01-37.振り返り
いつもありがとうございます。
間が空いてしまい、ごめんなさい。
2日目(残り約2日)
一日あんな感じで
ロットン坊っちゃんの声を聞かされて、
みんなイライラ、ビリピリしている。
「何で引き返すんだよ。
リーダーはオレだぞ。」
ロットン坊っちゃんが何か言ってるが、
オレたち3人は、出口に向かって歩いている。
さすがにガインも、
「回復力弱くねぇ?
信仰心が足りねぇんだよ。」
って言われてからは、
心ここにあらずって感じだ。
信仰心を問われるって僧侶としては
どんな気持ちなんだろう。
サラはダンジョンの中を迷わず進んでいる。
スゴいな。ホントに覚えているんだ。
今はフラフラ歩いているガインも、
決して問題あるわけではない。
手堅く回復や補助をしてくれている。
そもそも、ロットン以外は問題ないんだ。
ロットンだけが、噛み合わない。
だって、敵が怯んだと見ると、
剣を振りかぶって、とどめを刺しに来るんだ。
左腕にラウンドシールドつけた状態で、
両手で剣を持って、大振りするんだぞ。
お前が手に持ってるのは、鈍器か?鈍器なのか?
剣が泣いてるぞ。
お前には剣なんかもったいない。
棍棒で十分だ。
で、その大振りが当たれば、
"ほら、こうやってやるんだ"と、
誇らしげにマウントを取って来やがる。
さっきは、ネズミにカウンターを食らって吹っ飛び、
横の壁に叩きつけられて、
ガインの回復魔法のお世話になったのに、
ガインには、あの一言だ。
どんな戦い方だよ。
剣を知らない蛮族か!!
こんな戦い方をしなけりゃ、
ガインに負担が掛からず、
もっとダンジョンの奥まで行けたんだよ。
「なんだお前ら、
ホントにだらしねぇのな。
オレはまだまだピンピンしてるのに。」
そりゃあんだけ回復魔法ねだれば、
死人でも生き返るっつーの。
しかし、オレもサラも、
もう言う気力も尽き、
ガインも無駄な精神力とイビリで、
探索継続が不可能になった訳だ。
イライラしてくる。
どうにかコイツだけダンジョンの中に
置き去りにできないかなぁ。
などと考えてしまうほど、
オレは荒んでいた。
二人は・・・ガインはダメそうだな。
サラは大丈夫だろうか。
────
遠くの方で金属のぶつかり合う音が聞こえる。
ちょっと鉄っぽい、血の臭いもしてくる。
サラが止まるように、ハンドサインを出す。
オレたちは、その場で止まり、息を殺す。
どうやら、大きさからして人間同士が争っているみたい。
ガキンッ
火花が飛んで、一瞬、辺りが少しだけ明るくなる。
石杭の間接照明に照らされて、とても幻想的だ。
戦っている人たちの顔はここからじゃ見えない。
ガキンッ
どうやら実際に争ってるのは二人だけみたい。
冒険者だよな。
パーティーで来てると思うけど、
他のメンバーは遠巻きに見てるのかな?
周りには、他のメンバーは見えなかった。
正義感があるやつは、
ここで仲裁に入ると思うのだが、
生憎持ち合わせていない。
いや、普段は持ってたかもしれないけど、
今はそんな精神状態じゃない。
一刻も早くダンジョンから出て、
ロットン坊っちゃんの嫌味から解放されたい。
ガキンッ
そんなことを考えている間も
戦いは続いている。
「おい。決着がついたら、
生き残った方を殺るぞ。」
またロットン坊っちゃんが
余計なことを言い始める。
ガインが何か言いたかったみたいだけど、
あきらめたみたい。
サラはため息をついて、
来た道を引き返そうとする。
「おい!ちっこいの。
聞こえてるか?
生き残った方を囲んで殺るって
言ってるんだよ。」
腕を握って行かせないようにする。
「オマエだけでやれ。」
サラは腕を振りほどくと、
スタスタ行ってしまう。
オレもガインをうながして、あとに続く。
「おい!お前ら!
オレがリーダーだぞ!
