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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
整理
19/274

01-15.開いた口でエサを待つ

見つけてくださり、ありがとうございます。

「物思いに(ふけ)ってるところ悪いんだけど、

 新人試験があるのは知ってるよね?」


「え?!」


急に無口魔法使いが話掛けてきた。


何が一番驚いたって、

バギが女性だったってことだ。

いや。声だけかもしれない。


「いや。女だから。」


「それにしては・・・」


ローブ姿を上から下へと目を走らせる


「それ以上何か良からぬことを考えたら、

 何も考えられないようにしてあげても

 良いんだけど。」


全然無口じゃないな。


「アンタがそうさせてるの。

 いい?誰も言わなかったから言うけど、

 三か月後、新人だけで

 ダンジョンに潜る試験があるわよね?

 そこでランク付けされて、

 それに応じて、チームに少なからず

 お金が入るようになってる。

 チームもアンタを買ったのは

 人助けってだけじゃないの。ギャンブルよ。」


それは知ってる。

オークション時に聞いた。


「つまり私らとはそこまでの関係って訳。

 試験で死ぬかもしれないし、

 ランクによって

 所属するチームも変えたりするから。

 アンタを"ちゃんと育てる"義理はないのよ。」


「つまり、ちゃんと育てないと?」


「違う。聞かれたら答えるけど、

 受け身で与えられるまで待ってても、

 誰も何もしてくれないってこと。

 後は自分で考えて。」


そう言って水筒をあおり、布で口元を覆う。

それきり何も言わなくなった。


オレは、なんて親切なんだと思った。

そして無口キャラキター(゜∀゜)とも。


生前の会社では、

こんなこと言ってくれる人なんて居なかった。

ただ怒濤のように仕事が降ってきて、

何とかやりくりするしかなかった。


仕事を寄越してくるのが

誰かも知らなかったし、

置かれてる状況もわからなかった。


先輩に質問なんか出来なかったし、

自分で考えることさえ許されなかった。


ただ怒られているだけだ。

それに比べて、

なんて恵まれてるんだろうと思った。


「なぁに遠い目をしてるんだ。

 ジジイかお前は。」


リーダーが絶妙な間合いで話しかけてくる。


「ギンさん。いや。何でも・・・。」


「ギンでいいよ。リーダーでもいいぞ。」


リーダーは、言葉を濁したオレの顔を

じっと見て、


「アータルは、絶壁が好みなのか?

 やめとけやめとけ。

 特に年上のツルペタは始末が悪いぞ。」


ゴゥッと、背後から濃い存在感を感じる。

これが魔力なのかもしれない。

空気が冷たい!


その前に、横にいた女戦士の腕が、

リーダーの首をガッシリ締め付ける。


「ほんっとーに

 デリカシーってもんがないね。

 アンタは。」


流石に泡を吹きそうになり、

慌ててタップするリーダー。

そんなリーダーを見つつ、

オレは考えていた。


ここなら何とかやっていけるんじゃないかと。


――――


草狩り場は、腰までの高さのある草

が覆っていた。

ただ、入り口?となっているところから

奥に向かって板が敷かれて道ができている。


遠目に見るとただの草っぱらなんだが、

いつの間にか方向感覚を狂わされて

迷うらしい。


ギルドは油断して遭難するパーティが

あまりにも多いので、

確定している道に印を付けるため、

板を置いたそうだ。


板のある道をたどれば、

入り口に帰れるって訳だ。


特徴のない草原なので、

この板がないと

中々難易度が高いと思う。

 

「入るぞ。隊列を崩すな。

 アータルはバルの左後方だ。」

 

