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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
整理
14/272

01-10.ババ抜き

ご覧いただきありがとうございます!

初級冒険者認定試験。

合格だそうだ。


点数は教えてくれなかった。

もしかして ・・・と思ったが、

メガネ美人上司に


「好奇心が猫を殺すこともありますよ。」


と真顔で言われたので、それ以上聞いてない。

聞いても悪い予感しかしない。

だから首を突っ込まないぞ。


いつもなら合否発表後は、

それぞれ簡単なチュートリアルがあって

終了らしい。

しかし今回は、

王都から鑑定士の一団が来ているので

"特別に"それぞれの個人の能力に基づいた

カウンセリングをしてくれるらしい。


最近、"特別"の意味が怖い。

何か裏があるんじゃないかと疑ってしまう。

現在、その順番待ちだ。

今は教室みたいな待合室にいる。

結構それなりに居るなぁ。


歴戦の戦士みたいな筋骨隆々なヤツらに混ざって、

一緒に筆記試験を受けたヤツらもいた。


商人風のおっさんは

何だか色んなヤツと話している。


貴公子は窓際に座り、

愁いを含んだ視線で外を眺めてる。


何か絵になるなぁ。


フードのちんまいヤツは、

壁際のイスに座って足をブラブラさせてる。


一人ぼっちだ。

まぁ俺も似たようなもんだが。


教室はざわざわしていた。

まぁ。みんな不安なんだろうな。


と、黒いローブを着た人物が入ってきて、

適当に何人かを指名し連れていく。

マッチョ、ローブ、マッチョ。


指名は規則性など無さそうだ。

ただし筋肉多し。

冒険者だから仕方ない。


さっきからこの調子だ。

段々と人が減ってきた。

俺を含めてあと数人しか残ってない。


「では、そこのヤツとオマエ、

 あと、オマエは付いてこい」


また何人か連れていかれる。

保育園で自分を迎えに来るはずの親が

ナカナカ来なくて、泣いたのを思い出した。


残りはオレも含めて3人だけ。


「あと残りついてこい。」


やっと自分の番が来た。

素直に黒づくめのヤツに付いていく。


連れていかれたのは

独房を思わせる殺風景な場所・・・って、

ここギルドの上の簡易宿泊所じゃん。


「端から順番に入れ。」


扉を開けると、奥の窓は開いていて、

静かな風が吹き抜けていった。

黒ずくめの人物は、

風になびいたフードの端を押さえる。


一拍置いて


「どうぞお掛けください。」


凜とした意思の強さを感じる声。

あれ?女の人?

言われるがままにイスに座る。

何か病院に来たみたいな感じだな。


「では、あなたのスキルを鑑定するために、

 いくつか質問をするので

 ()()()答えてください。」


「はい。」


あれ?わりと複雑な前提条件が有るのかな?

そうだよな。

確かにノー制約で

そんな技が使えるわけないよね。


「では最初の質問です。」


「はい。お願いします。」


年端(としは)もいかない幼女に

 欲情しますか?」


「え?」


「年端もいかない幼女に

 欲情しますか?」


さすがに聞き間違いかと思って聞き直したら、

寸分(すんぶん)たがわぬ言葉が返ってきたでござる。


「えっと。帰ってもいいですか?」


「ちょっちょっと待ってください。」


慌てたように、黒いローブの女性が早口で言う。


「これは本当に大事な質問なんです。

 この一言で、あなたの、

 この先がどうなるか決まる・・・

 と言っても過言ではありません。」


ロリコンか否かがスキルに関連するのか・・・。

鑑定の神様が紳士なのか?

