01-40.レトロプロスペクティブ
今後ともよろしくお願い致します。
オレは2日間、ダンジョンの中をさまよった。
やっぱり方向音痴を直さねば。
サラの書いた印を見つけた時、
思わず小躍りしたが、
見つけても簡単には帰れなかった。
食料は何とかなったが、
道に迷って迷って・・・。
最後は冒険者のパーティーに
コッソリ付いていくことで、
出口にたどり着いた。
死ぬかと思った。
オレ的三大こんな死に方は嫌だランキングで
堂々の一位を更新した。
そして、不安が積もるごとに
サラやガインの死を思い出した。
どこで選択肢を間違ったのか。
他に選択肢がなかったのか。
石杭のおかげで、ほんのり明るい
ダンジョンの中、
気持ちも明るくなるわけもなく、
暗い気持ちで過ごした。
ダンジョンの外に出た時は、
辺りは夕方だった。
早速、管理者のテントに行く。
さすがに迷わない。
(他のパーティーの後ろを付いていくので)
報告は、3つのうち真ん中のテントの中で
行うらしい。
列になってる。
テントの中の話は
特に秘密になってないみたいで
「はい。合格!」
とか、外にも声が聞こえる。
テントから数人の男女が出てきて、
すぐ前のパーティーが入れ替りで
入ってく。
オレは聞き耳を立てる。
「オレらがダンジョン内で見付けたのは
これです!」
「何だ。何もないじゃないか。」
「私たちが見付けたのは、
団結する心、負けない心の大切さです!」
「オレたちはダンジョンの中で
様々な困難に立ち向かって」
「それをパーティーの力で
解決したのです!」
「そう!
冒険者に必要なのは協力する力!」
「そう!
愛なのです!!」
「不合格!」
前のパーティーが出てくる。
「なんでダメなんだ!」
「私たちの熱い気持ちが通じるところを
探しましょう!」
「そうだ!そこが冒険者の理想郷!」
「オレたちの冒険はまだ・・・」
入れ替りでテントに入る。
テントの中には一人の男が
イスに座ってうなだれていた。
「オレも歌で表現しましょうか?」
「いや。止めてくれ。
普通にブツを見せてくれ。」
オレはロットンから奪った首飾りを渡す。
男はそれを受け取り、虫眼鏡で見始める。
「ふむ。これは・・・。
お前一人か?」
「はい。」
「そうか。お前がアールウッドのところの
小倅か。
聞いていたのと違うが、まぁ合格だ。
ギルドカードを出せ。」
オレは左の手の甲に仕込んだ
ギルドカードを取り出す。
男がカードにスタンプを押す。
ここだけアナログだな。
それを持ってテントを後にする。
まだ列は続いている。
これからどうすれば良いのだろう。
ツェルトさんがいたので、
亡くなったメンバーについてどうなるか、
遺品を渡せるかを聞いた。
「名簿があるので、
そっちで報告してくれ」
これがタライ・マワシか!
────
別にオレが今、こんな感じなのは、
サラやガインのことを忘れた訳でもない。
今でも、ロットンを殺ったのも、
黒装束を殺ったのも後悔してない。
ダンジョンの中で繰り返し繰り返し
考えた結果だ。
いくら考えても、
サラやガインだけでなく、ロットンや黒装束も
生き返えらないと割り切ったんだ。
割り切るって、考えないようにするって
ことだけど、悪いことじゃないと思うようにした。
フタをする感じ。
砂を掛ける感じ。
後で出てくるかもしれないけど、
とりあえず今生きるためにこのままにしよう。
なので、たらい回しを受け入れて、
とっとと遺品整理をしよう。
リストを持っているオッサンに
サラが死んだこと。
ギルドカード、首飾りを渡す。
サラを競り落としたギルドに、
せめて足しになればと思ったんだ。
リストを持ってるオッサンは、
首飾りを見て、ツェルトさんを連れてきた。
「もう一度名前を聞こうか?」
「西風のサラだ。」
「いや。お前の名前だ。」
「白梟に競り落とされたアータルです。」
「確かお前のパーティーには、
アールウッド家の次男のロットン卿が
いたはずだよな?」
「はい。死にました。」
「何だと?」
何だか雲行きが怪しい。
一気に悪い怖い顔になったぞ。
さすがに色々騙されてきて、
気付いたことがある。
正直に話しても良いが、
全てを話さなくても良い。
「爆発に巻き込まれて・・・
罠に掛かってアッサリと。」
「確かお前のパーティーには、
僧侶見習いもいたはずだよな。」
「真っ先に死にました。」
「斥候はどうした?」
「罠 (にはめられたの)に気付いて・・・
何とかしようと(=逃げようと)
したのですが・・・。」
「まさか・・・そんなことが・・・
なぜ、お前は生き残ってる?」
「斥候のサラがオレを
逃がしてくれて・・・。」
「そうか・・・。
だが、とても困ったことになってしまった。
いや、お前が悪い訳ではないのだが・・・」
ツェルト("さん"はもう良いだろう。)は
何かを考えている。
オレは、ますます自分が
危うい立場に追いやられていることを感じる。
「アータルくんと言ったね。
私と取引しないか?」
キター(゜∀゜ 三 ゜∀゜)
オレもロットンに対して使って、
全く通じなかったヤツ!!
