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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
旅立ち
5/271

01-03.クエスト終了

連投です。

ご覧いただきありがとうございます。

「あれ・・・ここは・・・?」


身体を起こすと目の前に

白い服を着たオッサンが立っていた。


オッサンは両手を広げて言う。


「おぉアータルよ。

 死んでしまうとは情けない。」


辺りはだだっ広い空間。

スポットライトが当たったみたいに、

オレらの周りだけ明るい。


とりあえず胡座(あぐら)を組んだ。

手足がいつもより長い気がする。


前世の身体か?

ペタペタ顔を触るが分からない。

 

確かオレは森を抜けようとしていて・・・。


「え。オレ死んだの?」


 バシーンッ!!


突然白い板みたいので、

真上から頭をぶっ叩かれる。


痛・・・くない?

派手な音の割には。


ってハリセンかよ。


「はい。死んだよー。

 キレイに一撃で死んだよー。」


そしてデカイ顔を近付けてくるオッサン。


「ね。アタルくんね。バカなの?

 ね?バカなの?

 せっかくね、地獄で魂を洗浄してね、

 新しくやり直そうって転生したのに、

 妄想をこじらせて死ぬってバカなの?

 死んでも治らないの?」


「顔が近い!」


何か妙にテンションが高くて殴りたい!

あ。殴ってた。


「痛い。

 あ。でも、神の使いだから全然痛くない。」


イラっとしたので、もう一度グーで殴る。


 パシッ


が、今度は左手で止められてしまう。


「アタルくんさ、

 ね、順を追って考えてみよう。

 はい、アナタ!

 朝、冒険者カード作って

 そのままクエスト行っちゃったね。」


「行った。」


「はい!バカ!

 お前バカ!!

 ゲームじゃねーんだぞーこの世界はさー。

 魔法とかあるけどさー!」


ビシッとハリセンを

目の前に突きつけてくるオッサン。


うっとうしい!


右手で払い除ける。


「アタルくんさー、

 ね。もっかいよく考えてみようか。

 準備もなしに突撃って何なの?バカなの?

 イノシシでも突っ込む相手がいるかどうか、

 最初に確認するよ?」


「いやいや。準備万端だっただろ!

 剣もあったし、非常食も持ってたし!

 それに袋も持ってったじゃんか。

 そもそも初心者でもできる

 一番簡単なクエストだったし、

 あれで充分だっただろ!?」


「はい。バカー。」


ウリウリとハリセンで

鼻をつついてくるのを

再度振り払う。


「アルドアがどこに生えてるとか、

 そこにはどんな魔物がいるのとか。

 気を付けなきゃいけないことない?とか、

 何にも聞いてないでよく、

 『準備は完璧だ』とかね。

 ボク準備万端です!(キリッ

 って!

 うん。バカ?」


「バカ?」に合わせて、

両手の甲をアゴの下に持ってきて

小首を傾げてくる。

超絶ウザい。


「それにさー。

 その袋も、()()()()()()でしょー?

 たまたま。

 ギルドを出るときに

 持っていた人とぶつかって、

 善意でもらったものでしょ?

 自分で持っていこうと

 用意したとかじゃなくて。

 子供の頃何度も採ってたのに

 忘れてたの?

 もぅ。」

 

人差し指で軽くつついてくるのを

払いのけながら、反論しようとする。

 

「いやでもさー。」

 

「この世に初心者用のクエストなんかねーんだよ。

 どこも現実なの。

 弱い生き物も強い生き物も

 ()()()()()()()()()の。

 最初は青い軟体動物と戦うとか、

 ラスボスは魔王の城に閉じ籠ってるとか

 ないの。

 分かる?」

 

「いやでもさー。」

 

勢いで言ってはみたものの、

あとが続かない。


確かにオッサンの言いたいことは分かる。

アルドアもたまたま知ってたし、

初心者でも稼げそうなクエストって

紹介してもらったし、

出てくるのもゴブリンだけだったし、

ゴブリン狩るのも上手く行き過ぎたから、

調子にのってたのは事実だ。

 

「ノってたねー。かなりノってたねー。

 中級冒険者(笑)とか。

 ね。もうバカかと。

 今日泊まるところさえも

 押さえてないやないのん。」

 

確かに。

今日泊まるところとか考えてなかった。

ケガでもしてたら動けなかっただろうに。

宿の値段とかも知らん。飯屋とかも。

浮かれすぎてたな・・・。

 

「キィヤーステキぃー!抱いてぇー!(裏声)

 ってあの冒険者ギルドにいたの、

 ほぼオッサンだけだったでしょ?

