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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
転機
41/272

01-35.準備

テントに入って、これからのことを考える。

今はロットン坊っちゃんが、

見張り番をしている。

途中で起こされたくないと言う理由で、

自分の担当だけ勝手に決めやがった。

付き合ってられないので、

勝手にやってもらう。


オレはオレのことをまずしよう。

鑑定についてだ。


────


ある日のこと。


ロゥのところを尋ねた。

スキルの相談だ。


ロゥが鑑定スキルを持っているのは、

限られた団員だけしか知らない。


なぜオレには知らせたのか、

気になっていたのだ。


コンコン


「誰だ?」


「アータルです。」


「・・・入れ。」


扉を開くと、ロゥは本を読んでいた。

意外。

もう、明らかにその筋の人の外見なのに。

部屋を見回すと、本棚に本がたくさん。

意外。


「なんだ。アータル。用か?」


こっちを向いて笑う。余計に怖い。


「鑑定について教えてください。」


「珍しいな。」


「なぜオレに()()

 鑑定の話をしたんですか?団長(ホス)は。」


なんでこんなことを知っているかと言うと、

ここ数年、白梟(ホワイトオウル)は、

オークション(って言う建前の人身売買)には、

参加してなかったそうだ。

その前は、競り落とした新人をことごとく

追い出している。


新しく入ってきたメンバーには、

団長(ホス)は、何も話してなかった。


オレだけ、ロゥの秘密を聞いたように思える。


「そりゃ、お前が鑑定持ちだからだ。」


「へ?」


「ギルドカード、

 スキルの欄、隠してなかっただろ?」


確かに元気なお姉さん受付嬢に聞くまで、

スキルが隠せるなんて知らなかった。


「賭けだ。

 お前がどういう反応するか・・・な。」


「もし、オレが間違った反応してたr・・」


「埋めてた。」


良い笑顔で言い切った!

食い気味で言ったし。

怖い。本職って怖い。


「正直、オヤジの道楽だ。

 オレはオマエがどこで野垂れ死のうと

 気にしないんだがな。」


威圧感がスゴい。


でも、ここで引き下がると、

単なる興味本意で聞きに来ただけになる。


「ロゥ、鑑定スキルについて

 教えてくれ。」


オレは頭を下げて頼む。


「首元を簡単に晒すな。

 落とされるぞ。」


ロゥはそう言い、

ちゃんとこっちに向き直る。


「何が知りたいんだ。」


オレは鑑定スキルを使うと、

対象や周りが気付くのかを聞く。


「俺の場合は気付かれたことはないな。

 アータルもオレが鑑定を使ったの、

 気付かなかっただろう??」


確かに。

でも、あの時は舞い上がっていて、

良く覚えてない。


オークションとか、

他に気を取られたときは

気付かれないのかもしれない。


「それに俺のは、

 有用か否かしかわからない。

 そう言う意味で

 他のヤツらは気付かないのかもしれない。」


なるほど。

そうすると・・・。


「一度オレの鑑定スキル

 受けてもらえませんか?」


「まぁ。いいが、

 害はないんだろうな?」


害?!

そんなこと考えたこともなかった。

鑑定で人を傷つけるとかできるの??


あ。でも、あの鑑定士様は

オレの心に深く刻み込まれています。

黒いローブから出たおみ足と共に。


「以前、バギをこっそり鑑定したら

 バレたみたい。」


「分かった。範囲から確認しよう。」


そう言って、さっきまで読んでいた本を

閉じて前に突き出す。


「これ、鑑定してみろ。」


オレは言われるがまま、鑑定する。


──────────

古めかしい本

タイトルは、「金の流動性の考察」

残念ながら、タイトルからして

官能小説の類いでは無さそうだ。

──────────


「終わったか?」


「おわりました。」


「まず、俺は何も感じなかった。

 こんな近くであっても。」


「魔法職じゃないからじゃ・・・」


「俺は魔法使い(ウィザード)だぞ。」


マジで?!