などとはなるべく顔に出さず、
「取引・・・?」
と、不安げな顔をして見せる。
図太くなったもんだぜ!
「なぁに。ここからちょっと行った街に
隣の中核都市"ウルワン"への
長距離馬車が出ている。
そこのギルドへ手紙を持っていって
もらいたい。」
「手紙?」
「少々待たれよ。
すぐ持ってくる。」
ツェルトはテントに入っていく。
何かもう、とってつけた感じがプンプンだ。
いや。待てよ。
純粋に信じてみよう。
お前は幾多の困難から、
唯一残った優秀な冒険者だ。
だから、お前に重要な手紙の運搬を任す。
街には帰らず、すぐ行ってくれ!
・・・うぅ。無理だ。
ごめん。オレは汚れちまったよ。
そんなの信じられないよぅ!
だが、断っても確実に殺されるな。
ツェルトのテントの中から一人出ていった。
きっと万が一の場合、何とかするための
人数を集めに行ったんだろうなぁ。
一方、目の前の、ツェルトを呼びに行った、
リスト係の人はニコニコしてる。
早々に仕事を受けるなんて優秀だねぇ
と言いたげだ。大丈夫なのか?
単に首飾りを出されたら、
ツェルトに連絡しろって感じだったのかな?
いや。今のうちに。
「それ。西風に必ず届けてくださいね。」
「首飾りは、ツェルトさんの
大切なものと聞いているので無理ですが、
ギルドカードは届けます。」
「ありがとうございます。
ちなみに"ウルワン"って
どんなところですか?」
「ウルワンは、そうさねぇ。
ウチの街に比べたらデッケェ街だ。
仕事もたっぷりあるし、
人もたくさんいる。
食いもんは旨いし、申し分ない。」
「なるほど。」
「アンタも向こうで羽を伸ばして来たらえぇ。
たぶん、ツェルトさんからの
ご褒美じゃけぇえ。」
えぇ。そうですね。
ご褒美(物理)だと思います。
このままだとスッゴくマズいなぁ。。。
逃げられないかなぁ。。。
そうこうしているうちに
ツェルトが手紙をもって現れる。
そしてこっちに向かって
何人かが歩いて来るのが見える。
断ったら囲まれて殺られるな・・・
無関係な人も巻き込むしな・・・。
受けるしかなさそうだな。
どう考えてもここでやられるのは、
詰みそうだ。
「待たせたな。
では、こちらを向こうのギルドの
担当者に渡してくれ。」
手紙を渡して来る。
麻ヒモで縛ってあって、
板で挟んであるだけ。
何か本当に重要な手紙なのか
って疑うレベル。
開けられちゃうじゃん!
担当者って誰か聞いてないし、
書いてもないけど・・・。
「分かりましたー!」
と、笑顔で応じる。
敵意はないですよー。
純粋ですよー。
手配してくれた馬で、
ウルワンへの長距離馬車が出てる街に
ギルド員が送ってくれる。
手厚過ぎて怖い。
さすがにギルド員には
殺られないとは思うけど、
変なところに案内されないかは
見張っておかないと。
案内するギルド員にも、手紙が渡される。
「ついでに街のギルドに手紙を渡してくれ。
急ぎで頼む。」
オレは馬に乗る。
ギルド員に抱えられて。
馬、練習しないとな・・・
すぐ魔物とかに食べられちゃうから
ナカナカ手に入らないんだよな。。。
「では、行ってきます!」
ギルド員の明るい声で出発する。
オレの命を掛けた冒険はここからだ!
用語説明:
・オレ的三大こんな死に方は嫌だランキング
アータルは、自分の無力感を感じる死に方に特に忌避感を抱いているようだ。
・テント
一個減ってる。
収容人数が減ったから。
・冒険者の理想郷
決して辿り着くことはない・・・
・スタンプ
ギルドカードにスタンプを押すと、
スタンプに従った処理がされる。
スタンプ自体にはインクなど必要ない。
・タライ・マワシ(たらい回し)
きっと事務作業がこの世に生まれてから存在する伝統芸能
・ツェルト
アールウッド家と繋がりがありそうだが、
本編では語られることはなさそう。
・手紙
本来、中を見られる恐れがあるような手紙は、
封蝋などして開けてないことを保証する。
だが、ツェルトはアータルが文字を読めることも確認せず、手紙の常識も知らないだろうと雑に扱った。慌てていたのか?
・馬
騎乗できる動物の中で一番飼育しやすく、
気性もわりとおとなしいので、いろんな所で使われている。




