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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
流れる
49/277

01-43.自称司祭

いつもありがとうございます!

食堂から漏れるわずかな光を頼りに

相手の人数を確認する。


人の数は、3人。

全員装備はバラバラ。

長剣一人に、棍棒と、槍だ。

長剣はカイトシールドも持ってる。


ちょっと!!本気なんですけど!

本気で殺しにかかられてるんですけど!


食堂からちょっと離れているけど、

光がギリギリ届く距離。

大声を出せば誰か助けてくれたり・・・

しないよな。


どうするか。

状況的にはあんまり

余裕があるように思えない。


棍棒と槍は、切っ先をこっちに向けて

構えを取った。

長さもあって、隙があるように見えない。


視野の端っこの方に、

小道が見えるけどあれは罠だ。

あそこに入っていったら、

槍と棍棒に追い詰められて終わりだ。


 ガヤガヤ


後ろで声がする。

挟み撃ちにしては声が大きい。

食堂を出た客かな?

食堂の光が届くくらい近くだからな。

ってか良く考えりゃ近過ぎじゃないかな?


待ち切れなくて

近づいちゃった・・・のかな?

そう言えば、棍棒と槍のヤツ、

ずっとオレばかりを見ている。

・・・いや。正確には

オレの 持ってる包みを見てる。


オレが右に包みを振ると・・・

目線もそちらに釣られて動く。

左に動かすと・・・

今度は切っ先もそっちに向く。


え。これ・・・刺客じゃなくて

追い剥ぎなんじゃない?


ジイサンがゆっくり言う。


「とりあえず武器を置いて

 食堂で一緒にメシを食わんか?」


2人の顔は見えないが、

ゴクリって音が聞こえた気がした。

ジイサンは、更に重ねる。


「そこの店の焼き肉は、

 パリパリジューシーで食べ応えあったぞ。

 エールのシュワシュワとスゴく合う。」


連続詠唱!!

そしてなんて高速詠唱なんだ。

相手に考える時間を与えない。

そしてジイサンは、少し溜める。


「・・・仕方ないのぅ。

 今夜は、ワシの()()()だ。」


すると、槍と棍棒の2人は武器を取り落とし、

手のひらを上にして、座りこんでしまう。


良く見ると、アタマの上に

ケモノ耳が生えている。


獣人か。

襲われたらヤバかったな。

残りの一人は、どうしようか迷っているらしい。


後ろから聞こえたガヤガヤの声が遠ざかる。

残りの男も諦めたのか、構えを解いて・・・


突っ込んで来た。

一直線にジイサンを狙ってくる。

オレはジイサンの前に立ち塞がり、

盾で剣の軌道をズラす。


角度が悪かったのか、

相手の剣速が速かったのか、

盾の端が欠けてしまう。

まだ行けるけど、若干ヘコむ。


振り下ろされた長剣を持ってる小手に

ヒザ蹴り。


相手は剣を落とすが、

代わりに盾でぶん殴られ、

右の壁に吹っ飛ぶ。

ツーンとした感じ。何かちょっと懐かしい。


カイトシールドを前に出して

ジイサンに突っ込んで行く。


ジイサンは手を突きだす。


(ピット)


ジイサンの前の地面にいくつか穴が空く。

カイトシールドの賊は、足を取られて

つんのめる。

ジイサンはその上に飛び乗る。


 グェっ


賊はカエルみたいにうめくと

動かなくなった。

鮮やかだ。


「じゃ。もう一度メシにするか。」


ジイサンは2人を立たせて

食堂に向かう。


カッコ悪いオレは、

放り出した包みを拾い、

そのあとに続いた。


────


「で、ギルドで雇われたと?」


「そうです。司祭様。」


肉料理をパクつく獣人2人。


「夕方、ギルドにクエスト失敗の報告に

 行ったんです。」


「俺らは討伐系のクエストを

 良く受けてたんですが、

 ここ何回か失敗が続いていて。」


 ガツガツガツ


「落ち着け。

 ゆっくり食べてから話せ。」


ジイサンはエールを勧めて落ち着かせる。


「あれ?司祭様だったの?」


横にいるジイサンに小さく聞いてみる。


「そもそも信者自体は少なかったからな。

 司祭と言っても過言ではない。」


「勝手に名乗ってるのね。」


「続き良いですかね?」


「あ。ドウゾドウゾ。」


話が進まないから、

大人しくエールを飲んどく。


「クエストの報告したあと、

 さっきのカイトシールドの男に

 誘われたんです。

 クエスト失敗したから金がないだろ?

