表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
新たな
168/272

02-60.支払い

「それで?」


ツバキさんと会議室で2人っきり。

あの厳つい護衛(?)たちもいないし、

オレが誤爆したオットーさんもいない。


それにしても、オットーさんには

悪いことをしたかなぁ。

誓ってアレは事故だったんだ。

もしくは神のイタズラかなんか。


・・・あ。えっと。

オレ何しにココに来たんだっけ?


「まどろっこしいから、

 私から先に言うわ。

 事務連絡が2つある。」


と、指を2本立てる。


「一つ目。

 対象(ターゲット)のここ最近の活動拠点が分かった。

 岩橋の街(ブロックブリッチ)。」


「はぁ。」


正直、街の名前を言われても、

「どこだよ。ソコ!」って感じだ・・・。


「二つ目。

 明日、鉱山送りの犯罪者を乗せた馬車が、

 岩橋の街へ出るわ。

 アンタには、

 その馬車に乗って行ってもらう。

 護送も兼ねてね。」


「オレも檻の中に入れられて?」


「冗談。

 犯罪奴隷の輸送費も

 バカにならないのよ。」


つまり、奴隷の運搬費の方が、

オレの運搬費より高いってことか。

ま。一応護衛料もケチれるからな。


「で、その岩橋の街ってどんなところ?」


「冒険者なのに、

 そんなことも知らないの?」


うぐぅ。

そ、そりゃ知らないさっ!

世の中知らないことだらけさ!


フーッ


ツバキさんは長く息を吐き出してから、

一応説明してくれた。


「岩橋の街は、その名前の通り、

 巨大な岩でできた橋が有名よ。

 あとは・・・

 河の氾濫を止めるため身を捧げた、

 "騎士"を聖者として奉る、

 "聖なる丘"が有名ね。」


あ。オレ。

ソコ知ってる気がスゴくします。


でも、その聖者、もうソコに

いないかもしれませんけどね。あははは。

ハァ。。。


心の中でため息をつく。


オレの持っているスキルのうち、


 ・騎士の誓約


と言う罠スキルをくれたのが、その騎士。


スキルの効果は、

アンデッドたちを無限に引き寄せ、

オレを秘密裏に処理しようとすると言う

SUTEKI効果だ。

普通の人は誰も欲しがらないだろう。


あ。一人だけ例外がいる。

アルマイタさん・・・アルマだ。


どっかの神につかえる聖職者だけど、

とんでもなかったなぁ。


アレはとんでもなかった。


「ニヤニヤして気持ち悪い。」


ツバキさんに言われて、

何のためにここに来たかを思い出す。


そうだ。

オレはツバキさんに


超イカす籠手が欲しいから、

代わりにお金出して


って言いに来たんだ。


「黙ってちゃ

 何もわからないんだけど?」


毛先に指をクルクルとからませながら、

面倒くさそうに言うツバキさん。


くそぅ。

そんなプレッシャーには負けんぞ。


「あぁ。

 冒険者ギルドの公認武器屋で

 防具を買いたいんだ。

 今は手持ちがないから、

 代わりに払っておいて。」


フンッ


ツバキさんが少しバカにしたように

短く鼻から息をはいたのが気になった。


「参考までに、

 値段だけでも聞いておこうかしら?」


「金貨20枚。」


フーッ


「無理ね。」


ツバキさんは強目に息を吐くと、

考える間もなくそう言う。


「別に立て替えでいい。

 お代は、例の依頼の

 ()()()()()()()()()。」


「バカも休み休み言ってよ。」


「大真面目に言ってる。

 ちなみにオレが死んだら、

 ツバキさん宛に請求してくれ

 って言っといたんで。」


「私の名前を出したのっ!?」


「私の担当だから安心してって、

 ヘルミオネさんにも言ってたでしょ?」


「それはそう言う意味じゃないのっ!」


ここに来て、

急に焦りはじめたツバキさん。

語尾の「のっ」にスゴく力がノッている。

そして立ち上がり、

部屋の中をウロウロ歩き始めた。


オレとしては、

ツバキさんを巻き込むことで

オレが死なないように

何か手を打ってくれないかなぁ

って言う淡い期待で言ったんだ。


それはもう、

一粒の塩の入ったコップ一杯の水を

川で直ざらしで冷やして

その後大量の井戸水を加えたくらいの

ほんのりとした淡い期待くらいは

してたんだけどなぁ。


今のツバキさんを見ていると、

全力で責任を回避しようと考えている

ようにしか見えない。


「わかったわ。」


そう言って立ち止まる。

お。何とかしてくれるの!?


