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83 お帰りなさい「未来の私」・こちら作戦本部

 それからしばらくして、「未来の私」は二人分の会計を済ませ、シュレナより一足先に喫茶店を出た。

 ロタさんとイリちゃんによろしく、今まで本当にお世話になりましたと伝えてくださいと、別れ際にシュレナは述べた。

 喫茶店には、あと少しだけ残るという。


 シュレナは非常に寂しそうではあったものの、態度に暗さはなく、むしろ表情はさっぱりしていた。

 「未来の私」から受け取ったロボットコンペの案内状を早速テーブルに広げ、スマホで調べ物をしながら読み始めていた。

 既に頭を切り替えたのか、あるいは意図的にそう努めているのか。その両方かもしれない。


 「未来の私」は、付近の駐車場に停めておいた車を運転し、急いでその場を離れた。途中、信号待ちを利用し、ロタに作戦終了の連絡をしたり、帽子や上着で軽く変装をしたりした。


 なお、乗った車はレンタカーである。それを返却した後は、バス、電車、タクシーを乗り継いで、空港へと移動。

 そのルートは、わざと遠回りしたり、戻ったりした。また、途中で急に走るなど、不規則な動きもした。これらは、万が一シュレナに後を付けられていた場合でも、振り切るためである。

 尾行されることなどまずあり得まいが、念には念を入れた。何せ、もし「未来の私」の正体をシュレナに見破られたら、今回の作戦は台無しなのだから。


 最終的に飛行機へ乗った「未来の私」。国内便。

 南方の遠い県へ。降りたら、バスで山奥の方に向かう。

 既に夕方だ。天気は曇っているが、雨は降らなさそうだ。


 やがて、小さな町工場にたどり着く。

 二階建て。人家を二軒分つなげたほどの規模。入り口の門には、年季の入った看板。屋根には煙突もある。


 「未来の私」が中へ入ると、ロタが出迎えた。ロタも、つい先ほど到着したばかり。

 高い天井、コンクリートの床、工作機械に囲まれた広い部屋。

 工場のメイン作業場である。


 ロタは満面の笑みを浮かべ、ねぎらいの言葉を掛ける。その明るい声からは、非常にホッとしている様子がうかがえた。

「お疲れさまでした、ハヤミさん。大変でした」


 ロタの背後から大柄な女性が現れ、

「まずは、メイクを落とさないとねえ。早速、別室に行きましょ。準備できてるわよ」

 と促す。

 ロタ以上の長身、肩幅もある。顔は、古傷、脂肪、筋肉で張っているが、横線のように細められた目を含め、笑顔はとても優しい。

 腹が出ているが、肥満体ではなく、むしろ、トレーナーとジャージ越しに、腕や脚の筋肉が盛り上がっている。

 元女子プロレスラーで、現在は生体工学の造形を専門にしている、クミマルであった。美少女ロボット・イリカの外見を造った人物。年齢は、五十歳を超えている。


 今回の作戦では、同じ技術を応用し、ハヤミの顔に特殊メイクを施して、「三十年後のシュレナ」を創作したわけであった。

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