 今から稼げる簡単なクエストを

 やらないかと。」


と、言ってまた肉を口に運ぶ。

獣人って歯が、トガってるんだな。

きっとここからじゃ見えないけど、

尻尾もブンブン振ってるんだろう


「そりゃ。闇営業だろ?

 ギルドから直接クエストを

 受け取ってないじゃないか。」


ジイサンに言われて気付く。


「でも仕方なかったんだ。

 このところクエスト失敗続きで、

 実入りがなかったから、

 しばらくマトモにゃ食って無かったし。」


「武器を構えて立っているだけの

 簡単なおシゴトだって言われて。」


「それで強盗の片棒か。

 幾らで雇われたんだ?」


「2人で銅貨1。」


「銅貨かー。」


ジイサンがオデコに手を当てて上を向く。


「いくらなんでも安過ぎやしないか?」


「獣人にしちゃ高い方です。

 内容は強盗だったけど。」


「そんなんじゃ

 ここでメシなんか食えなかっただろうに。」


「はぁ。

 司祭様たちを外で待っている間、

 匂いで倒れるかと思いましたよ。」


「飢えた獣人は狂暴になると

 聞いたことがあるが・・・?」


「俺らもそう聞いてますが、

 何事にも例外ってのがあるみたいですね。」


和やかに怖い話をしてるんじゃないか?

実はこれは演技で肉料理を食べたら、

オマエ モ マルカジリ

とか言わないよね?


「じゃあ、腹が一杯になったら、

 ワシらを襲うかの?」


「さすがに恩人にはそんなことしませんよ。

 獣人は義理堅いんです。」


「アッサリ食べ物で釣られたじゃないか。」


「そこは言いっこなしですぜ。」


なぜ下っぱ口調?

食べ物でまた裏切るぜってこと?!


「まぁいいさ。

 我が神の教えは、

 "まずは(おの)が自身満たされよ。"

 だからな。

 飢えてるヤツは見過ごせないのさ。」


「なんて素晴らしい教えなんですか!」


「飢えのない世界!尊い。」


など、相槌を打つ獣人たち。

簡単になつき過ぎだろう。


・・・と、ここでふと思う。

これ、スキルかなんかじゃないか?

煽動とか、詐欺とかそう言う。


コイツらも大概たが、オレも

ジイサンのこと簡単に信じ過ぎだろ。


と、考えると少しジイサンが怖くなる。

もしかしてこのスキルのせいで、

あの街を追われたんでは?

異教徒が急激に信徒を増やそうとして・・・。


「で、お前さん方はこれからどうする?」


「今まで通り討伐系のクエスト続けます。

 クエストのランクは落としますが。」


「そうか。この辺りは獣人には()(にく)かろう。

 どうだ?一緒にウルワンに来ぬか?」


「いえ。先立つものがありませんし、

 もう少しここで頑張ってみます。」


「そうか。残念だのぅ。

 もし、機会があれば、

 ウルワンのワシのところに尋ねて来い。

 メシくらいはおごってやる。」


「ありがとうございます。司祭様。

 ここで区切りがつきましたら、必ず」


────


食堂を出るオレら。

食事代は全てジイサン持ちだ。

どこに金を持っていたのかと思えば、

道具箱(アイテムボックス)だ。

それほど広くないと言っていたが、

実際どうなんだろう。


獣人の2人は宿まで送ってくれた。

襲撃はないかもしれないし、

お二人で大丈夫だろうと言ってはいたが。


────


宿に戻った。

水で絞った手ぬぐいで身体を拭いて

ベッドにもぐり込む。


ジイサンはもう寝てるのか、

寝息が聞こえる。

早いな。


オレはギルドカードをオデコに当てて

自分のステータスを確認する。


------

 名前:アータル

 職業:素人(ノービス)

 所属:無所属

 別名:"腰ミノ"

スタイル:近接、物理

 許容量:24

・・・・・・

 ユニークスキル:"蛮族の好奇心"(★14)

 スキル:

 ・剣術の心得:C-(★2)

 ・鑑定:C-(★5)

 ・劣化光魔法の初歩:C-(★1)

----


スキルは増えてない。

用語説明:

・棍棒

ここでは、長い棒に金属を巻き付けた"棍"のようなもの。


・獣人

ここらでは迫害の対象にもなるみたい。


・司祭

ここではその宗派の高位の役職

宗派によっては独特の名前が付いている。


・闇営業

冒険者ギルドを通さず、クエストを受けること。

一切の保証はない。


・簡単なおシゴト

何を持って簡単かが書いてないことが多い。

その簡単は遣う側にとって簡単なことかもしれない。


・ウルワン

この旅の目的地


道具箱(アイテムボックス)

人によって大きさは違うが、自由に取り出ししまうことができる空間を作り出す。

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