 何?そっちの方がいいの?」

 

「いや。ソコは妄想の中で···」

 

「もうそろそろさ、そーゆーさ。

 目の前の楽な道をさ、

 歩もうとするのをさ、

 諦めようぜ。な?」

 

「いや。そんなこと・・・」

 

「そーゆーさ、

 考えなしの出たとこ勝負でさ、

 都合の悪い時には

 妄想に逃げちゃってたからさ、

 過労死したんでしょ?

 考えるのも放棄しちゃってたから。」

 

生前(前世?)のことを思い出す。


死んだ魚のような目で、

ただただ与えられた仕事を

こなすだけだったオレ。


仕事を憎んでたし、世界を憎んでた。

何もかも無くなっちゃえばいい、

明日地球が爆発しないかなーと思いながら、

ただひたすら言われたことだけやってた。


上手く行かないのは、

こんな管理しかできないない

クソ上司のせいだと!

なのに何故オレのせいになるんだと!


計画が悪い、設計が悪いって

愚痴るだけ愚痴って

他には何もせず、

最後には愚痴も考える気力もなくなり、

ただ だだ

同じところをグルグル回ってた。


で、あっさり過労死。

そしてあっさり地獄行き。


地獄はマジ地獄だった。

あの現実よりもっと地獄だった。


そこでたまたま

蜘蛛の糸を掴んで転生した。

たったひとつの条件があったが、

この世界に転生することになったんだ。

 

「そう。

 この世界で色々と体験したこと、

 その目で見てきたことをね。

 教えて欲しいのさ。

 こんな序盤でカンタンに死なれると

 困っちゃうんだよ。

 こっちもね。色々忙しいからね。

 アタルくんは、()()()()()なのね。

 そうホイホイいないからねー。」

 

選ばれし者・・・。

 

「そう。神に選ばれし者なの。」

 

何か心の奥底にしまっていた

中二ゴコロを突き動かされる。


あれ?しまっていたかな?

妄想するときには良く取り出してた気がする。

 

「一番の原因はさ、

 何をするのもさ、受け身ってことさ。

 もともと死んだ原因もそこだよ?

 流されてるだけ。」

 

流されてるだけ・・・か。

確かにこの街に出てきたのも、

家から追い出されたからで、

何もなかったら、

ずっとあそこに居たに違いない。


空から何か幸運でも降ってこないかなぁ

とか言いながら。


でもそれは全部が全部、

オレのせいなんだろうか。


確かにダラダラ選択しなかったけど、

そんなヤツら世の中に

ごまんといるはずだ。


それでも上手く行くヤツもいるし、

行かないヤツもいる。


あぶないあぶない。


前世のクソ上司と同じ様な論法で

丸め込まれるところだった。


利益が出たら自分のおかげ、

問題が起きたらお前のせいって。

そもそも生き返る先が異世界ってなんだよ。


「ま。確かに。

 全部が全部アタルくんのせい

 ってわけでもないんだよね。

 だからこうして話してるってワケ。

 それn・・・」


チャンチャカチャカチャカ

スッチャンチャン♪


昔なつかしスマホの呼び出し音だ。


「はい。いつもあなたの心のそばに。

 あなたの神の遣いです(キラン」


出たよ。この人。

オレに断りもせず、

躊躇もせずに電話に出たよ。


「はいはい。そーですよねー。

 はい。それはもう。すぐ伺いますー。

 はい。直ぐです直ぐ。

 あ。はい。もうすぐ扉の前に着きますー。

 はい。もうすぐ着きますので。

 あーはい。はい。はーい。」


 ピッ。


オッサンはこっちを向く。


「んじゃ頼んだよ。

 生き返らせるから。

 よろしくやってちょーだい。

 神の遣いの御名において、

 汝アータルに仮初めの生を授ける。」


急にオッサンが真面目な顔して、

中二っぽい台詞を言う。


オレの体が輝き始める。

ん?あれ?

今、聞き捨てならないこと言ったよね?

え?仮初めって?

生き返るのは一時的ってこと?


「んじゃ。神の遣いは忙しいので、

 このへんで!ドロンさせて頂きます。

 はい。さいなら!」


忍者のように印を組んだかと思ったら、

白いケムリにまかれ、

オレは強い光に包まれた。


不思議な浮遊感と共に

オレは意識を手放した。


が、途中で頭の中で何か聞こえた。


「あ。忘れてた。

 ちゃんとデスペナ付けといたから。

 スキル経験値全没収。

 ついでにレベルも下げておいたんで。

 んじゃあとよろしく。」

用語説明:

・神の使い

自称"髭がダンディ"な中年のおっさん。

武器はハリセン。空気は読めない方。


・デスペナ

デスペナルティー

ゲームで死んだ際に経験値やお金などを

一定割合で失う仕様

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