70 三(四)者会談
負傷したシュレナを、ワゴン車「イリカ号」でロタが送り届けた一件から、約四週間後。
場所は、ロタの家。
ロタ、イリカ、ハヤミ、リモリの四人。
向き合って座り、既に三時間ほど会話を交わしていた。
主な語り手はロタである。
話の内容は、シュレナとのいきさつ。リモリは、途中まで二度聞くこととなるが。
話は、シュレナとロタたちとの出会いから始まって、展示会、夏祭り、電話でのけんかまでを順番にたどり、今まさに、シュレナをイリカがおんぶした場面にまで来た。
「……というわけで、シュレナさんをイリカ号の後部座席に乗せて、俺は、シュレナさんの自宅近所まで送った」
「シュレナちゃんの自転車も、入ったんだ?」
説明するロタへ、質問が挟まる。発言者はリモリである。
「ああ。何とか」
「後ろのドアが閉まるギリギリだったけどね」
と、ロタに付け足したのはイリカだ。
イリカは、充電の機能付きの専用イスに座っている。紺色の長そでセーラー服姿。下はミニスカートで、人工皮膚で覆われた太い脚、膝は金属製の銀色の関節がむき出しだ。
しかし、今ここに、その外見を怖がる者はいない。皆が古い仲間だからである。
ロタは説明を続け、
「帰りの車内で、文化祭の一部始終も聞かせてもらった。散々な結果だったらしい。急ぎで準備した部品だけの展示は、地味過ぎて、むしろクラスメイトの方が、かえって気を遣ってお世辞で褒めてくれたとかで」
「うわー。そりゃつらいわ」
「本人も、周囲もね」
リモリのコメントに、ハヤミも反応する。
二人は、ソファーの両端に腰かけている。
リモリは、妊娠七か月。おなかは相当大きい。ゆったりした青いズボン姿。肩ひも付き。サロペットという服だ。上は薄黄色のシャツ。袖はひじまで。
茶髪のショートカット。
ハヤミは、浅く前スリットの入った、ベージュのタイトスカート。膝丈。上は、カーキ色の長袖ブラウス。
黒髪を後ろで結んでいる。丸眼鏡。
両者とも美人であり、もし初対面であればロタもドギマギしたことだろうが、イリカ製作を通じて、既に十年ほどの交流になる。距離感としては、もはや同志だ。
部屋は広く、サーバーなど大がかりな設備も。イリカ用の機械ルームである。
ロタは、イリカのそばに一人掛けの椅子を置き、身を乗り出す姿勢で座っていた。ネクタイなしのスーツ風。普段着よりは正装に近い。
そのあとも、シュレナから聞かされた範囲で、ロタは文化祭の模様を語った。
こうして、ロタの話は一旦終わる。
「そういうことだったのですね。あの時、イリカちゃんが逆探知した位置情報は、自転車で転んだシュレナさんが送ったメール」
ハヤミがほほえむ。四週間前の、あの緊急電話のことを言っているのだ。
今日は、ロタが改めてそれを説明するため、皆で集まったわけである。




