71 文化祭シュレナ後日談
ロタがハヤミに答え、
「そうです。あの時はありがとうございました。おかげで、無事にシュレナさんの居場所も分かり、助けに行けましたから」
「けど、余りに手際よく駆けつけちゃったせいで、シュレナちゃんはますます、ロタさんのことを未来人だと信じ切ってるんでしょ?」
リモリが口を挟む。
先週、日程調整をする際に、用件と今までの大まかな事情は、既にメールや電話で二人には説明してある。
リモリの言うとおり、本題はまさにこれからなのだ。
ロタは、顔の側面をボリボリかいて、
「そうなんだよなあ。当初、リモリさんが予測してたとおりでね」
「私も、ロタさんからの先週のメールで知った時は驚いたけどさ。まさか、本当に当たってたなんて」
リモリも苦笑いする。
それから、ロタは、シュレナの近況を話す。つまり、文化祭の後日談である。
シュレナの脚のけがは順調に回復した。家族や学校との関係も、一応うまくいっているという。
ただ、問題はメンタル面。
文化祭での挫折が影響し、ロボット製作への意欲をすっかり失ってしまった。放課後には、毎日、理学研究部の部室で、何もせずぼんやりしているらしい。
イリカが、
「私の口から言うのも変な感じだけれど、ロボットとしての私の性能に絶望した部分もあるみたい」
「とても私には造れそうもない、という意味で?」
リモリの言葉は的を射ていた。
「そう」
うなずくイリカ。
ロタは、リモリとハヤミの顔を見比べ、
「各分野の専門家が、巨額の資金を背景に、最先端の技術力で造ったのがイリカだからなあ」
リモリが、
「それと、ロタさんの努力もね。七年間、根気よくイリカちゃんと交流してきたからこそ、今みたいにスムーズな会話が出来るわけだから」
「それはリモリさんのお陰でもあるよ」
ロタはそう答えてから、やんわりと話題を戻し、
「同じ分野を志す若者には、気の持ちようで、イリカの姿は、夢にも壁にもなり得るということなのだろうなあ」
「壁となっているのだとしたら」
と、今度はハヤミが口を開き、
「それを夢へと戻してあげるのが、私たち大人の責任でしょう」
皆の注目が、ハヤミの手元へ集まる。
ハヤミは、ハンドバッグから包みを取り出して、ロタに手渡す。
「これ、お預かりしていた物、お返しします」
ロタはハヤミにうなずき返し、
「いかがでしたか?」
ハヤミは、
「分解して、構造を調べましたが、大変な才能ですよ。プログラムの書き方には、セオリーとは違う独特の癖も見受けられましたので、恐らく独学での自己流。部品の加工も細やか。ここまで作れる学生は、そうはいないでしょう」
ロタは、ハヤミから返却された包みを開けて、そばの丸テーブルにそっと載せた。
それは、夏祭りでシュレナがイリカにプレゼントした、ホタル型の自作ロボットであった。




