2/270
0-1.プロローグ
アータルは、ごくごく平凡な騎士家庭に育った。
乳母やメイドなどもおらず、
地方騎士の父と元冒険者の母に育てられた。
最低限の読み書きと、
剣術の真似事を父や兄から学んだ。
地方を支える騎士団となるため、
最低限の知識や所作、
辺境でも生き残ることができる
最低限の体力など、幼いときから叩き込まれた。
だがそれらは、
地方領主に仕える騎士の子供達であれば、
だいたい似たり寄ったりのことだ。
彼らは大人になり、
(たいていは)その地で
立派に騎士の勤めを果たすだろう。
アータルが他の地方騎士の子供と
決定的に違うこと・・・
それは突然、前世の記憶を思い出したことだ。
しかもそれはこの世界のものではなく、
違う場所、違う時間の世界のもの。
もっともその知識が
アータルの役に立っているかどうかは、
全く別の話だが。
「あー働きたくない。」
そうつぶやくアータルが、
親から勘当に近い形で放逐されたのも、
全く関係がない。
用語説明:
・アータル
ぐうたら暮らそうとしていた転生者。
この物語の主人公になるはず。