高校生の日常
目線を逸らしたおかげで小言が途切れると思ったが、母のサンドバッグタイムはまだ続いているようだ。
「志音ちゃんなんて、お父さんの病院継ぐために、勉強して国公立の大学受けるそうよ。お母さん喜んでたわ、あんたも志音ちゃん見習いなさいよ。」
志音というのはオレの幼なじみで
頭も良くて運動もできて学校でもそこそこ人気という、ヒロインのテンプレートのような女子だ。
しかし、どこか人と感覚の違う所があり、オカルトマニアという意味不明な面も持っている。
そのおかげで何度黒魔術の練習台にされたことか…
降霊術をやるからとベッドに縛りつけられた時は、世界の終わりかと思ったが、魔術師として未熟だったらしく、降霊術は失敗に終わった。手首足首にロープの跡が付いただけで済んだのが不幸中の幸だったが、思い出してもゾッとする体験だった。
「あんなやつ見習ったら、見えないもんが見えちまいそうで、恐ろしいわ」
志音から植え付けられたトラウマの数々を思い出し、身震いした。
母は呆れたように溜息を着くと、コーヒーを持って席を立った。
どうやら本日のサンドバッグタイムは終了したようだ。
カチャカチャと大きい音を立てながら、不機嫌そうに洗い物を始めた母を見て、これは2ラウンド目のサンドバッグタイムが始まる前に逃げた方が良さそうだったので、
朝食もそこそこに、学校へ向かう支度をはじめた。