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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
整理
20/272

01-16.鳴き声は外敵を呼ぶ

人物簡易紹介

ギン:斥候(スカウト)

バル:盾型戦士(アマゾネス)

ソム:殴り僧侶(ヒーラー)

バギ:魔法使い(マジシャン)

休憩が終わると、狩りの続きだ。


"草狩り場"の主な登場人物は、

植物系のモンスター。

人食い植物の中でも多種多様な種類が

ここに集まっているらしい。


で、アクティブに人を狩りに来るのは、

この辺りの奥にひしめいている。


一方、待ち伏せ型のヤツは入口近くだ。

帰りに油断しているヤツは、

容赦なく喰われる・・・ってことらしい。


最後まで気を抜くなって言うのは

痛いほど身に染みてる。


この辺りにいるアクティブなヤツは、

"ソーンウルフ"って言う動きの早いヤツと、

"人食い草"ってまんまな名前の2種だけだ。


どちらも足が早いんだが、

ギンに面白いように翻弄されて、

得意な足がいかせていない。


後ろから襲い掛かってくるヤツは、

ソムの武器に蹴散らされる。

そんな中でオレは、長めの槍を持って

機会を伺う役だ。


隙を見て、槍で突き刺す。

みんなが声を掛けてくれるので、

外しようがない。


餅つきみたいな感じになってきた。

たぶん街に帰っても

みんなに声を掛けられたら、

反射的に槍を突き出すかもしれない

ってくらい繰り返した。


それにしてもバルの姐御は頼りになる。

一歩も退かずに、

モンスターをいなす姿はカッコいい。


鎧は前を集中的に防護した形なので、

後ろは鎧下がそのまま見える形だ。

それだって十分重いだろう。


だが、後ろから見る限り、

その鎧にもほぼ当たっておらず、

盾と剣で敵をさばいてる。


下半身はややぴったり目のパンツ。

スボンって言った方が良いかな。

おしゃれ感はないから。

でも、女性らしい曲線を保ってる。


「あークソッ!

 あのアホどもが!!」


順調な狩りを続けていた中で、

急にギンが呟く。


「おい。お前ら!

 重いモン捨てろ!

 撤退するぞ!!」


 !?


混乱するオレを横目に、

先輩たちは装備を外して捨てている。


「アータル、その槍をここに立てな。

 上手くいきゃ、

 装備を拾いに来とき、目印になる。」


バルの姐御は鎧と盾を捨て、鎧下姿に。

ソルはメイスを捨て、

バギは・・・黒いローブを脱いでる。

金髪だったんかい。


オレは・・・


「アータル早くしろ。

 鎧も槍も置いていけ。

 命の方が大事だ」


そう言ったギンは、

少し申し訳なさそうな顔をした。


「ホントクソだな。

 稼ぎがパァだ。」


バルの姐御が悪態をつくが、

事態が飲み込めない。

手だけ動かす。


「説明は後だ。アータル。

 全員走るぞ!

 しんがりは、オレとバル。

 ソムは、援護。

 アータルとバギは後ろを見ずに、

 色の濃い板の方へひたすら走れ!!

 もう見える位置まで来るぞ。」


遠くの方で戦闘している音がする。

戦闘と言うか、

ソーンウルフのガサガサと言う走る音だ。

一匹じゃなくて、たくさんだ。

もう考える気も失せるくらい、

ウジャウジャいる。


「バギ、アータル行け!」


あれはヤバイ。

巻き込まれたら、いっかんの終わりだ。

数の暴力・・・


「アータル!」


名前を言われて我にかえる。

急いで来た道を目指して走り始める。


とりあえずごちゃごちゃ考えるのは後だ。

生き残ることだけ考えて走る。

後ろからガサガサ

音が聞こえるが構わず走る。


どうすれば早く走れるか、

ムキモジャとの特訓で自分なりに学んだ。

それを生かすんだ。

もう外の音は聞こえなくなった。


手足を動かし、ひたすらゴールを目指す。

視野の端の方に金髪娘もいる。

その勢いのまま、罠地帯の入口を踏み分け、

街門を抜け、ギルドに駆け込む。


金髪無口魔法使いは、

近場の窓口に立ってた受付嬢に

早口で説明してる。


「・・・大枠は分かりました。

 しかし、あなたのパーティメンバーは、

 たぶん・・・」


「そりゃお前ら

 ハメられたんじゃねーのかー?」


ギルドの奥、

前に白梟(ホワイトオウル)のロゥに投げ込まれた壁。

その近くに座ってた、

赤ら顔のジイサンが

ゆらりと立ち上がった。


「いっぱしの冒険者が、

 決壊しそうなパーティの横で戦うかのぅ。

 きっと今ごろお前らが捨てた装備を持って

 違う街へ高跳びしてるぞ。」


「おぃ。じじぃ。

 聞き捨てならねぇぞ!

