42 つまんないっ
会話が一段落したところで、シュレナは、
「じゃあ、そろそろお祭り、回ります?」
すると、ロタとイリカは顔を見合わせる。
ロタが、意味ありげな目くばせ。あたかも、「イリカの口から説明して」と頼むかのように。
「えっ、何?」
シュレナは、二人を見比べて尋ねる。何やら不穏な空気だ。
イリカが済まなそうに苦笑いし、
「ごめん、シュレちゃん。私、もう、あんまりバッテリー残ってないの」
「ええっ、早くない?」
驚きと焦り。
一応、その辺の事情は、既にメールで説明されてはいた。イリカは二足歩行ロボットのため、電力消費が激しく、長時間の外出には向かないのだと。
とはいえ、
「ちょっと待ってよー。幾ら何でも短過ぎだよ。まだ、会ったばっかりじゃん!」
シュレナの抗議に、今度はロタが、
「申し訳ない。
だけどね、これは十年前、イリカの体を設計した当初から、分かってたことなんだよ。肩を並べて歩けるのは、せいぜい十五分程度ですよと。
それでも構わないかと、業者から何回も、私は念押しされたんだ」
「つまんないっ!」
つい、叫び声が出る。
(うわ、ガキだな、私って)
少々、自己嫌悪も覚えつつ、シュレナはつっけんどんに、
「じゃあ、もう、これで解散?」
イリカは、なだめるような笑みで、
「歩かずに、このまま立ち話なら、あと二十分くらい平気」
「それでも二十分かー」
と、シュレナは一瞬考え、
「あっ、そうだった!」
大事な用件を思い出す。ガサガサと、写真を慌ただしく封筒に戻す。
「なあに?」
首をかしげるイリカへ、
「私もプレゼントがあったんだった」
告げながら、片手に提げていた巾着袋をあけ、まず封筒をしまう。
それから、同じ巾着袋をまさぐり、小型の機械を取り出した。
「おや、またロボットかい?」
「ロボットだね」
ロタ、イリカがほぼ同時に声を上げる。
「一目で分かりましたか。お見事ー」
先ほどのやり取りを真似たシュレナのコメントに、三人とも笑う。
ロタたちの言うとおりで、シュレナが出したのは小型ロボット。またも虫の形をしている。
前回の半分のサイズ。指でつまめる小ささ。丸く、六本脚。黒い。街灯に照らされ、ギラッとメタリックな輝き。
「コガネムシ?」
ロタの問いに、
「に見えますかー。まっ、見てのお楽しみ」
答えつつ、ロボットの「背中」のボタンをカチッと押し、シュレナは念じる。
(さあ、飛んで、飛んで。設計どおりに。お願い!)
手のひらに載せられた虫型ロボットは、電源が入ると、ばねにはじかれるように、ビーンッと前へ跳び上がる。
「うおっ!」
ロタが驚いて、のけぞる。もっとも、ロタの方へ飛んだわけではなかった。
虫ロボは、風圧を受け、空中で羽根をパカッと左右に開き、
「わあ!」
イリカが笑う。
イリカの右手にとまったからである。