オレは槍を握り直す。

女戦士は盾を構え、

修行僧はメイスを担ぐ。


皆、先程まで軽い感じはない。

スイッチの切り替えが早いなぁ。

やっぱプロは違う。


最前列をリーダーギン、

少し離れて二番目を女戦士バル、

その後ろにオレ、

少し離れて修行僧ソム、

無口魔法使いバギ。


ほぼ縦一列な陣形のようにも思えるが、

それぞれ前が見えるように、

半身分横にずらしているようだった。


前と後ろを確認して自分の位置を決める。

確かにこんなのを

一々教えるのは面倒だろうな。

自分で学べか。

確かになー。


おっと。集中。目の前のことに集中。

槍を握り直し、周りに気を配る。

気を抜いて殺られるのは、

もう味わいたくない。


―――――


奥に行くにしたがって、

板が新しくなっていく。

この辺りは、あまり踏まれたことがない感じだ。

あれから何匹か、モンスターに遭遇した。

流れはこうだ。


ギンが敵を発見。

石なんかを投げて一撃入れる。

バルが前に出て盾で受け止め、

シールドバッシュか何かで距離を取る。

バギが砲撃。残りのメンバーで袋叩き。

そして怪我した人をソムが回復。

切れた補助魔法を掛け直す。


あれ?オレの出番がない!

って普通はなるんだけど、

このパーティの良いところは、


「アータル!突け!」


「はい!」


声を掛けてくれるところだ。

もちろん、オレだけに掛けてる訳じゃない。

パーティメンバー全員が、

次の役割のヤツに声を掛ける。

単純だが、面白いようにスムーズに回る。

なので、苦戦らしい苦戦はしなかった。

オレ以外は。


「一旦休憩するぞー。」


肩で息しているオレを見て、ギンが言った。


「中々悪くない動きだ。

 もうちょい状況判断が早けりゃもっといい。」


ギンがオレに言葉を掛けてくる。

上手く回せているのかな。


こんなときにいつも頭をもたげて来るアイツ

「オレ実はツェェんじゃないの?」だが、

今までとは違って、少し恐怖を感じる。


このパーティだから、

この人たちだから上手く行くんであって、

オレが他のパーティで、

同じように活躍出来るだろうか。

このパーティだって、

オレじゃなくても上手く回るのではないか。

"できる"、"できない"二つの気持ちが綱引きして、

いい感じに真ん中辺りに立ってる。


でも、もう少し自信をつけたい。

このまま、新人テストに行ってもきっとダメだ。

他のメンバーの動きを見て自分の位置を考えよう。

卑屈なことを考えているよりよっぽどいい。


「あれは、

 “初心者丸出しだな。調子乗ってんと死ぬぞ“

 って意味よ。」


全然無口キャラじゃない魔法使いが言ってくる。

少し離れた所に座って、こっちも見ていない。


何で突っ掛かってくるかなー。

オレのことが気になっちゃってるのk...


「それ以上何か良からぬことを考えたら、

 何も考えられないようにしてあげても

 いいんだけど。」


慌てて自分のことに意識を戻す。

それぞれ皆、役割がある。


やるべきことが分かってる。

ギンは索敵して、

バルにモンスターを渡したあと、

戦場全体を見ている。


新たな敵が出てくると、

ソムに中衛を任せて

別の場所に連れていったりして

敵の流れをコントロールしている。


バルは敵が他のメンバーに行かないように

気を配っている。


ソムは、バルの動きに合わせて

補助魔法を掛けたり、

バギを守ったりしている。


バギは・・・何だろな。

兎に角、有効な魔法をぶつけてるだけに見える。

思わず、バギをジロジロ見てしまう。


「何よ?」


「な、何でもない。」

 

同じ展開になりそうだったので、

先にソムに話し掛けようと、そっちを見る。


ソムは、まさに修行僧みたいに胡座をかいて、

目を閉じて瞑想みたいなカッコをしていた。

話し掛けづらいなぁ。


「何か用か?」


目を開けずにソムが聞いてくる。


「ソムさん。邪魔してごめん。」


「ソムでいい。

 大丈夫だ。どうかしたのか。」


何と声を掛けようか困った。

それほどいい質問が思い浮かばない。


「バギ・・・さんは、いつもあんな感じ?」


と小声で聞いた。


「普段はもっと喋らないな。

 でも、久しぶりに新人が入って来たから、

 思うところがあるんだろう。」


「思うところ?」


「新人試験に

 余り良い印象を持ってないようなんだ。

 まぁ。詳しくは聞いていないし、

 聞く気もない。」


なるほど。面倒な話になりそうだな。

これ以上聞くのは止めておこう。

用語説明:

・草狩り場の板

ダンジョンに手を加えることができる証し。


・ギン

リーダー。調子の良い性格

口が悪い。


・ソム

回復役の僧侶


・バル

盾と剣が得物。

鉄壁


・バギ

魔法使い。無口。

絶壁

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