それとも別の意味があるのか。


「慎重に答えてくだい。

 貴方は年端もいかない幼女に

 欲情する変態ですか?」


「違います。」


何か増えてるし。

別にそう言う趣味もないので、

正直に答える。


「否ですね。」


・・・ぉぃ。


「あなたはそのケがあると出ています。」


何か悲しくなった。


「あれ?是。そんな・・・。使い過ぎた?」


黒いフードの人は

目深に被ったフードの奥から

メガネを取りだし、振る。


その拍子に、フードから素顔がのぞく。

チラッとしか見えなかったが、

女性なのは間違いない。


フードの人はメガネを置き、

祈るように指を組んだと思ったら、

手の平をこちらに向け、

フゥーッと息を吐き出しながら

前につきだす。


なんというか、

仕事場で気分転換するオッサンの姿に見える。


「ふぅー。さて。

 気を取り直して鑑定させていただきます。

 次の質問は・・・・」


────


「お嬢はどうだ?」


全く取り繕う気がない台詞で、

年配の男が配下と思われる

壮年の男に聞いている。


ここだけ見ていると、

真っ当な仕事をしていないようにも思える。


黒ずくめの服装は

やはり印象をとても怪しくさせる。


男たちは鑑定師団。


ザンジバル本家のお嬢様を筆頭に

高位の鑑定士達が経験を積むため、

地方のギルドを周り、

新米冒険者を鑑定を行うことで、

スキルアップを目指している。


鑑定には服装は関係ないが、

この黒ずくめは怪しい。

怪しすぎる。


そのため、鑑定される冒険者たちは

心を開かない。

それを鑑定によってこじ開けるのだ。


そうすることによって、鑑定技能を磨く。

それだけじゃなく、

その冒険者とは

強固な関係が築けることもある。


スキル、特にユニークスキル、を

持つものは、ほとんどが後々

ひとかどの冒険者となる。


そうしたものと知己になることは

鑑定士としての後ろ楯に

なってくれることも多い。


私の特性を引き出してくれたのは

アナタだというヤツだ。


細かいことは気にしなそうなこの男だが、

キチンと弁えている。

分家の産まれながら、

本家の当主に優るとも劣らない鑑定眼を

持つと言われた男だからだ。


だが本人は重責の伴う貴族の地位よりも

人と話していて楽しいからと言う理由で

鑑定を続けている異端者である。


今回、本家のお嬢様であるメリクリウスの修行に

同行すると、一も二もなく手を挙げたのは、

お家騒動に担ぎ出されるのが嫌だったのもあるが、

真面目を絵に書いたようなお嬢様に

人生を楽しんで欲しいと言う

親心みたいなのがあった。


なので、お嬢様に割り当てる冒険者は、

一見良く分からない、曲者たちを選んだ。


最後の成人したての坊主なんて、

長年人を見てきたこの男でも

何だか良くわからん存在だった。


「順調にございます。

 我らが鑑定ともほぼ一致。

 既に若き日のあなた様は越えていますな。」


「最後はどうなるかねぇ。

 鑑定阻害アイテムでもつけてるのかよ!

 ってくらい、全然見えないヤツだったが。」


「お嬢じゃなけりゃ

 譲ってくれって言うところですな。」


「全くだ。」


この男について回る者たちも

一事が万事みんなこんな感じだ。


全く知らないヤツらと

酒でも飲み交わしながら

話をするのは楽しい。


世の中には自分が知らないことが

山ほどあるってのを気付かされる。


お嬢も同じ世界が見えるといいな。

と、ひとりごちた。



一方、当のお嬢様は・・・


────


私は、荒野にいた。

赤茶けた土にまばらに生えた緑。

遠くにはゴツゴツとした岩山が見える。


極々たまにではあるが、

鑑定スキルが会心の出来の場合、

鑑定対象の心象風景と言うか、

スキルのイメージに入り込むことがある。

そういう意味では()()は大成功なのだろう。


幾つかの根源に至る質問をした。

手順はいつもと同じ。

特別な何かはない。

何が会心の出来にさせたのか・・・。


 ゴゥ


目の前で炎がはぜ、

辺りは唐突に暗くなる。



・・・・レトロプロスペクティブは後にしよう。

今はこの状況を出来るだけよく記憶して

次に活かせるようにしよう。


────


アータルは、

目の前の鑑定士の輪郭が

薄くなって行くのを感じた。


フードの奥から

自分を見られているのは分かってる。


だが、その視線の先が

自分を通して、

()()()()()()()()()()()()()()


思わず振り返ったけど、誰もいない。


フードの前で手をヒラヒラしてみる。

危ない状態なのか、何なのか。

声を掛けてみようかな?

そういや何て言やいんだ?

鑑定士?鑑定士殿?様?

サマでいってみよう。


「鑑定士サマー?

 鑑定士様ー?」


何度か声を掛けると、反応があった。

この人大丈夫なんだろうか。

危ない人なんじゃないか・・・

と不安になる。


「大丈夫ですか?」


絶対大丈夫じゃない。

分かっているけどそう言ってしまう。

彼女にと言うより

自分自身に言い聞かせているのかも。

きっと。


そんな視線を感じてか、

フードの人が急に口を開く。


「ばんぞく」


「バンゾク?」


思わず聞き返したけど、

やっぱり大丈夫じゃなかった。


どうしよう。この人。


黙って部屋を出ようか考えてると、


「あなたのユニークスキルは、

 ”蛮族の好奇心”です。」


うん。手遅れな人かも。

ユニークスキルってなんじゃい?

用語説明:

・メガネギルド受付嬢

謎かけめいた言葉で、アータルを牽制した。

アータルの自分(の一部分)への

視線に気付いている。


・初心者冒険者たち

魔法の素養があるものは少ないようだ。

少なくとも2/3は、肉弾派。

ローブを着ている者も魔法が使えるとも限らない。


・鑑定士(女性)

幕間のあの人。

ちょっと自分が出せるようになってきた。


・「年端もいかない幼女に欲情しますか?」

これはザンジバル家代々の古文書に書かれた

由緒ある言葉で、言魂が宿るとされる。

そもそもこの世界には、そう言う概念はない。

また、アータルは12歳なので、

年端(としは)もいかない“層でもあると言える。


・(鑑定士団)年配の男

実質的に鑑定士団を率いる男。

ザンジバル家の分家出身で、

鑑定能力が高いが宮廷鑑定士にはならず、

定期的に“鑑定修行”と言って

大都市をまわったりしている。


・鑑定士団

自称修行中の鑑定士が中心の集団。

皆、ザンジバル家には敬意を払っている。


─────


ようやく、エピローグを回収しました。

今後ともアルドコをよろしくお願い致します。

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