表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
整理
33/274

01-28.叩いてのばす

常緑亭に戻ってきた。

バルもソムも荷物をほどきに行ってしまった。

オレは一人、食堂のイスに座って考えている。


目に見えないアイツに勝ったわけじゃないが、

負けたわけじゃない。

相手を打ち負かしたり、倒したりはできてないが、

逃げ切った。

今はそれだけで十分だ。今は。


 ドンッ


「お帰り。これでも食って元気出しな!」


目の前には良く焼かれた肉料理。

程良い大きさに切られた肉からは、

温かい湯気が立ち上ぼり、

塩と、コショウのような香辛料のいい香りがしている。

ヒルダさんの後ろ姿に、心の中でお礼を言う。


確かにお腹空いたなー。

ヘタな考え休むに似たりとか

言われたことがあった気がする。

考えを中断して、肉料理に取り掛かる。


フォークで突き刺して、熱々の肉を口に運ぶ。

ひと噛みするとジュワ~っと肉汁が溢れる。

一緒に出されたパンと一緒に口に入れると、

香辛料と脂がスッと溶けていく。

そして口直しのサラダ。

柑橘系の爽やかさがとても良い。


確かにココの肉料理は絶品だ。

そして、今までこの世界で

色んな肉を食べてきたが、

今食べたのが一番うまかったと思う。


思わず手を合わせてごちそうさまと言ってしまう。

ここにはそんな文化なんてないのに。


お腹がいっぱいになったら、

さっきまでの考えはどうでも良くなった。

食は偉大だな。さすが三大欲求。


・・・あの狙撃手には敵わなかったなぁ。

でも、まあ良いかとも思える。


今回は、今の自分ができることはやれた。

勝った負けたで言うと負けなのかもしれない。

だけど、これ以上の成果は、

今のところは無理だ。

実力的に到底、太刀打ちできない。


そして、そんなことより本来の目的を失わず、

任務を達成したこと。生き残ったこと。

今はただ、そんな現時点での最善ができたことを喜ぼう。

どんなに頑張っても、目的を達成しないんだったら、

何の意味もないんだから。


─────


あれから幾日が過ぎた。

バギの容態は、快方に向かっているらしい。

あの西の森の戦い(?)で採ってきたアルドアは、

確かに高品質だったそうで、問題なく薬を作ってくれた。


「こんなに品質が良いのは珍しい。

 余ってるなら買い取る。」


と、言われ、懐も温かい。

バツがついてたクエストも解決扱いになった。

(別の捜査クエストができたらしい。)


そうそう、その薬のお陰でバギの熱も順調に下がり、

もう峠は越えているとのこと。

さすがに病人への悪影響も考えて、

お見舞いには行かないようにしている。


そしてそろそろ、

新人研修のメインイベントが見えてきている。

が、ギンたちはバギの回復を待ってから

活動を再開するみたい。

金と時間がないオレは、毎日、

細々としたクエストをやったり、

ギンやバル姐の暇を見つけ、

武器の取り回しとか、冒険者の基礎を教わったり、

歓楽街のバアサンのところに行って

魔法を習ったりしている。


どれも実を結んでないが!


で、今日もクエストを漁りに冒険者ギルドへ。


「お。アータルじゃん~。

 今日もマジメに仕事~?」


珍しく、けしからんオネーサンことマニが話し掛けて来た。


「借金が全然返せる気がしないので、

 少しでも減らそうと。」


「ギルドカードに記載されてるから、

 全然焦んなくても大丈夫だよ。」


「ん?どう言うこと?」


「アータルから追わなくても、

 向こうから追いかけて来てくれるから。

 ね。お得でしょ?」


「ホントお得ねー。ってなるかい!」


「いいねー。アータル。」


と、カウンターに片ひじを付いてる。

よし。無視しよう!

まずはクエストだ!


「はい。ぴろーん。」


「何ですか?」


けしからんオネーサンが、藁半紙を出してくる。


「・・・受けろと?」


オネーサンは微笑んでるだけ。


「とりあえず中身を確認させてください。」


──────────

採取クエスト

──────────

ターゲット:鉄鉱石

廃鉱にあるくず鉄の中から、

使える鉄鉱石を見つけて来い。

いい石なら買い取るが、

ダメなものには銅貨一枚たりとも払わん。

若いヤツを行かせろ。

足腰の鍛練になるからな!

