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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
整理
21/272

01-17.巣の中が安全とは限らない

ありがとうございます!

借金はまだまだある。

最初に殺されて身ぐるみ剥がされたせいで、

ギルドに借金して装備を整えたのと、

初心者コースの受講料+宿代だ。

だいたい、金貨10枚くらい。


オレの感覚だと、銅貨1枚=1,000円くらい。

銅貨100枚で銀貨、銀貨10枚で金貨だ。

なので、借金を日本円に換算すると、

なんと1,000万くらい!


今日の稼ぎは、銅貨10枚!10,000エン!

やっほー!焼け石に水だよー!


と、現実逃避をしたい今日この頃。

皆様いかがお過ごしですか?

なんでこんなことになってるかと言うと、


「草狩り場は飽きた。別の場所にしよう。」


「アタシは効率が良いところがいいなぁ。」


「どこでも構わないが、

 傷つくものが少ない場所がいい。」


「派手な魔法がぶっぱなせるところ。」


「ねーよ。そんなところ。」


絶賛、狩り場を検討中。

ナカナカ決まらない。


みな自己主張が激しいんだ。


つーか、金髪無口魔法使い、

全然無口じゃないな。


「アータルはどうしたいんだ?」


「効率がいいところだよな?」


「アタシの魔法が

 ザクザク決まるところだよな?」


まだ一言も言えてないんですけど。。。


「手っ取り早く金が稼げるところが・・・。」 


「そうか、初級だからな・・・。

 オレも最初は、

 金が全然無かったなぁ。」


「じゃあ、効率がいい場所だな。」


「派手な魔法が打っ放せる場所の方が

 気持ちいいんだけどな。」


「皆が傷つかない場所の方が、

 最終的には効率がいいですよ。」


「アータル、覚えておけ、

 こう言うときはな。」


「はい。」


「外に丸投げだ。」


────


「で、アタシのところに来たと。」


「そうそう。

 マニはいつも美味しい話のネタを

 持っているじゃないか。」


今日も今日とて、

やる気のない感じの受付嬢。


でも、仕事しろとは思わない。

けしからなくなっちゃうから。


「おー。アータルくんもいるのかー。

 こりゃー何かやってあげないと

 バチが当たるなー。」


やる気なしの受付嬢は

カウンターから身を乗りだし、

オレの方を(のぞ)きこんで言う。


うむ。けしからん。


「お手柔らかに」


専属とは言わないまでも、

ギルドカードの発行から、

宿付き初心者コースの紹介、

初心者装備の購入代行まで

いろいろやってもらっている。


あれ?良く考えたら、

借金のほとんどは、

マニに頼んだヤツじゃないか?


何か見えない蜘蛛のイトに絡みとられ、

巣に運ばれて行ってるような・・・。


「それじゃー

 どのクエストがいい?」(にこー


不安しかない。


「どれも初級から中級向けなんだけど、

 何故か人気ないのよねー。」


どこかで聞いたような言回しだ。

どこだっけ・・・?


「せっかくだから、

 アータルに選んでもらおうか。」


「止めた方がいいんじゃない?」


無口じゃなくなりつつある魔法使いが

間髪入れずおっしゃる。


パーティの良心、ソムも賛成じゃ

ないみたいだ。


もちろん、オレも反対だ。

経験もカンもないヤツが

選べるわけないじゃないか。


「何事も挑戦だ。

 失敗を恐れてても先に進めない。」


と、ギンが言うと、

それまで黙りこんでいたバルが急に


「可能性の神様って

 スキンヘッドらしいぞ。

 勝利の神様だって前髪は有るのにな。

 前髪もないから、

 可能性をモノにしたかったら、

 しがみつけってことらしい。」


何かもっともらしいような、

こじつけのような・・・


「とにかく、選んでみろ。

 良いか悪いか判断してやる。」

と、逃げ場を塞いでくる。


さすがは壁役。下がる気配もない。


仕方なく藁半紙に書かれた依頼を見比べる。


・草狩り場の希少な水場の探索

・お化けキノコの胞子の取得

・草狩り場未踏区からの資源の回収

・草狩り場未踏区域周辺の地図作成

・大盗賊の隠し財宝の地図の捜索

・灰色狼の毛皮の取得


どれも普通のクエストより、報酬が高い。

なんつーか怪しすぎる。

何度か報酬額も書き直されてるし、

何より、クエストの期限が切られてない。


「他はそうだなー」


けしからん受付嬢は、

ゴソゴソ机を探してる。


「特別だゾ☆」


と出して来たのは、


・ドラゴン(稀少種)の鱗の採取

・ゴーレム(稀少種)のコアの採取


無理に決まってるじゃん!

