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4 シュレナの肩書き

 シュレナは、長身女性を見上げ、

「それと、あなたのような素敵なロボットさんを連れてること。

 そんなおじいさんが、悪い人なわけないですよ」


 女性は、緑色と青の瞳を細め、

「ありがとう。私がロボットか否かは、保留にするけれど」

 ほほえみつつも、ちゃんと予防線も張ってくる。


 もっとも、既に一定の時間、シュレナはこの女性をそばで見ている。

 薄暗さにも目が慣れたし、驚きも和らいできた。

 改めて冷静に観察すると、顔の表情もやや不自然だし、口の両側にはかすかに継ぎ目も見える。

 やはり、この女性は「作り物」としか思えぬ。

(問題は、どうやってこの二人に心を開かせるか、だよね)

 シュレナは検討し、引き続き正攻法を取ることに。


 初老の男は、いまだ苦笑いを口の端に浮かべ、警戒の色を隠さない。

 名刺をつかんだ手もぶらりと下げたきり、見ようともしない。


 シュレナは、多少の演出も込め、左右の腰に手を当て、グイッと胸を反らし、努めて元気よく、

「名刺、見ていただけなくても、自分から名乗っちゃいますから!

 私はシュレナ。ケミホ中学、二年。

 理学研究部、部長!」


 老人はあっけにとられた表情。が、名刺に目をやり、

「それが、ここにも書いてあるってわけかい?」

「そうです!」

 と、シュレナはまたもオーバーに、頭をコクンッと縦に振る。

 ショートボブの黒髪がバサリと跳ねた。

 老人は片手で名刺を持ったまま、もう片方の手で自分の白髪頭をかいて、

「ああ、本当だ。そう印刷されてますね」

 と、名刺を眺め、あきらめたようなため息。


「やっと見てくれましたね」

 と明るく告げるシュレナに、初老の男は、

「見る前に、名乗られちゃったからね。不意討ちだぜえ」

 そこへ、長身女性が口を挟み、

「シュレナさん、この春で新二年生になったばかり?」

 シュレナは、この女性へと目を移し、

「はい、そうです」

 と、うなずいた。早速、名前を呼んでもらえてうれしい。

「この前まで一年生だったのに、もう部長さん。すごい」

 女性はそう続けた。


(うわあ、鋭い。そこ突っ込まれたか)

 シュレナの心がチクッと痛む。

 顔に出ていたのか、

「どうしました?」

 今度は初老男性が尋ねてくる。


 まあ色々あって、とごまかそうとしたが、

(駄目駄目。正攻法、正攻法)

 と考え直す。

 こっちだって、初対面の女性をロボットかと聞いている最中なのだ。

 デリケートな話題は、お互いさま。自分だけ答えないのは、フェアではあるまい。

 シュレナは正直に、

「実は、部員は私一人なんです」


「もしかして、あなたが立ち上げた部?」

 何と、間髪を入れずに、老人が次の質問をかぶせてきた。

 しかも図星。恥ずかしがる暇もなく、

「えっ、せ、正解です。どうして?」

 思わず、シュレナは問い返していた。

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