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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
旅立ち
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01-02.初クエスト開始!

妄想回です。

お嫌いな方、飛ばしてお進みください。

西門から外に出る。

時刻はお昼過ぎだ。


昼飯は、

荷馬車に載せてもらった

オバチャンにもらった、

あの保存食。

固い棒状のパンだ。


前世でお世話になった

あのカロリー的なバーに

なんとなく似てるが、

固いし、でかいし、美味くはない。


味がほとんどしないのは

この世界に調味料が少ないせいかなー。

塩はあるけど、高けぇーし。


この街に向かうときから、

死ぬほど食ったカロリー的なバーを

口に含んで柔らかくして食べる。


地獄に居たときより全然マシなんだが、

それでもウマいもんを食いたいよなぁ。


よし。アルドアをたくさん集めて、

今日は美味いもんを食おう。


人の良さそうなおっちゃんにもらった

カゴ?編み目の粗い麻袋?

みたいなのを背負い直す。


颯爽とギルドから出ようとしたら、

呼び止められて持たされた。

確かにこれがあった方が楽に決まってる。

 

西門は東門と比べて人が まばらだった。

東門と違って、荷馬車を引いてるヤツなんか

一人もいない。


門の横に立ってる兵士のオッチャンたちは、

東門の悪徳門番と違って、

門の内側なんか見ちゃいない。

西門から延びる道の先を怖い顔で見てる。


手をおでこに当ててちょっと目を凝らすと、

向こうの方に森の先っちょが見える。

あそこから魔物が出たりするのかなぁ。

まぁ。こっち側は人よりも

魔物の方に殺される確率が高そうだもんな。

おとりに使えそうなモノも少ないし。


そんなこと考えながら、

かったいパンをかじり、

足元を探す。


革のブーツで草をかき分けたりしてるんだけど、

全然ない。

アルドアなんて結構そこらじゅうに生えてる草の

はずなんだけどなー。


地元じゃ塀の割れ目から芽を出してたりしてた。

タンポポみたいな黄色い花が咲く。

葉っぱもあんな感じでギザギザだ。

アルドアってホントはタンポポなんじゃね?

 

すぐ見つかると思ってたが、全然見つからない。

門の近くの草むらには全然ないようだ。


ちぇっ。なんだよー。

全然ねーじゃねーか。


パンを食い終わって結構真剣に探してるんだが、

全然見当たらない。

 

門から随分遠くに来てしまった。

門のところでは遠くに見えていた森の、

すぐそばまでだ。


街道沿いを探したが、全く見つからない。

仕方ないので地面から生えてる

デカイ葉っぱを押し分けて、

少しずつ森の方に入っていく。

昼なのに森の中は ほの暗い。

  

お!あったあった。あるじゃねーか!

お。こんなとこにも。ここは結構あるな。

こんなとこに生えんのかー。

光があんまり当たらなそうなのになぁ。


結構根っこは長いが、

葉っぱを全部持って

それなりに力を入れて引き抜くと、

面白いようにきれいに抜ける。


抜いたアルドアを軽く振って土を落とし、

肩にさげた麻袋の口を開け、ゆっくりと入れる。


まずは一本目。

これはアレじゃない?

結構時間かかるんじゃない?

2本目に手を伸ばし引っこ抜く。

 

と、陰から何かが飛び出してきた!

ちっちゃいオッサンみたいなヤツ。

布っぽい何かを腰に巻きつけてる。

ゴブリンってヤツだ。

 

 シュッ!

 

有無を言わさず首を刈る。

さすがに何年もこの世界にいれば、

このくらいもう慣れっこだ。

腰に差していた剣は

もう腕の一部のようなもんだし。


ほとんど無意識に剣を抜いて、

切ることが出来る。


固まったままのゴブリンの腹に

ヤクザキックをくらわせて後ろに倒す。


茂みに倒れるゴブリンを見て、

オレは思った。


イケんじゃん。オレ。

全然イケてるじゃん。オレ。

冒険者よゆーじゃん。超よゆー。


元々、剣術は地元で親父や兄貴に習ってたし。


でっかいイノシシみたいなのを狩るのも

無理矢理参加させられてたし。


城壁付近に湧いてたゴブリンとかも、

兄貴たちと一緒に倒してたし。


そこらの初級者よりはオレ、

全然冒険者じゃねーか?


ってか、ギルドカードもらったから、

もう 冒険者だし?


つーか。初心者ってゆーよりは、

もう中級者くらいなんじゃねーの?

森にいるゴブリンを

こんなに手際よく片付けられるってことはさ。


いきなり中級とか、

スゲーことになるんじゃねー?