オレの言うことを聞かないと、
絶対に失敗するぞ!!」
何か言っている。
このまま置いていこう。
ホントに。
ある程度行くと、派手な足音を立てて
追ってきた。
「オマエら、後悔するぞ。
オレを置いてったこと、
絶対後悔させてやる。」
何かブツブツ言ってるが、放置だ。
別の道を通り、ダンジョンの出口に出た。
テントはそのままだった。
他のパーティーのテントは、
倒れてたりするのに。
立てた場所が良かったのも
あったかもしれないが、
ガインのやり方が、良かったんだろうな。
ガインを見る。
少し下を向いてフラフラしている。
だいぶ疲労がたまっているな・・・。
魔法を使ったりや武器で攻撃すると疲れる。
当たり前だな。
だが、この世界をゲームだと思ってると
こんな当たり前のことも見落としてしまう。
魔法を使ってどのくらい疲れるかとか、
攻撃をしてどのくらい疲れるかとか、
嫌味を言われてどれだけ(精神的に)疲れるかとかは、
その人自身の能力や考え方によって違う。
そして、疲労がたまり過ぎると
過労死してしまう。
現実はもっと複雑なんだ。
ゲームとかだと魔法やスキルごとに
消費ポイント数が決まってて、
その人が持ってるポイント以上は使えない。
そしてポイントがゼロになっても元気に剣を振り回せる。
そりゃそうだ。ゲームだもの。
現実世界の一部を数値化して使ってるんだもの。
逆に現実世界の全ての現象を再現してしまったら、面倒臭くて楽しめなくなっちゃうだろう。
現実は、面倒臭い。
嫌になったからって、
アカウントを消してリセットするとか、
そんなことできるわけもない。
オレらは、ロットンからは逃げられない。
────
夕飯もそこそこ、テントに入る。
ロットンも、何だかんだ言いながら、
飯を食ってどこかに行ってしまった。
オレら3人はは見張りを立てて
休むことにした。
オレは、かまどから少し離れた場所に座って、
辺りをぼんやりと見る。
昨日の騒がしさもなく、
多くのパーティーは、
テント村には戻ってきてないようだ。
奥に進むために
そのままダンジョンの中で一夜を明かすのか、
もう既にダンジョンに飲み込まれてしまったのか
今の時点ではわからない。
明日からどうやってやっていこうかとかは、
明日ダンジョンに行く前にもう一度話そうと、
満場一致で決まった。
(ロットンは知らないが)みんな疲れているのは
目に見えて分かった。
パチパチとあいかわらず薪がはぜる。
火の粉がゆっくりと空に登り、
そして消える。
今の現状では、
明後日の日没までに
"何か価値があるもの"を持っていかないと
不合格だ。
また暫く修行の日々になる。
それで白梟の皆には
迷惑を掛けることになるのかな・・・。
・・・そんなこともないのか。
ホスは当たったら儲け物みたいな感覚だったし、
ロゥも特段オレに期待はしてなかった。
ギンたちは・・・
オレが合格しなくて残念
くらいは思ってくれるかな?
でも、オレが合格しないことで
ギンたちに迷惑が掛かることはないと思う。
周りに気兼ねせずにやるだけやってやる。
そもそも、どうしてたら良かったんだろうな。
"取り戻せない過去のことにこだわるな"
って、バル姐さんに言われた気がする。
でも、考えちゃうよな。
自分がリーダーになっていれば、
こうはならなかったかな?
どちらにしても、言うことを聞かない
ロットンをどうにかしようと、
揉めに揉めていただろう。
サラやガインがなっても同じだ。
ロットンではなく、別の冒険者だったら?
そんなことを考えてしまう。
意味のないことだと分かってる。
けど、止められない。
そして生前は、そんな感じで
ありえない仮定の話を考えて現実逃避して、
我慢した・・・と、言うか
何もしなかった。
今は何かできるか?
自分の身一つだし。
失敗したらやり直せるかもしれない。
どうせ死んじゃうなら、
何かをしてから死んだ方がマシだ。
生前の間違いを繰り返して後悔したくない!
用語説明:
・魔法
この世界の魔法は、強い力を持ったモノから
力を借り受けることで発現する。
信仰心で借りられる力が増えるかは謎。
・ラウンドシールド
円形の盾。身体の半分くらい。
ここでは、取り回しできるよう上半身の一部を守る小型のもの。
・ハンドサイン
先に行け、止まれ、静かに。など。
・剣
刃を立てないと、切れない。
刃を立てて切るためには、訓練が必要。