「今から直接武器屋に言って、

 説明してくる。」


あれっ!?

オレの期待していた方向の

「分かった」じゃなかった。


いや。合ってるのか?

何の説明をする気なんだ?


「ちょ、ちょっと!

 どんな説明するつもり?」


バタンッ

ドタドタドタッ


オレの話も聞かずに、

すごい勢いで

会議室のドアを開けて出ていく。


あれ?こんな展開、

一回どっかで無かったっけ?

ま。今はそんなこといいや。


慌てて後を追うオレ。


ツバキさんは、そんなオレに構わず

ズンズン歩いていってしまっている。

意外と早いな!


────


ガランガランッ


武器屋のドアベルがやかましく鳴る。


そんな乱暴にしたら壊れちゃうよっ!


オレは何とか、

扉が閉まる前に中に滑り込めた。


「ちょっとマシューっ!

 いい加減にしてっ!

 金貨20枚なんて

 いくらなんでも吹っ掛け過ぎよっ!」


「バカ息子ならいないぞ。」


聞き覚えのある声。

いつもカウンターに座っているジイサンだ。


ダンッ


横で大きな音がする。


急な踏み込みのバックステップ。

ツバキさん、こんな動きできたんだな。


「どう言うこと?」


ツバキさんは左右を見ながら、

後ろにゆっくり下がる。


入り口の前にはオレが立っているので、

どこにも逃げ場がないだろう。

でも、ナニをそんなに恐れているんだろう?

ジイサンのことかな?


「マシューは、どうしたの?」


「アイツはちょっと旅行中だ。

 色々あってな。」


ジイサンはカウンターに左手を付き、

ゆったりと立っているのに比べ、

ツバキさんは、ジリジリと

後ろに下がっている。


「そ。じゃあ、もう用はないので帰るわ。」


そう言って、オレの方・・・

入り口の扉の方を見る。


「ま。せっかく来たんだ。

 話くらいしていきなよ。

 知ってるんだろう?

 この武器屋が、

 こうなってしまった理由。」


「さぁ。何のことか、

 私では分かりかねますね。

 では。」


そう言って、オレの方に走ってくる。

ひぃっ!


ガッツーンッ!!!

ガツーンッ!!


オレのうしろで、

金属を叩きつける大きな音がしたので、

思わずビクッてなる。


そのオレの鼻のすぐ前を

ナニかがスゴい速さで通り過ぎた。


キュッ


と、ツバキさんが立ち止まる。

焦げた臭いがする。


タンッ


バックステップで壁際まで戻ると、

今度は目をつぶり、ブツブツ呟く。


両手を身体の前で交差させると、


パシュッ


パシュッ


両手のひらに魔法の光が灯った。


そして、


ダ、ダンッ


空中から二人の屈強な男が急に現われ、

重たそうに着地した。


二人は音も立てずに動き、

ツバキさんの前に守るように立ちふさがる。


よく見りゃ、以前ギルドホールで

オレを押さえつけたヤツらだ。


ガツンッ!

ガツンッ!!


またもや後ろから

ナニかを叩く音がしたと思ったら、

男二人の頭が吹き飛ぶっ!


へッ!?

ナニソレ!?


血飛沫が上がると思いきや、

二人の男はポフッと音を立てて

消えてしまった。


状況整理が追い付かないっ!


カッ!

カッガッ!


ダンッ!!


続けざまに、

軽い音が聞こえたかと思ったら、

今度はツバキさんが急に後ろに飛び、

壁に叩きつけられた。


「嬢ちゃん。

 強盗ならお断りだよ。」


オレは声のした方をゆっくり振り向く。


そこにはいつものジイサンが

ハンマー片手に立っているだけだった。


今のジイサンが?

何コレ?!

ドッキリ?ドッキリなの??


一刻も早くネタばらししてくれー!!

用語説明:

・オットー

アータルの怒りのコブシをアゴに受けし者


・アルマイタ

以前出会った僧侶♀


・マシュー

ジイサンの息子

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