──────────


「で、いつまでなの?」


「明後日。」


「誰も受けないでしょ?」


「そーなのよー。

 アータルやってくれない?」


「やだよ。疲れる上に稼ぎが少なそう!

 それに何でくず山から拾って来ないといけないのさ!」


「このオヤジが頑固でさー。

 あの山の鉄じゃないとダメって言うのよー。

 アータルお願い。

 報酬にイロを付けるからさー。」


「マニにそんな権限ないだろー?」


「そーなんだけどさー。」


「借金を減らしてくれるの?」


「アタシにゃーそんな権限はないわー。」


「じゃあそう言うことで。」


オレはごった返している掲示板に行こうと・・・。


「アータルにアドバイスをあげちゃう。」


マニが提案を出してきた。


「アドバイスぅ~?」


正直マニのアドバイスなんて期待できるもんではない。


「あらー。

 アタシのアドバイス欲しさに

 泣いて頼みに来る人とかいるのよ。」


「マニ。今、スゲー悪どい顔してるよ。」


んー。どうしよう。

クエストにある廃鉱は、ここから半日の距離。

今から準備して、昼前には出て、

廃鉱前で一泊。翌日は一日鉄鉱石を探して、

明後日の朝向こうを立つ。

できなくはない。何も問題がなければ。


でも、マニが勧めるクエストだから

何かあるんだろうな。

もう一日くらい余裕が欲しい。


「クエストの期限をのばせない?」


「アタシにゃー無理。

 依頼者教えるから、直接言ってみて。」


「そんなのアリなの?」


「アリアリのアリ!」


「初めて知った。」


「んじゃ受けてくれるね。

 よろしくぅ~。」


何だかんだでクエストを受けることになってしまった。

まずは依頼者に相談して情報を得て、

そしてできれば日数を延長してもらおう。


─────


依頼者の家は、鍛冶屋街の奥まったところにあった。

辺りの家々と比べても断然ボロい。

だ、大丈夫か・・・。

金ちゃんと払ってくれるんだろうな。


ここは一発気合いを入れて


「たのもー!!」


「あいよ。」


若い男が出てきた。

あれ?こう言うのは

頑固者の年老いたドワーフが

出てくるもんじゃないのか?


「あの、ダオシさんいらっしゃいますか?」


「ダオシは私ですけど。」


「え。この依頼の?」


と、クエストの紙を見せる。


「あー。ごめん。

 私は、文字読めないんだわ。

 確かに私が、ちょっと前に

 冒険者ギルドに依頼は出したよ。

 若いヤツを行かせろって言ったけど、

 キミは、若過ぎやしないか?」


間違いなく本人だな。


「依頼の内容相談しに来ましたー。」


「おっと。報酬の値上げ交渉か?」


「いや。意味が分からんので確認です。」


「ほぉー。」


若い男は目を細めて、家の中にオレを招き入れた。


────


木の切り株みたいなイスに腰掛け、話し始める。


「"使える鉄鉱石"について教えてください。

 どんなのが使えるので、どれが使えないのか。

 余計なモンを持って帰ってくる余裕がないので!」


「ほぉー。はじめてだよ。

 そんなこと聞きに冒険者が来るのは。」


皮肉なのか、違うのかいまいち分からないな。

と思っていると、

席を立って部屋の角にあった岩を

何個か持ってきて、机に並べる。


 コツッ コツッ コツッ


「さてどーれだ?」


赤い石、黒い石、黒い石


分からない。

黒い方がなんか固そうだし、

この二個のうちどっちかだな。

でも、わからん。


「この黒い方の方がなんか固そうなんで、

 この二つのどっちかですかね?」


「そうだね。私も黒い方が好みだ。

 で、こっちの方は買うけど、

 こっちは買いません。」


違いがわからん!

論理的な説明とか無いんか!

仕方ないので、自分の感覚で

部屋の角に置いてある山から

取ってきては並べ、確認してもらう。


何この苦行。

何かもぐら叩きゲームみたいになってきた。

用語説明:

・常緑亭の肉料理

アータルでも、思わずごちそうさましてしまう美味しさ。


・鉄鉱石

鉄分を含んだ石。

どうにかして不純物を取り除けば鉄になる。


・ダオシ

若い男。気難しい鍛冶屋のはずだが、意外と気さく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