信じられない。

オレをギルドホールの反対側に放り投げた

筋肉バカが、魔法職の、

それもバギよりも上位の魔法使い(ウィザード)なんて・・・


「信じてないな。

 バギに基本魔法を教えたのも俺だ。」


あ。それは納得だわ。

あんな狂犬に育った理由が

一瞬にして分かった。


「本には変化が無いようだな。

 次は俺に直接掛けてみろ。」


少し落ち着けオレ。

呼吸を落ち着け、ロゥに鑑定を掛ける。


────────

 Name:ロゥ

 class:魔法使い(ウィザード)

 clique:白梟(ホワイトオウル)

 role:渉外担当

***:***、******

・・・・・・

 ****:****

 *****:****

 *****:****

 *****:****

 バギに魔法の基礎を教える。

・・・・


「確かに違和感を感じるな。」


ロゥは静かに言う。

「だが、それほど気にしなくて大丈夫だ。

 お前に注目してなければ、

 魔法使いでも検知できるものは、

 少ないだろう。」


「それって、隠れて後ろから使えば

 ほぼ気付かれないってこと?」


「ま。そうだな。

 お前の鑑定は、物にも使えるようだし。

 そう言う類いのモノかもしれない」


あぁ。やっちまった。


"これ、鑑定してみろ"


あれ、罠だったのか・・・。

普通は、物を鑑定するスキルと

人を鑑定するスキルと違うのかもしれない。


「やっと気づいたようだな。

 スキルは知ってるヤツからすると、

 少しの情報があれば、推測が利く。」


なんてことだ!

この見た目、堅気じゃないロゥに

してやられた!!


「ま。俺で良かったな。

 聞きたいことはそれだけか?」


とりあえず範囲は分かったし、

どうすれば気付くかも分かったので、

退散した。


背中は汗びっちょりだった。


────


鑑定スキルについて、分かっていることは、

1)魔法使い系職業(クラス)には、

 こちらを気にされてると、気付かれる。


2)人も物も鑑定できるのは、

 鑑定スキルとしては稀。


3)むやみやたらに鑑定すると、

 自身に危険が及ぶ。


今、やりたいのは、

ロットン坊っちゃんの鑑定だ。

たぶん、パーティーメンバー全員を鑑定した方が良いけど、まずは坊っちゃんからだ。


念には念を入れて、

交代でテントに入ったところで鑑定だな。


寝てる間にやっても良いが、

それだとオレの練習にならない。


後ろ姿にオレの渾身の"鑑定"を

叩き込んでやる!!


スヤ~


「おい!黒髪!起きろ!交代だ!」


あっぶな。

完璧寝落ちしていた。


考えながら寝ると、良く眠れるんだよなー。

頭をボリボリかきながら、外にでる。

代わりに坊っちゃんが入ろうとするので、

"鑑定"をホイッと。


──────────

 Name:ロットン=アールウッド

 class:無職(ノービス)

 clique:****

 別名:自称"剣士"

***:***、******

・・・・・・

 *****:****

 *****:****

 *****:****

 *****:****

初心者講習会で、やたらとオレ出来るぜ自慢をしていたヤツ。

・・・・

──────────


アイツか!

顔を覚えとこうって思っていたけど、

すっかり忘れてた。

"鑑定"して良かった。


アイツかぁー。

関り合いになりたくなかったんだよなー。

なんなんだよ。

何のフラグを回収してんだよオレは。

要らないわー。


もっとあるだろ?

きゃっはウフフなイベントが!


なんなんだよ!!

もっと仕事しろ!

オレの蛮族のこうきしーん!!

もっといいイベント起こしてくれー!!


───


嘆きと共に夜は更けていく。

特に変わったことも無く、

見張りをサラに交代した。

用語説明:

・蛮族の好奇心

「うむ。良かろう。」


・ロゥ

白梟(ホワイトオウル)の渉外担当。

外見はカタギには見えない、むくつけき男。

しかし、職業(クラス)は、魔法使い(ウィザード)


・黒髪

ロットン坊っちゃんの言うところの、

アータルのこと。


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