40 聞いてはいけない、でも聞きたい
写真の中の巨大イリカは、紺色のワンピースを着用。
そびえ立つ分厚い壁のようだが、バストのふくらみや腰のくびれは表現されている。「女性」を意識して造られていることは明白だ。
そこに気付いたシュレナは、
「今さら聞くようですけどー」
今度は、イリカは答えない。シュレナが、ロタの方へひょいと首を回したからであろう。話し相手が切り替わったことを、イリカも認識したらしい。
「何だい」
ロタの笑みも、かすかに身構えている。
「お二人の関係って、やっぱり恋人同士?」
「ああ、そうだね」
うなずくロタの口もとが、引き締まる。
「イリちゃん、ロタさんを見つめてるし」
写真の話である。
だ円形のイリカの目は、ロタを見下ろすポーズ。カメラ目線のロタとは対照的である。
「熱いまなざし」
シュレナが付け足すと、ロタがフッと噴き出す。
が、その照れ笑いも、シュレナの次の質問で消える。
「何でも聞いていいって、おっしゃいましたよね?」
「んー。まあね。内容次第では、お答えしかねるかもしれんけども……」
ロタの予防線を踏み越えるように、
「失礼ですけど」
と、シュレナの前置き。
二人はうなずいた。イリカの表情も、心なしか神妙だ。
(怒られるかも。でも、これ聞かないと意味ないしなー)
思い切って、口を開く。
「何て言ったらいいんだろう……。あのっ、夜は、夜は一緒に寝てるんですか?」
自分から聞いておきながら、シュレナは、ほほが熱くなるのを感じた。
要は、性的な関係についてだ。オブラートに包んだつもりが、そうでもなかったことに、言った後で気付かされた。
だが、ロタは怒らなかった。茶化しもしなかった。
むしろ即答してきた。変に沈黙を作り、シュレナがいたたまれなくなるのを防いでくれたらしい。
「ああ、そっちね。いいよいいよ、答える」
と、真顔のロタ。
(やっぱり、聞いちゃまずかったかな?)
シュレナの内心を察したように、イリカも、
「その質問、今日、されるかもしれないねって、事前にロタと話してたんだよ」
「なんか、済みません」
思わず謝ってしまうシュレナ。
「答えは、ノーです。そもそも、イリカは横になって寝ないからね」
「えっ。じゃあ、夜は……」
ロタへシュレナが問い返すと、
「私専用の椅子があるの。そこに座って、電源を落とすわけ。正確にはスリープモード。まさに、おやすみなさい、だよね」
今度はイリカが説明する。
さらにはロタが、
「イリカには防水機能もない。雨に濡れるくらいなら平気だけどね。
したがって、入浴も不可」
「ということは」
シュレナのつぶやきに、
「恋人が密かにやる行為を、俺たちは何も出来ない。
せいぜい、ハグかキスまで。そこから先の機能はイリカには一切、備わってはいないよ」
と、静かにロタが締めくくった。