期待の新人現れる!みたいなことになちゃって

ギルドでモテモテになっちゃうかなー?


あの受付のオネーサンみたいな、

けしからん人が他にもいるとして・・・


おっとっと。そうだそうだ。

倒した証拠みてーの必要じゃなかったかなー?

 

茂みに転がってるソレから耳を切り取り、

腰に下げている革袋に入れる。

 

確か兄貴がゴブリンの討伐証明は

耳って言ってた。


あとはいいだろう。

重いし、出来れば触りたくないしな。

 

剣についた汚れを拭って

アルドア探しを再開する。


お。結構この辺はあるなー。


アルドアを根っこごと、

ごぼっと引抜き、少し土を落とす。


花がないと見た目は、

その辺の草とあんまり

区別がつかないんだけど、

馴れてくるとなんとなく、

遠目でも分かるんもんだなー。

15本目。袋も結構重くなってきた。


でも楽勝だな。

出てくるヤツらと言えば、

さっきのと同じゴブリンが一匹くらいで、

全然見かけない。


ま。薬草取りなんてこんなもんだろ。

登録したての初心者でも受けられるんだから。


次は討伐クエスト受けよっかなー。

ゴブリンくれー5,6匹くらい、

よゆーでいけっだろー。


夢が広がるなー。

何せ中級冒険者だもんなー。


世間じゃどこかのダンジョンで

スゲー武器を手に入れたヤツもいるらしい。


いいなぁ!そんな一攫千金!

まぁ今のオレなら行けるかな。


20本目を引き抜いて、一度帰ることにした。


討伐クエストの方がぜってー稼げるし。

こんなことしている時間と体力が

もったいねーし。

もっとスゲーことしなきゃ損だぜ!

 

森の出口を目指す。

そんなには奥に入ってないつもりだったが、

木々に遮られて、陽の光はだいぶ弱い。

そんな中、光が差し込んでいる方を目指して進む。

 

帰ったらどうしようかなー。

まずはとりあえずアルドアを渡して、

さっさとクエスト終わらせよう。


ギルドに行って、

登録の時のけしからんオネーサン以外の

かわいいオネーサンに声を掛けてみよっかなー。


あのけしからんオネーサンでもいいけど、

やる気なさそうだったしなー。

できれば真面目でけしからんコがいいな。

で、アルドアを渡すと、大げさに喜んでくれるの。

 

「あれ?アルドアをもう集め終わったんですか?!

 それもこんなに。優秀ですね!」


とかキラキラした目で言われちゃってさ。

オレは華麗に報酬を受け取って、

スッとさりげなく革袋を出してこう言うんだ。


「あ。忘れてた。

 ゴブリン狩ったんだけど、

 討伐報酬っていくらになります?」


みたいな。


「あ。これ何か途中で仕留めたんですけどー

 何だか分かります?」


って感じもいいかなー?


で、で、真面目でけしからんお姉さんが

ちょっと驚いた顔して


「えー!?これはゴブリンの耳!?

 確かアータルさんは、今日初めて

 冒険者登録したはずでしたよね?

 それなのにゴブリンなんて()()

 仕留めてきたんですかー!?

 これはホントに将来有望ですねー!

 早速ギルドマスターに報告しなければ!」


とか何とか言ちゃってさー。

 

きっとギルドの奥から、

ギルドマスターとか

出てきちゃったりするよなー。

そこで


「いやいや。

 たかがゴブリンでそんなに

 大騒ぎしないでくださいよ。」


とか謙遜できる大人の貫禄

みたいなのを出したりなんかして。

 

「キャーなにその

 熟練冒険者にも負けない心の余裕!

 カッコいい!!ステキ!抱いてー!」


とかなっちゃうんだろうなー。


やっぱオレすごいんじゃない?

初日にして将来を約束された冒険者

とかになっちゃうんじゃない?

やべー生まれ変わって良かったー。

 

と、妄想に耽っている間に、

開けた場所に出た。

 

 トスッ

 

と同時に頭に強い衝撃を受ける。

「あれ?」間抜けな声が出る。

 

周りがスローモーションに流れる。

 

どさりと目の前に草が見える。

でも真っ赤だ。

 

ほっぺたが地面にくっついてる。

 

手は肩に掛けた麻袋の紐に

かけたまんまだ。

 

「なんだこりゃ。」


と言おうとしたが声は出なかった。

用語説明:

・かったいパン

カロリーの友だち。味は生麩のようだが、密度は高い。

短い鈍器のようなもの。


・西門の衛兵

比較的まともに見える兵士(アータル談)


・ゴブリン

この世界では比較的メジャーな魔物。人型で簡易な道具を使う。

ちっちゃいオッサン(アータル談)

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