ。
「ギルドの手紙の中身を見ようかと。」
「おいおい。そんなことして大丈夫か?」
「大丈夫かどうかは、
中身を見てみないとわからない。」
「なんつーか、アータルらしからぬ、
短絡的な行動に出てるな。」
「短絡的?」
「考えなしってことだ。
悪いことが起きるかもって考えてはいるが、
きっと何だかんだでうまく行くから
とりあえずやっちまえって感じだぞ。」
「ダメかな?」
ちょっと弱気になった。
悪いこと・・・悪いこと・・・
死ぬ以上に悪いことって何が起きるんだろう?
「よし。ちょっと話を聞いてやる。
それをしまって落ち着け。」
ヒモを縛り直して、腰の袋に入れる。
「冒険者ギルドは、契約の神と契約している。
クエストを故意に失敗させたり、
サボったりすると、命で償うことになる。」
「そう言う意味では、
これは正式な依頼じゃない。
その場でギルド員のオッサンが、
オレに個人的に頼んだ感じになってる。」
「報酬は?」
「何も約束してない。」
「そんなの受けたのか?」
「受けざるを得なかったの!
受けないとその場で囲まれて
終わりだったから!」
「"ホントにそうだったのか?"
なんて言わないぞ。
アータルがその場でそう思ったのなら、
きっとそれしかなかったんだろう。
過去は変えられないからな。
ちょっと慎重派のアータルにしては
意外だったからな。」
「慎重派?オレが?」
「気付いてないなら言っておくが、
そこそこ考えて行動してるぞ。
その年にしたら。
ただ、たまに何にも考えて無いような
行動をすることもある。
今回とかな。」
中身はオッサンなんだけどな。
そう言う意味では、考えが足りないのか!
「で、アータルはそこに何が書かれてると
思ってるんだ?」
「うーん。たぶんだけど、
ウルワンの冒険者ギルドの力を使って
この手紙を持ってきたヤツ、
まぁ、ここではオレのことだけど。
闇に葬ってくれとか書いているんだ思う。」
「差出人は確かな人物か?」
「冒険者ギルドの上級職員らしい。」
「お前がギルド職員で、
そんな手紙をもらったらどうする?
しかも、ヒモで縛っただけの手紙を。」
「んー。怪しいと思うかな。
大事な手紙なはずなのに、
誰かが途中で開けても分からなそうな
感じで、冒険者ギルドを通してないし。」
「そうだな。
まぁ、文字が読めるヤツより、
文字が書けるヤツの方が少ないから、
それなりの地位にあるものだろうけどな。」
そうか。確かに。
そう考えれば、筆記試験してたメンバーは、
みんな文字が書けたのか。
と、言うことはサラも?
獣人なのにスゴいな。
「で、だ。
まぁ。おぬしを殺るのは簡単だろう。」
「え。ちょっ・・・」
「待て待て。先を聞け。
殺ったあとはどうする?
報酬は誰から取る?」
「え。その上級職員から・・・?」
「存在するかも分からないのに?」
「確かにこんなのじゃ分からないけど。
問い合わせたらわかるんじゃない?」
「いくら掛かるんだよ。
報酬よりも高かったら、損だ。
だから、ギルド員は何もやらない。
ホントに必要だったら、
また別の手段で依頼が来るはずだしな。」
「なるほど・・・?」
絶対そうなのか?
考えるのが面倒になって来たぞ。
「じゃあ、その上級ギルド職員とやらは
何でそんなゴミを持たせたのか。」
「ゴミ?」
「届いても何にもならない手紙は
ゴミみたいなもんだ。」
「ゴミみたいなもん。」
「ポンポコピーのテレツクテン」
「ポンポコピー?」
「おぬし、途中で考えるの諦めただろう。」
あ。バレた。
ジイサンが顔を寄せてくる。
秘技、
"酔ってる人の話を聞くとき、
話を聞いてる様に見せ掛けるの術"を
見破るとは、さすがジイサン。
「あはは。」
「ちょっと休憩するか。」
────
外は少しずつ夕方になりつつある。
もう少しで宿場町に着くだろう。
外をボンヤリ見てる。
考えてるの途中で放棄しちゃうの、
ホントだめだなぁ。自分のことなのに。
普段使ってないアタマを使ったからかな。
生前も、途中で諦めちゃうこと多かった。
いいよ。もう。どうせオレが悪いんだろ!
とか、オレがやれば良いんだろう!
とかで塗り固めていたなぁ。
もっと考えていれば良かったのか?
もっと誰かと話しておけば良かったのか。
ジイサンは少なくとも話を聞いてくれたのに、
なんでこんなになっちゃうのかな。
────
「さて、続きはできるかな?」
「ありがとう。」
「結果から言おう。
その手紙、開けないで埋めろ。
そして忘れろ。」
「へ?」
「開けたら、何かと面倒なことになる。
開封することで
魔法が発動する可能性もある。
かと言って、届けても何も良いことない。
契約にも縛られてない。
手紙を持ったアータルは次の宿場町で
死んだ。
手紙は地中深く埋まった。
それでいいだろう。」
「うん?」
「ま。あとは自分でもう一度考えるといい。
まだ、宿場町に着くまで時間があるからの。」
と、今度は御者のオッサンのところに
行ってしまった。
オレはジイサンの言葉をもう一度
思い出しながら考える。
思えば考える時間が与えられるのって、
ゼイタクだな。
心のよゆーとかそう言う感じだ。
追いたてられて、短い時間で結論出せ
ってのは色々あったし、
後で思い返すと、なんでそんなことをと思う。
そのときはそれしか思い付かなかったから
仕方ないだろ!と思いつつ、やっぱり後悔する。
・・・と、現実逃避はここまでにして、
捨てちまえば良いってことだな。
面倒だから。
ただ捨てると、余計に面倒なことになるから
地中深く埋めちまえと。
確かに。それが一番かもしれない。
なんで律儀に手紙を届けようと思ったんだろう。
頼まれたからかな?
手紙がなくなることなんて、
この世界じゃザラだし、
それを見越して何通か同じ手紙を書いて、
何人かに持たせるのが普通らしいし。
どれかが届けばラッキーみたいな習慣だ。
しかも、この手紙は別に
ギルドの依頼ってわけじゃない。
届けなくともペナルティはない。
なんだ簡単なことだった。
用語説明:
・ウルワン
この旅の目的地。
かなり栄えている街らしい。
・ロットン
ロットン=アールウッド、アールウッド家の次男。
アールウッド家は、アータルの元居た街の中では
かなりの力を持つ貴族
・契約の神
契約を司る神様。本文では名前が出てこない。
商人には人気がある。
・ツェルト
ギルド上級職員
手紙の主
・サラ
獣人。ロットンの手下に殺された。
・ポンポコピー
寿限無の名前の一部。
この物語には関係ないはず。
───
明日、明後日と投稿おやすみします。。。
ごめんなさい。




