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7 次会う約束

「じゃあ、あなたを造ったのは、おじいさんではないんですか?」

 シュレナは、握手した手を放しつつ、目の前の二人へ尋ねる。

 「あなた」とは長身女性、「おじいさん」とは初老の男性を指す。

「そうだね。私じゃないです。

 私も関わったけども、全体や基礎を担ったのは別の人たち。

 今この子が言った通り、シュレナさんみたいな科学に詳しい専門家も、複数いましたよ」

 と、初老男性はうなずく。

「女の人も?」

 シュレナの質問に老人は再びうなずいて、

「もちろん。というより、女性の方が多かったな」

 と、懐かしそうにほほえむ。

 製作した期間に、何か楽しい思い出があるのかもしれない。


 シュレナは、

「私てっきり、おじいさんが自分で造ったのかと。

 どこかの偉い博士かと思いました」

 本音であった。

 おっとりした雰囲気が、そう思わせたのだろうか。

 映画などにも、白髪のこういう老科学者が時々出てくる。

「私が?

 違うよ。うれしいけどね」

 初老男性は、声を立てて笑った。

 が、ふと真面目な表情になり、

「ところで、学校行かなくていいのかい?

 何か、急いでたようだけど」


(あちゃー、本題に戻されちゃった。

 でも仕方ないか)

 内心、残念がるシュレナであったが、会話の成り行きとしては自然であろう。

 転んでから、既に十分は経つ。

 辺りを見ると、先ほどより人通りも増えている。平日朝の十分は大きい。

 ここは駅前の高架線の下であり、人目は少ない。

 とはいえ、通りすがりの数人からいぶかしげな視線を送られた。

 老人と制服姿の女子中学生が、いつまでも立ち話というわけにもいくまい。

 二人を見上げたシュレナは、

「まだ早いから、遅刻はしません。

 ただ、授業前に部室を整理する予定だったんです。

 もう、それは無理かも」

 と事情を説明した後、

「また会えますか?」

 これだけは、念押ししておかねば。


 初老の男性は苦笑し、

「んー。まあ機会があればねえ……」

 あからさまに語尾を濁してきた。

(ちぇっ、見え見えの社交辞令!

 あんまり、私とはかかわりたくないってわけね。

 気持ちは分かるけどさー)

 そう見抜いたシュレナは、意表を突くようにしゃがんで、足もとの段ボールを拾い集める。

 さっき、転んだ時にひっくり返した物。

 たたまれた段ボールの表には、野菜の絵と産地が印刷されていた。近くの立ち食いそば屋の物であろうか。


 元通り、歩道の端に立てかける。

 「いい子、常識人」アピールをして、信用を得ようと目論んだのだ。

 それから、

「今日は引き下がります。

 その代わり、また会って下さい。

 私も、そちらのロボットさんを造った科学者みたいになりたい。

 お二人のお話、もっとちゃんと伺いたいんです」

 この想いは、計算なしでストレートにぶつけた。

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