81 理系と青春・遠回り、片想い
「確かに。けど、私はどうしたらいいんだろう?」
カップを持つ手が止まり、コーヒーを飲むことも忘れ、シュレナは尋ねる。やることが多そうだ。
しかし、「未来の私」は意外な返事をした。
「今のままでいいと思うよ。物事へ色んな角度から関心を持って、作ったロボットを引っさげて、地域の行事にも学校行事にも参加してさ」
春の市民ギャラリーや、先日の文化祭のことを言っているに違いない。
「ロタさんに聞いたの?」
すると、「未来の私」はあいまいにうなずきつつ、
「それもあるし、私も似た道をたどったんだよ」
「でも、文化祭では駄目出し食らったし」
「人と違うことに挑戦するわけだから、うまくいかないこともあるよ。それに、周囲の大人の反応も分かって、社会勉強にもなったでしょ」
シュレナは口をとがらせて、
「それ、前向き過ぎない?」
「言いたいことは分かるよ。でも、行動して分析して、を繰り返せば、人の心理とか行動パターンも読めてくるから、それ自体をロボット作りにも反映させられるよね」
今度は、シュレナは笑って、
「そうかそうか。さっきの話にも関係してるんだね」
「そうだよ。閉じこもるなということ。むしろ、ロボットを設計しながら、現実の人々と交流する。連動させるの。どんどん生かす。それが、学問の垣根を取り払うことにもなるんだよ」
「人間の生の反応を見るというのは、人間を再現する上でも参考となるし、一つの分野に凝り固まることもない……」
「まさに」
と、「未来の私」は同意した。
(なるほど。俗に言う、積極的に振る舞えばいつかきっと扉は開く的な、安っぽい励ましとは違うわけね。一応、納得)
とはいえ、
「文化祭終わっちゃったからなー。次の行事が見つからなくて。最近は落ち込んでたから探してなかったけど、多分、ないよ。科学のコンテストとか、参加資格あるのって、大抵は高校生以上だしね」
中学生のシュレナには、年齢制限で引っ掛かってしまうイベントも多いのである。それでいて、作れるロボットのレベルは高い。ミスマッチが起きていた。
「未来の私」は、
「中学生向けのロボットコンテストとか、プログラミングコンテスト、なかったっけ?」
「あるんだけど、ロボット同士の対戦だったり、授業での応募だったり、テスト問題方式だったり、私のやりたいこととは微妙に違うんだよね」
答えてから、シュレナは、持ったままだったカップに口をつけ、コーヒーの残りを飲み干す。すっかり冷めていた上、底に溜まった粉が唇に付着した。特別なひとときは、終わりへ向かっているようだ。
カップを置いて、続きを述べる。
「それと、青春したいというのもあったかなあ。部活とか、学校生活の延長で、ロボットを発表したかったんだよね。それに」
シュレナは少し間をあけて、
「春からのこの半年は、私、イリちゃんに夢中だったから」