 表出ろや!」


金髪無口魔術師が(りん)とした声で叫ぶ。

 

「あれあれ。

 お主もグルだったのかのぅ。」


ギリリッ


金髪娘が歯軋りをして、

今にも飛び掛かろうとしたのを

走り込んで正面から受け止めて、口も手で塞ぐ。

何があってもギルドホールで暴れるのはまずい。


オレは停めていた思考を戻す。

一番最初に浮かんだのは、

"ギンたちは大丈夫だろうか。"だった。


そしてそんな考えが浮かんだことに

少し安心した。


どうしてこんなことになったんだろう。

ギンは周りに気を配って敵に当たっていた。

じいさんの言うようにもっと前に気付いて、

場所を移せてたはずだ。


それにじいさんの考え通りなら、

余りに旨味がなくないか?


オレのような駆け出しの装備を奪うのには、

手が混みすぎてる。

ダンジョンとかで囲んでやってしまえばいい。

後は口裏を合わせるだけで完全犯罪だ。


「うーうぅー」

 

金髪娘が何か唸ってるけど、

もう少し考えたい。


「どうしたボウズ?

 シロフクロウが、ろくでもないチームだ

 って気付いたのか?」


じじぃが、何か言ってくる。


()()()()()()


「なんでオレらが

 シロフクロウって知ってる?」


じじぃの顔が青くなった。


「へへ。飲みすぎたかのぅ。」


じじぃは、しっかりした足取りで出ていった。

何なんだこの世界は。

ホントろくでもない!


「うーうぅー」


うーうぅー娘を放す。


「あのじじぃ。ぜってーコロス。」


外に出ていこうとするのをまた止める。

何なんだ全く。

魔法使いってもっと冷静なヤツが

なるんじゃないのか?


がたりとドアを開ける音がしたので振り返ると、

バギとソム、その二人に支えられたギンがいた。


みんな一様に傷だらけだ。

気を利かせたのか、

ギルドの端に座っていた僧侶が

回復魔法を掛ける。


「スロウン、助かる。」  


ソムは、その僧侶に

不思議な印を切って挨拶すると、

僧侶は手をあげて応える。


ギンは手を閉じたり開いたりして

身体を確かめている。


そして、


「装備整えてこい。回収に戻るぞ。」


と、言った。


―――――


一日目は問題なく終わった。


帰りも無難だったし、

無口魔法使いは、あれ以上話し掛けて来なかった。


概ね問題ないんじゃないかな。

特にこれがダメってところはなかったと思う。


今まで一人でクエストを受けてたので、

複数人の連携は、スゴく疲れた。


ちなみに装備は全部あった。


踏まれたりして傷はついていたけど、

使えなくなったり、

なくなっているものはなかった。


槍もしっかり立っていた。

すぐ横は土がえぐれて

耕されたようになっていたけど。


どうやらギンたちはクエストを受けていたらしい。

ギルドに納品に行って、収益を分配してくれた。


これで借金も少しは返せるし、

晩飯はちゃんと食べられそうだ。


そしてギンは一言「すまん。」と言ってきた。

普段はあんなに喋るのに、珍しい。


通訳のソムに聞くと、相当反省しているそうだ・・・。

初日に"草狩り場"に行ったこと。


"草狩り場"は、街から近いこともあって、

有象無象の(やから)が出入りするので、

今日みたいな決壊はよくあることだそうだ。


その辺を見極めて狩り場を決めるのは

リーダーの力量だ。


もちろん鑑定スキルなど

皆が持っているはずもないので、

経験とカンがメインととなるが、

ギン自身も過信があったと感じるらしい。


決壊したパーティは、

よくあの辺りを主な狩り場にして

小銭を稼いでいるヤツで顔見知りだったので、

ソムには、なんで決壊したのか分からないそうだ。


あのじじぃが関係してるのかな。


ソムに話してみたが知らないようだ。

白梟は見た目はさておき、堅気の集団なので、

快く思わない、裏の連中もいるそうだ。


それの出汁(だし)に使われたのかもしれないと。


「色々油断があったのは確かだな。」


バルの姐御は神妙な顔で言う。


「まぁな。」


オレの方も学んだこともある。

世の中絶対ってことはない。


臨機応変なんてことは難しいが、

引き際は間違っちゃ行けない。


あと、アホみたいに受け身だけじゃ次に進めない。


声を掛けられるまで棒立ちしかできなかった。

運が悪きゃ助からなかった。

生き残るのを忘れないようにしないと。

用語説明:

・ソーンウルフ

オオカミの形の棘の魔物


・人食い草

主食が人の草の魔物


・決壊

壁や堤防などが崩れ押し留めてたものが溢れること。


・スロウン

傷付いたギンたちに回復魔法を掛けた。

ソムの知り合い。


・赤ら顔のジイサン

酔っぱらい?

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