どれも無理に決まってるじゃん!


大事だから2回言ったよ。

なのに・・・


「早く選べよ。」 


こんな時、ポロッと良いクエストとかが

転がり込むイベントとかありがちだよね!


「ポロッと。」


けしからん受付嬢が言いながら

手渡してきたのは、

何回も()()が書き換えられた上に、

何回も()()が書き換えられ、

塗りつぶされてる藁半紙。


しかも他のどのクエストよりも

禍々しいオーラと言うか

嫌な感じを放っている。


見えないけど。


実際はオーラなんて見えないけど。


端っこにどす黒い血みたいのが

こびりついているのが、

見える気がするけど見えてない。


「おー良いじゃねぇか。

 これなら楽に稼げそうだ。」


「でしょーでしょー。

 でも、何でか知んないけど、

 ずっと応募者がいないんだよねー。」


依頼内容は、


"西の森でのアルドアの採集"


「アルドアなら()の森だろ?

 ボコボコ生えてるじゃないか。

 何で西()の森限定なんだ?」


「特に品質が良いらしいのよ。」


変な汗が止まらない。

そうなんだ・・・。

後で知ったが、

初めて受けたクエストで

採集対象だったアルドアは、

実は街の南の森に群生していたのだ。


オレはあの時、

たまたま前を歩いていた男についていき、

西門を出た。


西門を出た時は、

その男は居なかったと思う。


そのあとは・・・。

考えないようにしようとしていたが、

ふとした瞬間に

冷たい草の上に倒れる自分を

思い出すことが何度もあった。


たまらなくなって、

周りも気にせず、

近くにあったイスに腰掛ける。


変な汗が止まらない。

あのあと、あの時のことを思い出すと、

いつもこうだ。


最初しばらくは、

怪しい神の使いに悪態をついていたが、

それが一段落してからは···。

生きる気力を奪われるような・・・。


「これを受けるぞ。」


筋肉質の姐御が言う。

オレは意味がわからなくて、

ゆっくり顔を上げる。


「これを受けると言ったんだ。

 何かお前にも因縁があるんだろう?」


オレは答えられなかった。

"昔これで一度死んだんです"とでも

冗談を言えれば良かったが、

そんなこともできないくらい、

気力が出なかった。


「お前が最終決定者だ。

 やるかやらないか決めろ。」


オレは・・・


「···少し時間を下さい」


それだけ言うのが精一杯だった。


「分かった。3分だけ待ってやる。」


この世界に

懐中時計があるなんて知らなかった!

などと驚く気力も

その時のオレにはなかった。


────


どうしたら良い??

頭のなかでは意味のない

同じ問いを繰り返すだけ。


やりたくない。行きたくない。

少ない休みの、

夜にいつも思ってたこと。


でも、やらなきゃいけない。

代わりはいない。


行かないと、

後で余計に面倒なことになる。


休めば他の人に迷惑が掛かる。


上司にも嫌味を言われるし、、、


とかなんとか言い訳をつけて

自分を雁字搦(がんじがら)めにして、自分を殺して、

無理矢理自分を追い込んで

やっと行動を起こす。


明日、核戦争でも起きて


地球がなくなっちまえば良いのに!


とか益体(やくたい)もないこと考えて、

好きでもない酒をかっくらって

無理矢理寝る。


で、起きたら機械的に会社に行く。

そうして気が付くこともなく···


もういい。そんなのどうでもいい。

やりたいことやって満足して死のう。


もっとキャッハウフフに暮らそう。

そうだ。そうしよう。


「やります。」

用語説明:

・藁半紙

クエストの内容が書かれている紙。

持ち逃げ防止用に追跡用の魔法が掛かっている。


・銅貨、銀貨、金貨

銅貨1枚=1,000円

銀貨1枚=100,000円

金貨1枚=1,000,000円

くらいの感覚(アータル談。)

何を基準にしているのやら。


・懐中時計

明らかに文化水準にそぐわぬオーバーテクノロジー


・アータル

生前はブラック企業ですりつぶされたもよう。

でも結局、苦労する方を選んじゃう。

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